グスタフ・クリムトは、数いる画家のなかでも女性を美しく描く天才といわれています。
過去の絵画を見ても女性をテーマにしたものはたくさんあります。
それは実在した女性をモデルとして描いたもの、神話の世界の女性を描いたもの、イメージしながら描いたものなども存在しています。
同じ女性を題材にしたものでも、絵のタッチによって全く違った印象になるのも面白いですね。
グスタフ・クリムトとはどんな人物なのか、作品も含めてご紹介していきたいと思います。
グスタフ・クリムトとは?
オーストリアを代表する画家
グスタフ・クリムトは、1862年7月14日生まれのオーストリアを代表する画家です。
ウィーン郊外で生まれたグスタフ・クリムトが、父親は彫刻師だったといわれています。
グスタフ・クリムト自身は7人兄弟の次男として生まれ1876年には、博物館付属の工芸学校にも入学しています。
その後友人など3人でデザインの請負を仕事として始めます。
学業卒業後には「芸術家商会」の設立を行い、あっという間に軌道に乗せてしまいます。
装飾分野で高く評価を受けていたこともあり、1894年にはウィーン大学の大講堂の天井に描く絵を任されるまでになります。
その後さまざまなトラブルに見舞われ1897年に結成した分離派を1905年には脱退して、オーストリア芸術家連盟を結成しています。
後に、上流階級の婦人がなどをたくさん手掛けたことでも知られています。
もともとウィーン分離派の創設者として知られた人物になり、絵画はもちろん壁画、装飾芸術などの幅広い分野で活躍しました。
女性を美しく描いた天才
グスタフ・クリムトの作品は、主に女性の体を描いたものになり、どこかセクシーなエロティズムを感じるものとなります。
女性を題材にした作品はたくさんありますが、特に女性を描くことに長けていたともいわれています。
そんなグスタフ・クリムトが最も影響を受けたのは、日本画なのだとか。
そのため、日本人にとっては、どこか懐かしく親しみやすさのようなものも感じられるのかもしれません。
グスタフ・クリムト自身は女性を描いていたことからも、女性トラブルが尽きなかったことでも知られています。
特に最大人数15人もの女性が家に寝泊まりしていた過去もあるのだとか。
モデルとしてはもちろん、なかには妊娠し出産している人もいます。
愛人は数多くいたものの、最も愛していたのはエミーリエ・フレーゲだったそうです。
実際にグスタフ・クリムトが亡くなったあと、エミーリエは生涯独身を貫いたといわれています。
天性の色男でもあったグスタフ・クリムトは、女性を愛していたからこそ生まれた作品だと思います。
グスタフ・クリムトの描いた作品の特徴
グスタフ・クリムトの特徴について紹介します。
生と死を表現した作品が多い
グスタフ・クリムトの作品を見ると、ただ女性を描いただけではないこともわかると思います。
グスタフ・クリムトの描く女性は生き生きとしているものもありますが、どこか暗い死の部分を連想させるものも存在しています。
これは彼が活躍した時代だからこその影響でもあります。
当時19世紀末から20世紀にかけて時代の変化から、不安による現実逃避が起こり、今までの印象主義から象徴主義へと変化していきます。
これは人間の内側に秘めているものや、幻想的な部分を題材としたもので、アール・ヌーヴォー運動も起きた時期です。
当時には馬頭足しい奥行き感や遠近法などを一切用いていません。
そのため同じ時代の絵でも、全く描き方が違うのに気付けると思います。
グスタフ・クリムトが絵を通してどんなことを伝えたかったかを考えながら見て見ると、面白いかもしれません。
アジアの影響を強く受けている
グスタフ・クリムトが日本画や日本画の手法などの影響を強く受けていることでも知られています。
亡くなったあとに発見されたプライベートコレクションを見ても、甲冑や兜、能面などの美術的な価値の高いものがたくさん残されています。
1900年に開催された分離派会でもジャポニズムとの近づきを象徴するような場面もあったといわれています。
日本画のなかでも浮世絵に強く興味を持ち、グスタフ・クリムトの作品にもたくさん残されています。
なかでも桃山時代から江戸時代にまで長く続いた「琳派」に影響を受けた部分も多いのだとか。
金色をたくさん使用した作風や、色彩、構図、人間のポーズに至るまでジャポニズムらしさを象徴しているともいわれています。
余白部分を多く残すのも日本らしさです。
日本に対しての想いも絵から感じ取ってみてくださいね。
グスタフ・クリムトの作風に一役買ったといっても過言ではないのです。
金箔を使った作品も残している
グスタフ・クリムトの作品のなかには、一時期金箔を多く用いた豪華絢爛な作品も数多く残されています。
目をみはるほどに金箔を使用したもので、女性らしい華やかさも演出しています。
グスタフ・クリムトの人生のなかで緊迫を使用した作品を描いていた時代を「黄金の時代」といいます。
この時代に描かれた作品は今でも人気があり、老若男女に愛されています。
グスタフ・クリムトの描く女性の肌感はとてもリアルですし、輪郭などもしっかりと描いています。
リアルさを追求したのもグスタフ・クリムトらしさです。
グスタフ・クリムトの有名な作品を紹介
グスタフ・クリムトの作品は時代によっても雰囲気が変わります。
今でも高く評価されているものがたくさんあるので、正直どれを紹介しようか迷ってしまいます。
なかでも、人気がありグスタフ・クリムトらしさを感じられるものを紹介します。
アデーレ・ブロッホ=バウアーの肖像 I
1907年に完成した作品になり史上最高額の156億円にて売却された奇跡の絵です。
約3年の歳月をかけ作り出した作品になり、138×138mの大きさで描いています。
油絵と金箔の両方を使用し、とても複雑な構造によって描かれています。
このモデルとなったのはウィーンの銀行家であったフェルディナントの妻であるアデーレです。
多くのパトロンとなっていた製糖業で大富豪となった人物です。
その後1912年には肖像画Ⅱも描いているなど、二度に渡って描いたともいわれています。引き込まれるほどに美しい絵だと思います。
ヘレーネ・クリムトの肖像
1898年に描いたものになり、モデルとなったのは実の弟の娘ヘレーネです。
6歳の頃の姿が描かれており、とても繊細に作られた作品です。
印象派などのさまざまな技法を合わせたものとして製作されており、グスタフ・クリムトの技術を詰め込んだ作品でもあります。
シンプルに女性だけを描いているので、より印象に残る作品です。
接吻
こちらも黄金時代に描かれたものになり、最も有名な作品としても知られています。
この絵のなかに当時のウィーンの人々の感情を込めて作られたともいわれています。
一見男女が接吻をして愛情を確かめあっているかのようにも見えますが、とても奥深い作品です。
総合芸術点に出展すると、展示終了後すぐにオーストリア政府に買い上げられてしまいました。
モデルとなったのは、エミーリエだといわれています。
まとめ
グスタフ・クリムトは女性を描き続けた天才画家でもあります。
どれも、女性の美しさを引き出しつつ一つの作品として仕上げています。
いかに才能を持っていたのか、作品の仕上がりからも伝わるのではないでしょうか。
素晴らしい作品がたくさん残されています。