上手だけではなく、本当の意味でいい絵ってどんな絵?と疑問におもったことはないでしょうか。
一般的に絵がうまい人といえば、デッサン力があり写真や実物と見間違えるような絵がかける人かもしれません。
しかし、有名な画家や作品のすべてが写真のような絵ではありません。
中には「これは子どもの絵かしら」とおもうような作品もあります。
この記事では、本当の意味でのいい絵をみつける方法3つをお話ししたいと思います。
写真みたいな絵が、いい絵ではない|いい絵ってどんな絵?
上手な絵はテクニックがある人が本物のように描いた絵です。
りんごは赤く立体的な丸さを表現できていれば上手な絵でしょう。
一方、いい絵はモチーフの内面を描いた絵です。
同じりんごの絵でも嫌いな人からもらったりんごならば赤くみえないかもしれません。
筆者が美大受験予備校で牛骨のデッサンをしていたときのことです。
クラスの中でも1位2位を争う人が、実物通りの写真のような牛骨デッサンを完成させました。
形も正確で模範解答のような絵です。
もう一人は実物とは違う色合いでしたが、牛骨の重さや雰囲気を感じる絵を描きました。
いい絵は、後者です。
写真のような絵を目指すならば写真に写せばいいのです。
絵は記録として残すことが目的ではありません。
絵を描くことは、モチーフから感じる「何か」をキャンバスに表現することです。
「何か」は描く人によって異なります。
前者の正確な絵を描いた人は、ただ正確に牛骨の形を写しとりました。
後者の牛骨の重さを表現した人は、実際に牛骨を持ち上げて、その重さと大きさに感動し絵にしたのです。
感じ方に正解はありません。
絵をみて「この感じ方はすごい」と思える絵に出会ったのならば、それがあなたにとっての、いい絵ではないでしょうか。
喜びや悲しみそして恐怖、なにかを感じる絵|いい絵ってどんな絵?
しばしば「この絵のどこがいいのかしら」と思う絵に出会います。
とくに古い時代の絵には恐怖や残酷さを感じるものもあります。
しかし「人になにかを感じさせる絵」を描くことは容易ではありません。
喜びでも悲しみでも恐怖でもなにかを感じさせることができる絵は、それだけで十分なパワーと魅力をもった絵なのです。
例えばモナ・リザが人々の心に残る理由は、モナ・リザの表情にあるのではないでしょうか。
モナ・リザは単なる「美しい女性の絵」だけではない感動を人々に与えます。
人によっては「モナ・リザは笑っているようで笑っていない」「モナ・リザは悲しんでいる」「モナ・リザってずっと目があう」など魅惑さを感じるようです。
一枚の絵からこれだけたくさんの「なにか」を感じられるということは、やはりモナ・リザは、いい絵なのでしょう。
さまざまな怖い絵も人々の興味を集めています。
「怖い絵」には、歴史上のワンシーンや想像上のワンシーンを描いたものがありますが、どれも写真以上に恐ろしさを感じます。
苦しみの表情は実際の表情よりも強調され、見る人の心をつかむでしょう。
いい絵とは、事実や「あるがまま」を伝えるのではなく、例え形が崩れても事実は事実以上に内面を描いた絵が、いい絵なのです。
その場の空気を感じる絵|いい絵ってどんな絵?
人間が登場する絵は表情があるため「なにか」が伝わりやすいかもしれません。
同じように風景や静物画からも実物以上のものが伝わる「いい絵」があります。
例えば、モネの「サン=ラザール駅」は全体が白く、ピンボケの絵のようにみえます。
しかし、汽車の蒸気がたちこめる駅の雰囲気は写真以上に伝わります。
新しい旅が始まる前の気持ちや未知の世界へ飛び立つときに雰囲気を感じる人もいるでしょう。
この絵をみた当時の批評家もモネについて「生物でない事物に重要性を与え、命を吹き込むのである」と言っています。
セザンヌの「モンジュールの曲がり道」も曲がり道の雰囲気を感じます。
「モンジュールの曲がり道」の曲がり道は、よくみると水平や重力に問題があるような描き方ですが、急な曲がり角の雰囲気やこの家がある町の空気感が伝わってくるような気がします。
ルノワールの絵をリビングに飾る人が多い理由も「なんとなく豪華な雰囲気」を感じるからではないでしょうか。
豪華な雰囲気を感じたいならば、同じ構図の写真を飾ってもいいはずです。
それをあえて絵を飾るということは、ルノワールの絵には写真以上の豪華な雰囲気が漂っているということではないでしょうか。
まとめ
いい絵ってどんな絵?の疑問に、少しだけ参考になったでしょうか?
いい絵は見る人によって違います。
ある人には、いい絵であっても、ある人にとっては、なにも感じない絵かもしれません。
それまでの経験や生き方が絵をみたときに感じる「なにか」を決めるのでしょう。
自分の子どもが描いた絵は、有名な画家が描いた絵よりも、いい絵に感じます。
それは紙面に描いてある線や面だけの情報ではなく、絵から子どもの楽しさや成長を感じるからです。
自分の子どもの絵のよさは、関係のある人にしかわからないかもしれません。
しかし、有名な絵や画家は国や時代を超えてたくさんの人に「なにか」を感じさせ、伝える力を持っています。
励みや希望を感じられる、いい絵をみつけたのならば、きっとその絵はあなたの心の糧になるでしょう。