この記事では、みているだけでお腹がすく「食べ物の絵」を紹介します。
ダイニングやリビングに食べ物の絵を飾ることで食卓にうるおいを与えてくれるのではないでしょうか。
絵にはさまざまな種類があります。
最近では、癒される絵やかわいい絵、あるいはこわい絵も注目されました。
心が安らぐ絵を寝室に飾ったり、和の雰囲気を出す日本画を和室に飾ったりするように、食欲をそそる「食べ物の絵」をダイニングやキッチンに飾ってみてはいかがでしょうか。
『鮭』高橋由一|食べ物の絵
「鮭」は油絵具で描かれた作品です。
緻密な描写は日本画の雰囲気ですが、鮭の重量感と脂がのったつやの表現は油絵だからこそ表現できたのではないでしょうか。
高橋由一は油絵を日本に広めた画家のひとりと言われています。
日本に西洋画が入ってきたときには油絵具がなかなか手に入らず、日本画の絵の具に食用の油を混ぜて油絵具の代用品を使っていました。
そのような状況でも高橋由一は油絵の具で描かれた西洋画に惹かれ、独学で油絵を勉強します。
「鮭」は、高橋由一がすでに身につけていた日本画の技術と独学で学んだ油絵の技術が融合した作品です。
「鮭」は、1匹の鮭を描いた作品ではなく、一部が切り身になっています。
まさに皿の上にのっている朝食の鮭のイメージです。
本物よりも本物らしく描かれた「鮭」はお歳暮に使われましたというエピソードがあります。
贈り主は「本物よりもおいしそうな鮭」をお世話になっている人へ贈りたかったのでしょう。
『リンゴとオレンジのある静物』ポール・セザンヌ|食べ物の絵
セザンヌの静物画にはリンゴが頻繁に登場します。
どのリンゴもあるがままの現実を描かれたわけではなく、あるリンゴは重力に逆らい、あるリンゴは熟れすぎています。
セザンヌは「多視点」で絵を描いています。
「多視点」とは、言葉の通りひとつの絵の中に視点がたくさんあることをいいます。
一般的に絵を描くときには、ひとつの視点からモチーフをみて描きます。
しかし、セザンヌはさまざまな角度からモチーフを観察し、頭の中でひとつのイメージに練り上げるのです。
そして、現実的にはあり得ない位置であっても一番魅力的な状態をキャンバスに描きます。
そのため、セザンヌの静物画はテーブルから転げ落ちそうなリンゴがあったり、テーブルが水平に見えなかったりするのです。
セザンヌはリンゴに対する思いが人並み以上であり、表面的な姿だけではなく、リンゴのすべてを描いた画家です。
セザンヌがリンゴへの思いを強くしたきっかけは中学生時代の出来事にあるといわれています。
セザンヌはいじめにあっていた同級生を助けます。
しかし今度は助けたセザンヌの方が攻撃されてしまうのです。
翌日、セザンヌが助けた同級生はお礼としてリンゴを渡し、セザンヌのかけがえのない友になりました。
リンゴをきっかけにセザンヌは大切な友を得たのです。
この友達はのちに、セザンヌの画家人生に大きな影響を与えます。
結局、友達とは疎遠になってしまいますが、セザンヌのリンゴへの思いは変わらず、セザンヌはたくさんのリンゴを描きました。
セザンヌの描くリンゴが魅力的な理由は、あるがままの現実を描くのではなく、リンゴから感じる印象を表現しているからでしょう。
セザンヌはリンゴを部屋に置き、腐るまで観察しました。
リンゴの最初から最後までを知り、リンゴへの思いをぶつけた作品からはリンゴの味だけでなく香りや存在感までも感じることができるのではないでしょうか。
「リンゴとオレンジ」はモチーフもダイニングにあっていますが、全体が暖色なのでリビングに飾っても素敵です。
『The Velvet Underground & Nico』アンディ・ウォーホル|食べ物の絵
アンディ・ウォーホルの作品には、スープの缶やコーラの瓶をモチーフにした作品があります。
どれも洗練されたデザインでリビングやダイニングに変わりやすい作品です。
「The Velvet Underground & Nico」は、アンディ・ウォーホルが手掛けたCDジャケットのデザインです。
画面には大きなバナナが1本描かれています。
シンプルなデザインですがインパクトが強く、アンディ・ウォーホルの代表作品のひとつです。
バッグやインテリアグッズにも使われているため、絵に興味がない人でも「これ見たことがある」と思う人も多いのではないでしょうか。
大きなバナナは黄色と黒色の2色で表現されています。
けしてきれいなバナナではないけれど、形は理想的なバナナの形で、まさに「完熟の食べどき」を迎えたバナナです。
黄色と黒色は、人間に危険を感じさせる組み合わせといわれています。
踏切の遮断機も黄色と黒色の組み合わせです。
黄色と黒色で描かれた大きなバナナは「早く食べなきゃ、シュガースポットが出てきたよ」とうったえているかのようです。
まとめ
今回は、みているだけでお腹がすく「食べ物の絵」を紹介しました。
油絵や日本画のように厚みのあるキャンバスではないため、アートポスターのように気軽に壁に掛けたり、床に直接立てかけたりしてもオシャレでしょう。
本物よりも本物の特徴を捉えている作品がいつもの食卓に華を添えてくれるでしょう。