芸術療法は、心療内科などで積極的におこなわれている治療です。
絵画、陶芸、彫刻、演劇、ダンスなどさまざまな芸術に触れさせることで心身に刺激を与えるというもの。
芸術療法を取り入れることでどんなメリットがあるのか、身近に芸術を楽しんでもらうためにはどんな工夫ができるのかについて解説します。
芸術療法は五感を刺激する治療法
芸術療法は、アートセラピーとも呼ばれる治療法の一種です。
欧米では古くから取り入れられてきた歴史があり、日本でも心療内科の分野で芸術療法を用いることがあります。
この芸術療法を取り入れることでどんな効果が期待できるのかを紹介します。
自分の感情に向き合える
言葉にするのが難しい感情や、気づかなかった感情を、芸術療法を通して知ることができます。
絵画、音楽、ダンスなどを通して無意識に閉じ込めていた感情、言葉にしにくかった感情を吐き出すことができます。
とくに感情の言語化が難しい小さい子どもなどに効果的といわれています。
心の傷を表に出せる
心療内科でカウンセリングを受けることで心の傷を癒すという治療法もありますが、それだけでは難しい場合もあります。
人に話しにくい、心理的ショックで言葉にできない、曖昧な表現しかできないということも。
そんなときに芸術療法を用いれば、言語化しにくかった感情を表現、発散することができ、心理的にいい効果が得られます。
想像力を育む
例えば絵を描くだけでも、どんな形をしているか、どんな色をしているか、どんな質感をしているかなど、一つのものをじっくり観察してさまざまな思考をしなければなりません。
また、どんな構図にすればいいか、何を描きたいかなどを考えることで想像力が育まれていきます。
想像力が豊かになると相手の気持ちを思いやれるだけでなく、自分の心の変化にも気づきやすくなれます。
認知症にも効果が期待できる
視覚、聴覚、味覚、嗅覚、触覚といった五感を刺激する芸術療法は、認知症の予防、改善にも効果的だと言われています。
創造性を高めるだけでなく「仕上げることができた」という成功体験は、精神の安定にもつながります。
スタッフや家族と会話をする機会も増えて精神面が安定すると、極端な不安や徘徊といった症状の緩和にもつながります。
芸術を身近に感じてもらうには?
芸術をより身近に感じてもらうための方法を紹介します。
芸術療法を取り入れるという選択肢が頭にない患者様でも、芸術に触れる機会を増やすことで症状が緩和することがあります。
芸術は難しく考えなくても、心の感じるままに表現していいのだということをまずは理解してもらいましょう。
芸術療法を取り入れよう!と思っても、いきなり「絵を描いてください」と言われたらびっくりしてしまいます。
普段から芸術に親しむ機会が少ない方であればなおさらどう描けばいいかわからない、笑われたくないと思い、本来の治療目的を果たせなくなってしまいます。
普段から、アート作品を展示し、アートに触れる機会を増やしましょう。
音楽をかける、触れるオブジェを展示する、スケッチブックとえんぴつを貸し出して自由になにかを書いてもらうなどの方法もあります。
まとめ
芸術療法にはさまざまなものがあります。
絵を描く、コラージュ作品を作る、粘土遊び、折り紙、陶芸、体を動かす、物語を作る、物語を演じる、ダンスをする、楽器を演奏するなどなど。
いきなり難易度の高いことを患者様に求めても、かえって緊張、不安を強めるだけになってしまいます。
まずは完成しなくても問題のない粘土遊びなど簡単なものから始めて、徐々に芸術に触れる機会を増やすのがおすすめです。