芸術家になるには何をすればよいか?
美術教師や学芸員などには資格がありますが、芸術家のほとんどは実力と運が勝負といえるのかもしれません。
芸術家といっても、業務独占資格や名称独占資格がほとんどありません。
そのため、芸術家を志す人はたくさんの疑問や不安を抱えがちです。
この記事では、芸術家を志す人によく聞かれる質問にスッキリと答えます。
芸術が好きです!好きだけで仕事にできますか?
芸術を仕事にする大前提が「好き」ということではないでしょうか。
しばしば「芸術の才能」という言葉が使われますが、芸術の才能とは「絵がうまい」や「色のセンスがある」というような技術面ではなく「芸術が好きと思い続ける力」だと考えます。
ある美大受験予備校に「神童」と呼ばれている学生がいました。
とびぬけたデッサン力とセンスで講師からは芸大現役合格の太鼓判を押されていたのです。
しかし、彼はある日突然芸術の道をあきらめました。
理由は「芸術が好きになれないから」でした。
彼は周囲から「この才能を使わないともったいない」と言われ芸術家を目指したそうです。
しかし本人は、いくら褒められてもうれしくはなかったのでしょう。
一方で、間違っても「上手」とは言えない学生もいました。
彼女が石膏デッサンを描けば「こういう動物いるよ」と講評される有様です。
しかし彼女は「私は石膏デッサンが好き」と言い、毎回楽しそうに描いていました。
彼女はたくさんの美大を受験し、たった1校だけ合格して嬉しそうに芸術の道を歩き始めました。
芸術の才能は後者の彼女にあるのではないでしょうか。
芸術が好きという気持ちは芸術の才能があるということです。
技術やセンスは努力と練習で補うことができます。
仕事にできるかは、運や人との出会いなどさまざまな要素が影響します。
芸術が好きと思っている人のまわりには、芸術が好きな人が集まり、夢を支える心強い味方となってくれるものです。
芸術家として使える資格は何ですか?
芸術に関する資格もあります。
カラーコーディネーターや色彩検定は有名な資格です。
しかし、芸術家は「資格をとればできる」というものではありません。
資格が必要に感じる「美術鑑定士」も資格は必要ありません。
美術品の修復を行う美術修復家には2003年から民間資格ができましたが、経験と技術が重要視される世界です。
カラーコーディネーターや色彩検定は、それだけでは芸術家にはなれません。
色を使って作品を制作したり、分析したりする付加価値として資格を活用することはできます。
これから資格取得を目指すならばクリエイティブ系のソフトに関する資格がいいのではないでしょうか。
絵画というと絵筆と絵の具で描くイメージですが、美術業界もデジタル化は進んでいます。
「絵筆を手に持って描く人になりたい」と思っていても「デジタル対応できて手を選んだ人」と「デジタル化できないから手で描くしかない人」とでは選べる道の数に違いが出てくるのではないでしょうか。
最初に油絵やデザインなどの専攻を決めなくてはなりませんか?
芸術大学、美術大学を受験するときには油絵科やグラフィックデザイン科という専攻ごとに入学試験を行います。
そのため、大学受験の段階で「何を専攻するか」を決めなくてはなりません。
しかし高校生が「芸術の道を進む」と決めるだけでも大きな決断です。
大学生の中には彫刻科を卒業して俳優になったり、デザイン科を卒業して小説家になったりしている人もいます。
絵本作家のように表現方法の幅が広い世界では専攻ではなく個性がものをいいます。
現代美術は専攻やジャンルの壁を超えています。
芸術大学、美術大学の授業内容についても専攻を細かく分けて深く追求するというよりも幅広い視野を持った芸術家や美術家を育成するカリキュラムになりつつあるように感じます。
芸術大学、美術大学や専門学校に入学するときには入学試験の関係で専攻を決めなければなりません。
しかしどの芸術の道を進むかの決定は、芸術を学びながら考えることができます。
専門的な資格の多くは専門課程で一定の単位を取得し、試験に合格することで仕事につながります。
芸術家には資格はほとんどありませんが、資格がないだけに柔軟に専攻や方向性を変えられるメリットもあるのです。
おわりに
「芸術家」とは、不安定で実態がないようにみられるかもしれません。
しかし、芸術は立場や環境に関係なく、みる人に感性さえあればいつでもどこでも「人の心を開放することができるもの」ではないでしょうか。
不確かで決められた限界や資格がないからこそ、自分が望むところまで道を伸ばすことができるのです。
「芸術家を目指したい」と周囲に告げたとき、もしかしたら反対されるかもしれません。
しかし「芸術家」とは、感性というお金では買えないものを持っている人にしか目指せないものです。
ぜひ自分の夢に誇りを持って芸術の道を進んでほしいと願います。