だれもが一度は目にしたことがある有名な絵。
その中には、絵だけが有名になってしまい、意味や込められた思いが誤解されているものがあります。
この記事では、有名だけど誤解されやすい絵をご紹介します。
イメージが先行した有名な絵!「最後の晩餐」レオナルド・ダ・ヴィンチ
「最後の晩餐」は、だれもが知っている有名な絵です。
レオナルド・ダ・ヴィンチの絵の中でもサイズが一番大きいことでも有名な壁画です。
タイトルの通り、キリストが最後の晩餐を食べているシーンを描いています。
晩餐とは夕食のことです。
現代では、晩餐というと普段の夕食よりも豪華なイメージで、客を招待して食べるようなごちそうをイメージします。
そのため作品「最後の晩餐」のテーブルにもごちそうが並んでいると思っている人は多いのではないでしょうか。
「最後の晩餐」は、油性テンペラで描かれた古い作品です。
そのため、修復されるまでテーブルにのっているメニューがはっきりとわかりませんでした。
修復された絵に描かれていたメニューはパンと皿の上に乗った魚だけです。
しかも、ほとんどの皿の上は空っぽです。
つまり、パンと魚の切り身だけの「質素な晩餐」です。
修復される前は、汚れや傷が多くテーブルの上も「なにかがたくさんのっている」ようにも見えました。
しかし修復してきれいになると想像以上にテーブルの上に物はなく、質素な夕食であることがわかったのです。
また、この作品はキリストと弟子たちが最後の食事を楽しく味わっているようにみえるかもしれません。
しかし、この絵の中には裏切り者がひとり描かれています。
左から4人目のユダです。
この絵はキリストが弟子たちにむかって「この中に裏切り者がいる」と言った瞬間を描いた作品です。
そのため、誰一人食事に手をつけず、驚いたり話したりしています。
そんな中でユダはお金が入った袋を握っています。
お金を握りながらキリストを遠くからみつめている様子が描かれているのです。
タイトルに問題がある有名な絵!「ヴィーナスの誕生」ボッティチェリ
ボッティチェリは、ルネサンス期に活躍した画家です。
貝の上にヴィーナスが立っている絵は美術の教科書に必ず掲載されている有名な作品です。
タイトルが「ヴィーナスの誕生」なので、多くの人は、ヴィーナスが貝から生まれ出た直後の様子を描いた作品だと思ってしまいます。
しかし、この絵は貝から生まれ出た様子ではありません。
貝に乗って陸に到着した様子なのです。
描かれているヴィーナスは、海の泡から生まれた愛と美のヴィーナスです。
ホタテ貝は、繁殖の象徴です。
ヴィーナスは豊穣の女神でもあるため、ホタテ貝に乗っています。
ホタテ貝に乗ったヴィーナスを後ろの神が息を吹きかけて陸地まで連れてきたのです。
「誕生」とタイトルがつけられた理由は「ヴィーナスの誕生」が「ルネサンスが始まるきっかけ」になったため。
「誕生」のシーンではないけれど、「ルネサンスの誕生」とかけたのではないかといわれています。
これは間違える有名な絵!「シャルパンティエ夫人と子供たち」ルノワール
ルノワールの作品といえば可愛くて美人な少女の絵が有名です。
「シャルパンティエ夫人と子供たち」もシャルパンティエ夫人と二人の女の子が可愛らしく描かれているようにみえます。
しかし、実は女の子は一人でもう一人は男の子です。
中心に描かれている水色のドレスを着た小さな子供は男の子です。
髪もきれいに伸ばされてクルンとパーマがかかっているため、女の子にしかみえません。
男の子なのに女の子の見た目にされている理由は「長生きするように縁起を担いでいるから」です。
昔は、男の子よりも女の子の方が強く、長生きする可能性が高かったため、健康を願って女の子の格好をさせていました。
「男の子」と思ってもう一度見てみると、たしかに男の子に見えてくるから不思議です。
ルノワールは、この作品以外にも「青い服の子供」で女の子の格好をした男の子を描いています。
あけてビックリ!「春画」とは?
浮世絵といえば江戸時代の優雅な美術と思っている人がいるかもしれません。
たしかに有名な歌川広重の風景画は情緒豊かで優雅な雰囲気がある絵です。
また、葛飾北斎の作品も富士山が多く、おめでたいイメージかもしれません。
しかし、浮世絵の中には「春画」というジャンルがあります。
「春の風景画かな」と思って開けてしまうと大変なことになるでしょう。
春画とは、浮世絵の一種ですが性風俗を描いた作品をいいます。
春画は、枕絵や艶本ともよばれています。
美術といえば真面目なイメージがあり、浮世絵といえば江戸のまじめな美術作品と思っている人も多いでしょう。
しかし浮世絵で有名な絵師である菱川師宣・喜多川歌麿・葛飾北斎も春画の絵をたくさん描いています。
おわりに
美術や芸術はとても真面目な世界と思われがちです。
しかし有名な絵であっても、本当の意味を知ることで意外な一面や新たな楽しさと出会えることがあります。
本当の意味を知る前と知った後との絵では同じ有名作品でも全く見る目が変わるでしょう。