美大を卒業した後の進路において、ほとんどの人は芸術活動だけで生計をたてることはできません。
多くの美大卒業生は、生活費を稼ぐことと同時に芸術活動を行う進路を取ることになります。
しかし芸術家やクリエイターを目指す人は、いずれ自分の作品だけで食べていかれるようになりたいと思っているのではないでしょうか。
この記事では、美大卒業後の進路において、できるだけ早く芸術活動に集中できる生活生計のコツについて紹介いたします。
安定した収入を得るためにできることは?
生計をたてるための仕事をしながら、副業のように芸術活動をしているときには、制作の依頼は単発でくることがほとんどです。
継続して製作依頼がくるようになれば収入は安定します。
しかし、単発の依頼は「今度はいつ依頼がくるのかわからない」という状況であり、安定した収入にはなりません。
安定した収入を得る方法は2種類あります。
ひとつ目は、企業や団体に就職して収入を安定させることです。
企業のデザイナーになれば収入は安定します。
しかし、企業に就職すれば好きな作品を好きなようにつくる芸術活動は難しくなります。
クライアントの要求をくみ取った「商品」を作る毎日が始まるのです。
ふたつ目の方法は、フリーランスでたくさんの仕事を得ることです。
フリーランスは、ひとつの団体に属することなく時間も自由に使うことができます。
芸術活動を重視するほとんどの人は、フリーランスになって安定した収入を得ることが夢でしょう。
しかし、フリーランスで仕事量を増やすまでには時間がかかります。
安定した収入を得るためには、ちょっと努力が必要です。
安定した収入は、仕事の受注がポイントです。
より多くの仕事依頼を受けるためには「この仕事はこの人がいい」と思わせるブランディングが必要です。
「なんでも作れます」よりも「これが得意」というアピールを積極的に行うことで固定客を取り込む機会は増えるのではないでしょうか。
また、ある程度の仕事依頼を受けるようになったら、一つ一つの仕事の質に注意しましょう。
多くの仕事をこなすために適当な仕事をしてしまうと、あっという間に信頼はなくなり、安定した収入は遠のいてしまいます。
作品を売るときに価格交渉されたら応じるべきか?
作品を売るとき価格交渉されることがあります。
一生懸命に制作した作品の価格交渉は辛いものがあります。
生計維持のためにやむを得ず応じることもあるでしょう。
とくにコネクションで仕事をもらっているときは断りづらいものです。
価格交渉は、一度応じたら再び元の価格に戻すことは不可能に近いです。
最初に価格を決めるとき「高く言えば仕事を発注してくれないかもしれない」と思い、相場よりも低く言ってしまうこともあります。
しかし、最初に決めた価格をあとから上げることはとても難しいです。
価格交渉されたときには、一時のことではなく「ずっとこの値段で売ることになる」と思って応じるようにしましょう。
フリーランスは、ひとりで芸術活動をしているため、世間の相場に疎くなりがちです。
突然の価格交渉にも的確に応じられるように世間の相場を常に把握し「自分の最低ライン」を決めておくといいのではないでしょうか。
芸術とビジネスは両立しませんか?
ある教授が「お金のために制作する人は芸術屋、自分の制作をする人は芸術家」と言っていました。
しかし、生計をたてるためには芸術家ばかりではやっていかれません。
芸術活動で生計をたてるためには、芸術家と芸術屋の両方になって、芸術とビジネスを両立させなければなりません。
お金のためだけに芸術活動をする芸術屋が続くと、制作する意味を見失いやる気をなくしてしまうでしょう。
芸術とビジネスを両立させるためには、自分の芸術活動をしつつ収支の管理をすることがポイントです。
収支とは、出ていくお金を入ってくるお金の管理です。
出ていくお金よりも入ってくるお金が多ければビジネスとしての芸術は両立していることになります。
フリーランスは確定申告をします。確定申告には、経費の計算が必要です。
仕事量が増えるまでは、気が向かない仕事を受けて収入を増やすよりも、納得できる仕事をしながら経費を節約して利益を出すほうがいいのではないでしょうか。
画家は個人事業主になれますか?
画家は資格が必要ではないため「職業は画家です」といったときから画家になることができます。
ただ、社会的には開業届を提出して個人事業主になったほうが職業として認められるのではないでしょうか。
フリーランスの画家もデザイナーも写真家も個人事業主になることはできます。
趣味やボランティアではなく、一定の収入(確定申告が必要な程度)があり、継続して収入を得られているならば開業届を提出して個人事業主になってみてはいかがでしょうか。
個人事業主になれば、自分自身もプロとしての意識が高まります。
さらに帳簿付けが必要になり、収支も意識するようになるでしょう。
おわりに
今回は、美大卒業後の進路における「芸術活動」と「生活生計」について紹介しました。
好きなときに好きなものを作ることは芸術活動ではなく趣味になります。
芸術活動で生計をたてることは、プロとして仕事を受けることです。
実は「芸術活動で生計をたてられるか?」と心配するよりも「芸術活動で生計をたてる覚悟はあるのか!」と自分に問いかけることが一番大切なことかもしれません。