山野草とは、日本の高山や山野に昔から自生している草花です。
落ち着いた色合いで、ひかえめな花を咲かせる山野草は日本人の好みに合い、1970年代頃には山野草のブームもありました。
園芸愛好家たちがこぞって山野草を育てていたのです。
最近は、植物の自然な姿を生かすイングリッシュガーデンの広まりとともに、山野草は再び注目を集めているようです。
高山でないと育てられない品種もありますが、暑さにも耐える園芸品種も出てきています。
この記事では、自宅でも育てやすい山野草をピックアップしてご紹介していきます。
山野草の魅力を身近に!
スミレ
スミレは日本の山野に古くから自生する山野草です。
スミレは総称で、園芸品種は数多く存在しますので、暑さ、寒さに強い品種を選べば、毎年可愛らしい花を咲かせてくれます。
下を向いて咲く花ですが、日当たりが良い方がよく育ちますので、庭に植える場合には何より日当たりの良いところに植えましょう。
鉢植えで管理するときには、夏の直射日光を避ける以外は日向に置きます。
土の中にいる害虫がつくことがあるため、鉢植えの場合は棚の上で管理すると避けることができます。
山野草に慣れないと、冬に葉も茎もほとんどなくなったスミレを見て「枯れてしまった」と思いますが、春にはまた新しい芽を出してくれます。
2〜3年すると株が弱って新芽が出なくなることがあるので、種は収穫しておくと安心です。
園芸品種として人気のスミレには、多くの品種がありますので、大きさや花の色など好みのものを選んでみましょう。
キキョウ
キキョウは星のような形の花とギザギザした花が特徴的な日本古来の花です。
野生のキキョウは今や絶滅危惧種となっていますが、園芸品種は多く存在しています。
秋の七草の一つとされ、秋のイメージがありますが、本来の花の時期は夏です。
日本の夏に涼しげに咲くキキョウは暑さを和らげてくれるようです。
花の後の花がらを摘むとたくさん花を咲かせてくれますが、種を収穫したい場合はそのままにしておきましょう。
冬は地上部の葉や茎を枯らして越冬します。
乾きすぎないよう、最低限の水やりをすると春には芽ぶいてくれます。
ギボウシ
ギボウシは、一般的にはそこまで知られていませんが、園芸の世界では花形といってもいい植物です。
もともとは日本原産のギボウシは、江戸末期に海外に渡りました。
英名はホスタといい、園芸品種が多く開発されました。
イングリッシュガーデンには欠かせない存在です。
夏に花を咲かせ、花のない時期も美しい葉で庭に彩りを与えてくれます。
大きさ、花の色、葉の模様の異なる多種多様な種類がありますので、好みやスペースに合わせて選ぶことができます。
冬は枯れてしまいますが、春にはまた芽を出し、何年も花を楽しめます。
オキナグサ
オキナグサは日本の本州以西に自生する多年草です。
野生のオキナグサは絶滅危惧種ですが、栃木県には群生地もあります。
オキナグサという名は、花が咲いた後に伸びる白いおしべが、おじいさん(翁=オキナ)のヒゲに似ていることに由来します。
夏の直射日光を避ければ、屋外で越冬もでき、毎年花を咲かせてくれます。
日光を好むので、春や秋は日当たりの良いところに置きましょう。
他の山野草と同様に冬は休眠期に入りますので、水やりは最小限にします。
日本のオキナグサはチョコレートのような暗い赤紫色のイメージですが、紫色、白色などの品種もあります。
花の後のヒゲだけでなく葉や茎にも白い毛が生えているオキナグサには不思議な魅力があります。
地味なようでいて、虜になっている愛好家の多い花です。
山野草はどこで買えるの?
山野草は、登山客が訪れるような山々が美しい地域の観光スポットや道の駅で、お土産として売られていることがあります。
また、生産者の方が山野草の専門ショップを開いていることもあります。
しかし、道の駅や専門ショップでは育てることがむずかしい野生の品種に近い山野草を扱っている可能性があるので、ご自分のお住まいの土地で育てられるかよく聞いてみてから購入するようにしましょう。
その他に、大きめの街の花屋さんにも山野草は置いてあります。
ごく普通の花屋さんに置いてある山野草は園芸品種であることが多く、野生のものより育てやすいです。
バラやユリなどの園芸品種は花がかなり大きく改良されていますが、山野草の場合は素朴な魅力を生かした改良でほんの少し花が大きくなっている程度のことが多いようです。
山野草の園芸品種は花の時期が長くなっていたり、暑さに耐えられる性質のことも多く、どうしても野生がいいというこだわりがなければメリットの方が多いでしょう。
見た目では野生か園芸品種かはわからないので、購入する前に確認しておくと安心です。
お店で気に入ったものが見つからないようなときには、ネットショップで選ぶと花の色や大きさも自分の好みに合わせた種類を選ぶことができるでしょう。
生産者の方が運営しているネットショップでは流通経路が短くなる分、店頭で買うよりも新鮮な植物が手に入ることも多いようです。
山野草はぜひ素焼きの植木鉢で育てましょう
山野草を鉢植えで育てるときには、「素焼き」の植木鉢がおすすめです。
素焼きは、気孔質というごく小さな穴がたくさん空いている性質で、空気や水分の通りやすい利点があります。
自然界では空気を多く含み水はけのよい土に根を張っている山野草にとっては、たくさん穴がある素焼きの植木鉢は過ごしやすいのです。素焼きの植木鉢では、土が早く乾燥するので、根腐れもしにくくなります。
また、鉢の側面から水分が蒸発するときに打ち水と同じ原理で熱が奪われて、土の温度の上昇を抑える効果もあります。
山野草は、暑さに耐えられるタイプのものでも、暑さが得意ということはあまりないので、この点でも素焼きの植木鉢は好都合なのです。
おわりに
山野草、という言葉には、そう簡単には育てられないのではないかと思わせる特別な響きがあります。
実際には、育てやすい種類や園芸品種を選べば、誰にでも育てられるものです。
気をつけて見ていると、街の中でも山野草の鉢植えはしっかりと根を張って花を咲かせています。
可憐でひかえめな山野草には、ほかの花々とはまたちがった魅力があります。
気に入った山野草があれば、ご自宅で育ててみてはいかがでしょうか?