この記事では、ハーブの歴史とエピソードについてご紹介します。
最近では、日本の食卓や暮らしの中にもよくみられるようになったハーブ。
パセリ、ローズマリー、ミント、バジルなどは、料理、ハーブティー、フレグランス、化粧水など、さまざまな用途で役立てられています。
生命力があり育てやすいハーブは、園芸店やホームセンターでは必ず苗や種が売られています。
ガーデニングが好きな方々にとっては、すでに育てていたり身近な存在かもしれません。
ハーブはいつからあるの?
ハーブの歴史を見ていくと、その起源はなんとメソポタミア文明の時代にまでさかのぼります。
今から約5000年前の紀元前2世紀3000年頃で、日本では縄文時代にあたります。
この時代、病気や怪我の治療には呪術が用いられるのが一般的でした。
ハーブはその補助的な役割を果たしていて、呪文を唱えるときに薬草を焚いたり、薬草を煎じて患者に飲ませたりしていたそうです。
ミント、ルッコラ、ディル、タイム、コリアンダーなどがすでに使われていました。
今でも、おなじみのハーブにそんなに長い歴史があるとは驚きです。
歴史の中のハーブのお話
有史以来、人間ともにあったハーブには多くの逸話が存在します。
長い歴史の中に登場するハーブのエピソードをいくつか紹介します。
クレオパトラが愛したハーブ
紀元前69年に王女として生まれ、エジプト王国を支配したクレオパトラ。
世界3大美女の一人として有名です。
その美しさでローマ帝国のカエサルを虜にし、エジプト王国を守ったといいます。
クレオパトラは生まれながらに美人だったという説と、顔立ちの美しさはそうでもなく知性や立居振る舞いで実力者たちを次々と魅了したという説があります。
そんなクレオパトラが、薔薇を好きだったことは有名かもしれません。
薔薇の花びらを浮かべたお風呂に入ったり、宴の会場に薔薇をしきつめたことも知られています。
当時の薔薇は今のように多くの色がなく赤色だったと言われています。
クレオパトラは薔薇だけでなく、ハーブも愛用していたのだそう。
ジャスミンのお風呂に入り、ハイビスカスティーを飲み、ハーブが原料の香水も使っていたのだそうです。
さらに現代でも髪染めに用いられるヘナで、髪だけでなく爪や絨毯を染めてもいたとのこと。
クレオパトラが豪華な薔薇だけでなく、ハーブを何種類も使って日々美しさを磨いていた女性だったとは、その女子力の高さに感心してしまいます。
ローマ人が絶滅させた幻のハーブ
クレオパトラの治めたエジプト王国に続くローマ帝国の隆盛の時代。
日本では弥生時代にあたるこの頃には、現代医学に近い医療も行われるようになりました。
薬草学も発展し、ハーブはローマの料理にも使われています。
ハーブや香辛料が多く用いられ、元の材料がわからないほどの味つけをすることがローマでは美食とされていたのだそうです。
この時代には、ラセルピキウム(ギリシャ名: シルフィウム)という香り高いハーブがありました。
時の有力者は、ラセルピキウムを売るよりも需要のある羊肉を売る方が儲かることから、自生するラセルピキウムを羊たちに食べさせ放牧地にしてしまいました。
その結果、ラセルピキウムは絶滅寸前になってしまいます。
高値で取引されるようになったラセルピキウムの最後の一枝は皇帝ネロへ贈られました。
ネロは最後のラセルピキウムを食べてしまい、ついには絶滅してしまったということです。
日本最古のハーブは?
日本の歴史には欧米のような古くからのハーブはないだろう、と思っている方もいるかもしれません。
たしかに日本にハーブティーが入ってきたのは、ほんの30年前という情報もありました。
しかし、洋風ハーブでなく日本古来の薬草に目を向ければ、日本の歴史にもハーブがあるのです。
日本最古のハーブは、欧米ハーブの起源と同じメソポタミア文明の頃。
日本では縄文時代にあたる時代に、すでにシソ、サンショウが使われていたことがわかっています。
縄文遺跡からはシソの種子やサンショウの実が普遍的に見つかっていて、人々の暮らしには身近なものであったことがうかがえます。
アメリカ大陸に渡ったハーブの話
ハーブはアメリカでも愛されていますが、そのきっかけは清教徒革命だったそうです。
1649年にイギリスで起きた清教徒革命で、政府の迫害を受けたピューリタンは新天地アメリカに移住します。
このときに上陸した医師からの注文で、48種類以上のヨーロッパのハーブが医薬品としてアメリカ大陸へと運ばれました。
それらが後に自生するようになったという記録も残っています。
もともと住んでいたネイティブアメリカンもさまざまな薬草を使っており、ヨーロッパとアメリカのハーブはこの地で歴史的な出会いをすることになります。
ペストにかからなかった不思議な盗賊の話
中世ヨーロッパで昔ペストが大流行し多くの人々の命が奪われました。
まだウィルスの正体が明らかではなかった時代に、ペストは黒死病と呼ばれ大変恐れられていたのです。
そんな危機的状況のなか、フランスで盗みを繰り返す4人組の盗賊がいました。
彼らはペストにかかった人の家に盗みに入っているのに、なぜか罹患することがありませんでした。
ようやく捕らえられた4盗賊は、刑を軽くすることと引き替えに、ペストにかからない秘密を聞かれたのです。
その秘密はなんと「ハーブ酢」でした。
彼らはセージ、ローズマリー、ニンニク、ミント、シナモン、ナツメグ、ショウノウなどを漬け込んだ酢を身体に塗ったり口に含んだりしながら、犯行に及んでいたのです。
使われたハーブは、抗菌、強壮、鎮静作用など、優れた効能があるものばかりです。
ハーブも酢もウィルスには効かないことがわかっていますが、ハーブ酢には身体の免疫力を上げて感染を防ぐ効果はたしかにあったのでしょう。
そのレシピは、1748年にCODEX(世界的に通用する食品規格)にも載せられました。
南仏では今でも「Vinaigre des Quatre Voleurs(4人の泥棒の酢)」という名でこのハーブ酢が売られています。
おわりに
ご紹介した歴史エピソードには、何種類ものハーブが登場しました。
ローマの絶滅したハーブを除いて、どれも今でも簡単に手に入るところが嬉しいところです。
セージ、ローズマリー、ミント、シソ、サンショウなど、多くは自分で育てることもできるのです。
長い歴史を誇るハーブに興味が出てきたら、ハーブガーデニングにも挑戦してみてはいかがでしょうか?