イタリアのフィレンツェへ旅行するなら、ウフィツィ美術館を見ずして日本に帰れません。
それほど有名な観光スポットであり、アートに詳しくない人でも楽しめるでしょう。
たとえばボッティチェリの「春」や「ヴィーナスの誕生」など、教科書に掲載されている名画のオンパレードです。
ルネサンス発祥の地であるフィレンツェは、屋根を持たない美術館といわれます。
中世の名残が色濃く残る街並みの一部は「歴史地区」と呼ばれ、世界遺産に登録されました。
かつてメディチ家の行政機関だった建物が、いかにして美術館になったのか。
この記事ではウフィツィ美術館ができるまでの経緯と魅力をわかりやすく解説します。
ウフィツィ美術館の歴史・成り立ち
ウフィツィ美術館は、メディチ家の歴代当主が蒐集した美術品を展示するために設立されました。
まずはミュージアムが現在の姿になるまでの経緯を説明します。
かつてはメディチ家の事務所だった
「Uffizi」は、事務所という意味のイタリア語です。
英語でいうところの「office」で、その名の通り役所の建物として使われていました。
建築を命じたのは初代トスカーナ大公のコジモ1世で、1560年から工事が開始されています。
ヴァザーリが設計を担当し、完成までにおよそ20年を要しました。
ヴァザーリは1574年にこの世を去り、1580年に後任のパリージとブオンタレンティが竣工を見届けています。
当時は役所の建物が13カ所に散らばっており、業務の効率が悪かったことは容易に想像できるでしょう。
行政機関を統合するとともに、最終的には美術館のような施設を作りたい。
それがコジモ1世の希望だったのかもしれません。
役所が美術館になるまで
コジモ1世の死後、息子のフランチェスコ1世が後を継ぎます。
彼の時代にトリブーナが増築され、今やミュージアムにおける目玉の1つとなりました。
1591年にトリブーナが希望者限定で公開され、これがウフィツィ美術館の始まりとされています。
建物全体が一般公開されたのは1769年でした。
遡ること約30年前、最後のトスカーナ大公ジャン・ガストーネが後継者を残さずに逝去します。
彼の姉でメディチ家最後の血族となったアンナ・マリア・ルイーザは、美術品が国外へ流出するのではと危惧していました。
そこで「作品を国内に留めて一般公開する」という条件つきで、フィレンツェ政府にコレクションを寄贈したのでした。
メディチ家の財宝を守り抜いたアンナは、偉大な人物として市民から愛されています。
イタリアが統一国家となってから正式に国立美術館となり、現在に至ります。
ウフィツィ美術館の特徴
ウフィツィ美術館は順番通りに展示室を巡るため、鑑賞ルートがわかりやすいです。
1日もあれば全体を見て回れる規模ですが、非常に混雑するので予約を推奨します。
フロアマップはこちらからご覧ください。
ヴァザーリが設計を手がけた建築
ウフィツィ美術館を設計したのはヴァザーリです。
彼は画家でありながら建築家としても活躍しました。
ウフィツィ美術館の特徴といえば、コの字型の建物が筆頭に挙がるでしょう。
ドーリア式の回廊の上に2階と3階が造られました。
展示室もさることながら、各部屋を結ぶ廊下を飾る彫刻にもご注目ください。
建物自体が素晴らしい芸術品であり、一見の価値があります。
ここでしか見られない名画たち
ウフィツィ美術館には、ルネサンスの巨匠たちの作品がそろっています。
他のミュージアムにも同時代のコレクションが収蔵されているものの、密度の濃さではウフィツィの右に出るところはないでしょう。
ミケランジェロ、レオナルド・ダヴィンチ、そしてラファエロ。
美術愛好家なら誰もが知っているであろう三大巨匠の絵画を所有しています。
ウフィツィ美術館で見逃せない展示室は3階に集中しているため、時間がない場合はこのエリアだけでも鑑賞しましょう。
ちなみに見学ルートは上から下へ降りていくように設定されています。
美術館の始まりとなったトリブーナ
先ほども登場したトリブーナは、ボッティチェリの「春」「ヴィーナスの誕生」と並ぶ見学スポットになっています。
フェルナンド1世がブオンタレンティに命じて造らせた部屋で、美術館の原点となりました。
豪華な装飾品の数々を眺めていると、メディチ家の財力を肌で感じるのではないでしょうか。
まず目に飛び込んでくるのは、中央に置かれている八角形のテーブル。
天井を見れば、6,000個の貝殻を嵌め込んだ豪華絢爛な装飾に圧倒されます。
壁は鮮やかな深紅で統一されていて、名だたるイタリアの画家たちの作品がずらり。
美術館の原点となっただけあり、部屋自体が1つの芸術品ですね。
併設ショップ&カフェ・レストラン
美術館を訪れる楽しみは、作品を鑑賞することだけではありません。
お土産を選んだり、カフェでお茶を飲んだりするのも醍醐味といえるでしょう。
ショップ
ミュージアムショップはウフィツィ美術館の出口付近にあります。
実際にグッズを見てみたい人は、こちらからご覧ください。
おすすめのグッズ
- 「メデューサの首」のトートバッグ
カラヴァッジョの有名な作品をモチーフにしています。なかなかのインパクトがあり、旅の記念になるでしょう。
- 「ヴィーナスの誕生」の扇子
ウフィツィ美術館を代表する看板作品が、扇子になりました。
日本人向けのお土産にぴったりな一品です。
- 公式図録
美術館のお土産で外せないものといえば、図録でしょう。
公式図録の表紙を飾るのは、ボッティチェリのヴィーナスです。
残念ながら日本語版がないため、英語が堪能な人におすすめ。
カフェ&レストラン
続いては、ウフィツィ美術館のカフェとレストランの情報を紹介します。
現地に行く機会があれば、イタリアのグルメを味わってみてください。
- ミュージアムカフェ
美術館の3階(日本では2階)の西側にあります。
オープンテラスからの眺めは絶景ですので、外の席がおすすめ。
テラスの右側にはヴェッキオ宮殿のアルフォルノ塔がそびえ、少し離れた場所にドゥオモの赤い屋根が見えます。
- ジッリ
フィレンツェで最も長い歴史を持つカフェです。
観光客だけでなく地元の住民も集う人気のお店で、いつも賑わっています。
- イエローバー
生パスタとピッツァが名物のレストラン。
日本語のメニューが用意されており、英語やイタリア語が苦手でも入店しやすい雰囲気です。
- アル・アンティコ・ヴィナイオ
パニーニ(サンドイッチ)が美味しいと評判です。
ウフィツィ美術館の目と鼻の先にあり、行列が途切れない人気店。
- ビアンコロッソ
日本人が経営しているイタリアンレストランです。
和食も提供しているので、日本が恋しくなったら立ち寄ってみてはいかがでしょうか?
日本語に明るい店員がいるのも高評価のポイントです。
芸術の都フィレンツェで観光を楽しもう
フィレンツェは「花の都」や「芸術の都」などの異名を持ち、屋根のない美術館と形容されます。
まさに街全体が大きなミュージアムであり、ウフィツィ美術館がある地域は世界遺産に指定されているほど素晴らしい景観に恵まれているのです。
かつての芸術家たちにとって、イタリアは憧れの場所でした。
彼の国へ留学することは一種のステイタスとされ、ベラスケスやルノワールなども勉強のために訪れています。
「芸術の国=フランス」という印象があるかもしれませんが、イタリアも負けてはいません。
ウフィツィ美術館でルネサンスの奥深さを味わってみてくださいね。