すみだ北斎美術館は、東京都墨田区にある2016年に設立されたばかりの新しい美術館です。
葛飾北斎は、アメリカの『LIFE』誌に唯一「この1,000年で最も偉大な功績を残した世界の人物100人」に選出された日本人です。
勝川春朗、宗理、戴斗、為一、画狂老人卍。
これらはすべて、葛飾北斎が名乗った画号のほんの一部です。
この記事では、すみだ北斎美術館と、画号と作風を変え続け常に進化を求めた世界の北斎に迫ります。
すみだ北斎美術館の歴史・成り立ち
設立の経緯
すみだ北斎美術館は、地域活性化のために、北斎と関わりのある墨田区が事業主体となり作られました。
基本理念は「地域へ、世界へと北斎に関する情報を発信し、成長し続ける美術館」。
その理念通り、誰もが気軽に立ち寄れる公園のような雰囲気を醸し出しています。
北斎の幼少期
葛飾北斎は、1760年に本所割下水にて誕生しました。
幼名は時太郎。本名を「川村鉄蔵」といいます。
4歳の時に、幕府御用鏡師である中島伊勢の養子になりました。
手先が器用だったことが、のちに浮世絵師として活躍するのに役立ったのでしょう。
浮世絵師としてデビュー
14歳で木彫り職人に弟子入りし、版木彫りに従事。
その後、絵師を志して浮世絵師の勝川春章の門下生に転身しました。
「勝川春朗」と名乗り、世に作品を発表します。
好奇心旺盛だった北斎は、内密に狩野派や洋画の技術を学んでいました。それが師の知るところとなり、破門されてしまったのです。
画号の変遷
北斎は、なんと30回にわたり改号しました。
「宗理」時代
仕事場を失った北斎は生活に困窮します。しかし画業への情熱は衰えませんでした。
当時は狂歌が流行しており、それに関連する刷物や絵本の挿画を手掛けて評判を得ます。
「葛飾北斎」時代
この時期は肉筆画に取り組みました。宗理の画号を門人にゆずっています。
浮世絵版画の表現の幅を広げ、≪酔余美人図≫を筆頭に後世に残る有名な作品を残しました。
「戴斗」時代
50歳を過ぎてから『北斎漫画』を描きました。別名ホクサイ・スケッチとも呼ばれています。
全国にいた門人のための絵手本で、工芸品の図案集としても親しまれました。
「為一」時代
代表作が生まれたのは還暦以降。≪富嶽三十六景≫や≪諸国名橋奇覧≫などを描きました。
熟練の技術あってこその名作ですね。
「画狂老人卍」時代
75歳にして画号を改めました。≪富嶽百景≫を上梓。
再び肉筆画の時代に突入します。
老境に入ってなお新たな技の習得に励み続ける活力は類を見ないでしょう。
1849年、北斎は90歳の長寿を全うしました。
亡くなる直前まで絵筆を握り、「あと5年あれば本物の絵師になれただろうに」と言い残しています。
すみだ北斎美術館の特徴・見どころ
妹島和世による建築
外壁に淡い鏡面パネルを使い、スリットが入った建物は目を引きます。
設計を手掛けた妹島和世氏は、ルーブル美術館のランス別館や金沢21世紀美術館の建築にも携わりました。
美術館の4階に展望台があり、墨田区を一望でき、スカイツリーも見えます。
余談ですが、かつて敷地内に弘前藩津軽家の大名屋敷がありました。
すみだ北斎美術館のコレクション
2つのコレクションがすみだ北斎美術館の基礎になっています。
ピーター・モースコレクション
北斎の研究者であり、コレクターであったピーター・モース氏のもの。
彼は東洋の版画技術への造詣が深く、熱心に集めていたことがうかがえます。
没後、遺族が作品の散逸を防ぐために墨田区へ寄贈しました。
その質の高さと量から、欧米における最高にして最大のコレクションとされています。
楢崎宗重コレクション
浮世絵研究の権威であった故楢崎氏が、1995年に墨田区へ寄贈しました。
楢崎氏は、多数の著作や研究論文を発表しています。
浮世絵以外にもそれと関わりのある資料も含まれており、非常に貴重なコレクションですね。
すみだ北斎美術館の展示作品
常設展示では、北斎のアトリエを再現した模型がみられます。
作品は一部を除き、撮影可能です。
ここでは、いくつかオススメの作品を紹介します。
貴人と官女図
北斎が80歳で描いた肉筆画。一見すると平安時代の絵巻物のようです。
画題は特定されていません。細かな筆遣いと鮮やかな色付けが見事。
富嶽三十六景 神奈川沖浪裏
北斎の代名詞と言えばこれ、というくらい有名な作品。
富嶽三十六景は全部で46図ありますが、その中でも抜群に知名度が高いでしょう。
版本 北斎漫画
15編から構成される、北斎の代表的な絵手本です。
人間や自然、神仏から妖怪など、様々なものを描きました。
併設ミュージアムショップ・カフェ
ショップ
チケットなしで利用できます。
北斎ファンならつい食指が伸びてしまうグッズがたくさんありますよ。
オススメのグッズ
- オリジナル北斎漫画手ぬぐい
- 「富嶽三十六景 神奈川沖浪裏」より一筆箋、缶バッジ、ステッカー
- マスキングテープ
- 「富嶽三十六景 神奈川沖浪裏」より一筆箋、缶バッジ、ステッカー
- マスキングテープ
- ポストカード
- スマホケース
- Tシャツ
- 「THE 北斎富嶽三十六景 ART BOX」
アートボックス(書籍)では、学芸員が作品に関する詳細な解説をしています。
これ1冊でより深く北斎を理解できます。
カフェ・レストラン
併設のカフェはありませんが、美術館のすぐ近くに「ORI TOKYO」という人気のお店があります。
北斎通りに面しており、両国駅の大江戸線方向へ向かって徒歩15秒ほどで到着します。
ぜひ鑑賞後に訪れてみてはいかがでしょうか?展覧会とのコラボメニューもありますよ。
店内に≪富嶽三十六景≫の織物が飾られています。
メニュー
- 夏季限定かき氷
※50円追加であんこ・白玉、100円追加でアイスのトッピング可能。その日の氷がなくなり次第終了
ドリンク
- コーヒー(ホット・アイス)
- 紅茶
- 梅昆布茶
- アイスカフェラテ
- カフェシェケラート
- 生ビール
フード
- 本日のお菓子
- 焼きショコラ
- 京の宇治抹茶アフォガート
- アイス最中
- 自家製バター付きトースト
ランチ(11時半~14時半)
- ハンバーグランチ
- 牛すじ煮込みランチ
- ステーキランチ
- 牛タンシチューランチ
※10食限定、ドリンクかミニアイス付き
まとめ
北斎は、生涯で93回の引越しを繰り返したという逸話の持ち主です。
画業に専念するあまり一切掃除をせず、家が汚れたら転居を繰り返しました。
そんな奇人だったからこそ、世界のHOKUSAIになれたのでしょう。
すみだ北斎美術館には図書館があります。
館外への貸し出しはしていませんが、館内で資料を閲覧可能。
必要なら有料で蔵書のコピーができます。
日時指定なしで行けますが、混雑している時は入場制限ありです。
イベントは予告なしで中止になる可能性がありますので、事前に確認してみてください。
料金
AURORA(常設展示室)
一般・・・400円
高校生、大学生、専門学校生、65歳以上・・・300円
※高校生・大学生・専門学校生の方は生徒手帳・学生証を、65歳以上の方は年齢を証明するもの(健康保険証・運転免許証など)をご提示ください。
AURORA(常設展示室)観覧料が無料となる方
- 未就学児童、小学生、中学生(生徒手帳や年齢を証明するものをご提示をお願いいたします。)
- 墨田区内の高等学校に在学している高校生及び引率者が教育課程に基づいて観覧する場合(事前にご連絡をください。区外の高等学校に在学している高校生は有料となります。
- 身体障がい者手帳・愛の手帳・療育手帳・精神障がい者保健福祉手帳・被爆者健康手帳をお持ちの方及びその付添いの方(付添いの方は当該手帳をお持ちの方1名につき1名まで。入館の際は障がい者手帳等のご提示をお願いいたします。)
- 幼稚園児、小・中学生及び保育所に入所する児童の引率者が教育上または保育上の目的のために観覧する場合(事前にご連絡をください。)
※休業日や営業時間、その他の掲載情報については変更の可能性があります。日々状況が変化しておりますので、最新の情報については施設・店舗へお問い合わせください。
アクセス
美術館名 | すみだ北斎美術館 |
住所 | 東京都墨田区亀沢2丁目7-2 |
電話番号 | 03-6658-8936 |
ホームページ | https://hokusai-museum.jp |