清水三年坂美術館は、京都の有名な観光スポットの1つ。
国内では珍しい、日本の伝統工芸品が一堂に会する空間です。
館長の村田理如(まさゆき)氏は、出張で訪れたニューヨークにて超絶技巧に魅せられました。
美術館を創設したきっかけは、国内に伝統工芸品を展示する場所がないと気づいたこと。
いわば「明治のクールジャパン」というべき現象がおよそ150年前に起きていたのです。
この記事では、職人の技が込められた伝統工芸が魅力の清水三年坂美術館の見どころを紹介します。
清水三年坂美術館の歴史、成り立ち
21世紀の幕開けである2000年、京都に小さな美術館がオープンしました。
その名は清水三年坂美術館。蒔絵や金工といった貴重な工芸品を常設展示しています。
まずは美術館ができるまでの歩みを説明しましょう。
出会いはニューヨークのアンティークモール
館長の村田理如氏は、村田製作所の創業者である故村田昭氏のご子息です。
もともとはアートと無縁な生活を送っていました。
そんな人物が、なぜ京都に美術館を設立するに至ったのでしょうか?
始まりは、出張でニューヨークに行ったことでした。
偶然入ったアンティークのお店で、日本の印籠を見つけたのです。
村田氏は、美しい細工が施された日本の伝統工芸品に魅了されました。
思わぬ衝動買いを契機として、村田氏は海外出張やオークションで日本の美術品を買い集めます。
ふとある時、彼は気付きました。
「日本には、自国の伝統工芸品を専門に扱う店はおろか、それらを展示する美術館すらない」
これには理由があります。
幕末や明治期に作られた品々は、あくまで外貨獲得の手段。
外国人に人気があり、輸出するのが前提でした。
また日本の西洋化も要因の1つ。
西洋文化に人々の関心が傾き、古くから存在していた工芸品の価値が著しく低下してしまたのです。
超絶技巧への情熱
村田氏は、伝統工芸を取り巻く状況を歯がゆく感じていました。
日本の技術の粋を尽くした作品が正当な評価を受けられず、なおざりにされていると考えていたのです。
村田製作所の専務を務めていた当時、村田氏は多忙を極めていました。
せっかく集めたコレクションを鑑賞する時間が取れなかったのです。
さらに膨大な美術品の置き場所に困っていました。
そこで村田氏は、47歳の時に退職して美術館を作るために動き始めます。
こうして1人の美術コレクターによる、超絶技巧ばかりを集めたミュージアムが設立されたのでした。
いつの日か、明治を超える工芸品が作られること。
それが村田氏の願いなのだそうです。
清水三年坂美術館の特徴、見どころ
清水三年坂美術館は、常設展と企画展の両方を行っています。
収蔵品は、金工・漆工・七宝・刺繍絵画など実に幅広いです。
いずれも日本の高い技術力が実感できるものばかり。
小さい作品が多いので、拡大鏡を持参すると便利でしょう。
職人技の世界に触れられる
常設展示では、作品だけでなく、工芸品を作る過程についても解説しています。
めったに覗けない職人の仕事風景が見られるのは楽しいですよ。
サンプルを用いて蒔絵が完成するまでの流れを展示しているのは、他にはない特徴でしょう。
他にも、職人が使う道具が展示されていたり、制作風景の動画が観られたりします。
大人も子供も楽しめること間違いなしです。
貴重な伝統工芸品が観られる
展示されている作品は、帝室技芸員が作った一級品ばかりです。
帝室技芸員とは、宮内省(現在の宮内庁)が任命した選ばれし作り手のこと。
他の美術館とは一味違う作品が集まっているのです。
ジャンルごとに有名な職人を挙げてみましょう。
蒔絵
白山松哉、川之辺一朝
七宝
並河靖之、涛川惣助
金工
加納夏雄、海野勝泯、高瀬好山
京薩摩
錦光山、藪明山
彫刻
高村光雲、安藤緑山
刺繍絵画
加藤達之助
特にオススメなのが、安藤緑山の牙彫と高瀬好山の自在置物です。
安藤緑山は、象牙の彫刻家として活躍した人物。象牙を彫るだけでは満足せず、染色まで行いました。
白が基調の牙彫において革新的な作品を残しています。
高瀬好山の自在置物は、一度みたら忘れられないほど精巧な作品。
金属に命を吹き込んだ芸術品です。
ちなみに刺繍絵画とは、その名の通り針と糸で描かれた絵です。
以前に「美の巨人たち」というテレビ番組で≪獅子図≫が紹介されました。
まさに神業としかいいようがない出来栄えは、圧巻です。
併設ミュージアムショップ
清水三年坂美術館はショップのみ。1階にあります。
ここでしか手に入らないグッズが目白押し。
オススメの商品
蒔絵シール
実際に蒔絵細工を買うと値が張りますが、シールなら手ごろな価格です。
お気に入りの絵柄を探すのが楽しいくらい種類があります。
使い方は人それぞれ。手帳に貼ってもよし、プレゼントもいいですね。
一筆箋
使うのをためらうほど美しいデザインがそろっています。
大切な人へのメッセージを伝えたい時に使ってみてはいかがでしょう。
手書きの良さを改めて実感できるのでは?
ポストカード
清水三年坂美術館に行った記念として気軽に買えます。
柴田是真の作品を集めた12枚セットがお得ですね。
また、100年前の京都を切り取った古写真のポストカードも。
写真好きにはたまりません!
つば栞
日本刀のつばを模した栞です。さまざまなデザインがあり、つい目移りしてしまいそう。
読書の時間が楽しくなるグッズです。
自分用に買っても、お土産にしてもよいですね。
図録
いわば小さな美術館のようなもの。いつでも作品の余韻に浸れます。
お気に入りの作品は何度眺めても飽きません。京都観光の思い出にもなります。
ここで紹介したグッズは、すべてオンラインショップで購入可能です。
まとめ
今回は、清水三年坂美術館を紹介いたしました。
日本人自身も自国の文化を知ることができるのはとても良いことですね。
多くの人に日本の伝統工芸の魅力が少しでも伝わればと思います。
職人の数はどんどん減少の一途をたどっています。
せっかくの技術も、後継者がいなければ途絶えてしまいます。
1人でも多くの人が日本の技術のすばらしさに注目して欲しいところです。
京都を訪れた際は、ぜひ清水三年坂美術館へ足を運んでみてください。
※休業日や営業時間、その他の掲載情報については変更の可能性があります。日々状況が変化しておりますので、最新の情報については施設・店舗へお問い合わせください。
アクセス
美術館名 | 清水三年坂美術館 |
住所 | 京都府東山区清水3丁目337−1 |
電話番号 | 075-532-4270 |
ホームページ | http://sannenzaka-museum.co.jp/ |