石膏像は、美大受験予備校でも頻繁に登場し、美大入試でも多くの学部で石膏デッサンが行われています。
石膏デッサンのコツは、正しい形と光の表現です。
石膏デッサンは、絵画や彫刻すべての基礎となります。
石膏像によって、もちろん難易度は変わり、見るポイントも変わります。
この記事では、石膏像に焦点をあて上手に描く石膏デッサンのコツを紹介いたします。
石膏像「ラボルト」|石膏デッサンの第一歩に
ラボルトは、頭部だけの石膏像です。
どこの誰なのかは、さまざまな説があります。
ラボルトは、初めての石膏デッサンで描くことが多いでしょう。
ラボルトの特徴は、ボリューム感です。
ゴロッとした実物の頭部よりも大きなサイズ感を表現することが大切です。
ラボルトのようにひとつの塊のような石膏像は、部分的に描くというよりも全体の明暗や面の流れを意識して描きます。
石膏デッサン初心者は、ついラボルトの大きな鼻や髪に目がいきがちです。
しかし、最初から細部を描きこんでしまうと、全体的な量感を出すことが難しくなります。
最初は、大きな塊を描くつもりで「どこが一番明るいのか」「どこが一番暗いのか」を意識します。
ラボルトと似た形の石膏像に「アグリッパ」があります。
アグリッパは、ラボルトよりも首の部分が多く、首の暗い部分を描きこむ勉強ができる石膏像です。
ラボルトで思いっきり色をのせられるようになったら、アグリッパの面取り像に挑戦してみるといいのではないでしょうか。
面取り像とは、石膏像の丸みを取った像です。
面で構成されているため明暗がわかりやすく全体の流れを把握する練習になります。
石膏像「ブルータス」|奥行とボリュームがポイント
ブルータスは、ガイウス・ユリウス・カエサルを暗殺した人で有名です。
カエサルの最期の言葉「ブルータスお前もか」という言葉を聞いたことがあるのではないでしょうか。
石膏デッサンに用いられるブルータスは、頭部と胸部があります。
胸部の横幅が広いため、構図に気をつけないと端が紙からはみ出してしまうことがあります。
石膏デッサンでは、両端と下はすべて紙の中におさまるようにしましょう。
下を切ってしまうと不安定な構図になり、左右を切ってしまうと広がりを表現することが難しくなります。
どうしても紙に入りきれないときには、頭部を少しだけはみ出すようにします。
ブルータスの特徴は、胸元に広がる布でしょう。
頭部は、多少の凹凸はありますが意外と粗削りな表現なので描きやすいです。
注意点は、布の凹凸を描き始めたときに全体の光の流れを忘れないようにすることと頭部のねじれです。
ブルータスがもつボリュームと奥行きを失わないように全体に手を入れていくことがブルータスを上手に描くコツです。
石膏像「モリエール」|細部を描きこむ「パジャント」
石膏デッサンの石膏像の中でも人気が高い石膏像が「パジャント」と「モリエール」です。
パジャントは石膏像の中でめずらしい女性です。
ほぼ左右対称で首のねじれがないため、見た目よりも初心者向けの石膏像です。
ただ、首が前に若干傾いています。顔の光の流れを意識しましょう。
パジャントは、真正面よりも少し下から見上げる構図がおすすめです。
石膏像の厚みが描けるだけでなく、顔に落ちている影や髪と顔のすきまを描くことで量感や奥行きが表現しやすくなります。
パジャントと同じくらい人気の石膏像がモリエールです。
モリエールは、フランスの喜劇作家で髭をはやした個性的な石膏像です。
モリエールは、パジャントよりも難易度があがります。
ボリュームある髪と首のねじれを描かなければなりません。
石膏デッサン上達のコツ
石膏デッサンは、静物デッサンよりも上手い下手がハッキリとわかります。
なぜならば、石膏像は人物の形のため、顔や印象が違えばうまくは見えないからです。
石膏デッサンがうまくなるためには、いくつかの知識が必要です。
とくに正中線は大切です。正中線とは、顔や体の真ん中に引いた線です。
「目や口は正中線に対して水平の位置にある」という知識を持っていれば、頭が傾いた石膏像を描くときでも形が取りやすくなります。
「形がとれているか」を確認するコツは、客観的にデッサン作品をみることです。
熱心に作品をみていると思い込みや思い入れが強くなり客観性が乏しくなります。
客観的にみる方法は、作品を上下逆さまに置いてみたり、鏡に映してみてみたりするといいでしょう。
石膏像をあまりよく見て描くと近いところも遠いところもピントが合っているように描きこんでしまいます。
近くと遠くとでは線の強さが変わります。
おわりに
石膏デッサンは、1枚描き終えるたびに「ここをこうすればよかった」と気がつくことがあります。
次に描くときには、気がついたことを意識して描きます。
この繰り返しが石膏デッサン上達のコツです。初めての「ラボルト」のデッサンは、多くの人が自分の顔に似るといわれています。
自分の顔は毎日よく観察しているモチーフだからではないでしょうか。
石膏像を自分の顔と同じくらいよく描く観察して特徴を捉えることも大切なポイントです。