バチカン美術館は、その名の通りバチカン市国にある美術館です。
世界一小さい国にありながら規模は大きく、さまざまな美術館や博物館が集まって1つの観光スポットになっているのです。
その特徴はコレクションの幅広さにあり、歴代教皇の好みや意向が反映されてきました。
たとえば絵画・彫刻・ミイラなど、さまざまな収蔵品を鑑賞できるミュージアムになっています。
この記事では、バチカン美術館の歴史や見どころについて解説します。
これからイタリアへ旅行する予定がある人は、ぜひ最後までご覧ください。
バチカン美術館の歴史・成り立ち
バチカン美術館は、16世紀、1506年を実質的な起源とされています。
教皇ユリウス2世の時代に、八角形の中庭に古代彫刻のコレクションが設置されました。
ミュージアムの歴史は非常に長いため、すべてを紹介しきれません。
ここでは主要な教皇と出来事を抜粋して紹介しますので、大まかに覚えておくといいでしょう。
ニコラス5世(1447~1455)とアレクサンダー6世(1492~1503)の時代
バチカン美術館の始まりは、二コリーナ礼拝堂とボルジア家の居間でした。
ニコラス5世は私的に使っていた礼拝堂の壁を飾る絵を欲し、フラ・アンジェリコに制作を依頼します。
アレクサンダー6世の居室だった「ボルジア家の居間」は、教皇の死後に長らく空室となっていました。
一般公開されたのは19世紀に入ってからです。
ユリウス2世(1503~1513)とレオ10世(1513~1521)の時代
バチカン美術館の中核をなすコレクションが加わった記念すべき時代といえます。
ユリウス2世の命により「八角形の中庭」にベルヴェデーレのアポロとラオコーンが展示され、現在では見どころの1つとなっています。
1508〜1512年にかけて、ミケランジェロがシスティーナ礼拝堂の天井画を描きました。
グレゴリウス13世(1572~1585)とウルバヌス8世(1623~1644)の時代
16世紀の後半には「地図の間」が誕生します。
教皇グレゴリウス13世は、地理学者のイグナツィオに40枚の地図を描くよう命じました。
クレメンス14世(1769~1774)とピウス7世(1775~1799)の時代
さらに時代は下り、18世紀になると、ピオ・クレメンティーノ美術館が設立されます。
クレメンス14世が創設し、その後ピウス7世が手を入れたため、2人の名前を取って命名されました。
グレゴリウス6世(1831~1846)の時代
19世紀半ば頃には、エトルリア美術館・エジプト美術館・世俗美術館などが新たにお目見えしました。
ピウス11世(1922~1939)の時代
宣教民族学博物館、バチカン絵画館が設立されました。
ヨハネ23世(1958~1963)とパウロ6世(1963~1978)の時代
この時代に大きな転換点を迎え、1973年に正式な美術館としてオープンします。
ヨハネ・パウロ2世(1978~2005)の時代
1984年にバチカン市国とバチカン美術館が世界遺産に登録されました。
以上がバチカン美術館の概略です。
教皇の代替わりや時代の流れとともに、多岐にわたるコレクションが形成されて現在に至ります。
バチカン美術館の特徴
続いては、バチカン美術館の特徴について解説します。
距離にして7km以上あり、つぶさに見学しようとすると5時間以上を要します。
ここでは美術館を効率よく鑑賞できる回り方や見どころを紹介しましょう。
おすすめの鑑賞ルート
バチカン美術館には多数の展示スペースがあるため、メリハリをつけることが重要です。
美術館の公式マップに記載されている見学コースを参考に、おすすめの鑑賞ルートをまとめました。
美術館の歴史でも紹介した八角形の中庭にある《ラオコーン》や《ベルヴェデーレのアポロ》は必見です。
壁に描かれた40以上の地図や、16世紀と17世紀に作られた壮麗なタペストリーが展示されています。
「署名の間」はとくに注目すべき場所です。
バチカン美術館のハイライトといっても過言ではありません。
絵画館には多数の作品が展示されています。
時間がない場合は上記の展示をメインに鑑賞するといいでしょう。
もちろんこのルートは一例ですので、必ずしもこの通りに進む必要はありません。
【必見】これだけは見ておきたい作品
おすすめの鑑賞ルートがわかったところで、一押しの作品に焦点を当てていきます。
エジプト美術館については触れていませんが、古代エジプトの歴史が好きな人はぜひ立ち寄ってみてください。
ピオ・クレメンティーノ美術館
このエリアは下記の5つで構成されています。
- 八角形の中庭
- 動物の間
- ミューズの間
- 円形の間
- ギリシャ十字の間
美術館の歴史でも紹介した八角形の中庭にある《ラオコーン》や《ベルヴェデーレのアポロ》は必見です。
その他にもギリシャ神話で有名な《ペルセウスの勝利》などが置かれています。
ミューズの間にある《ベルヴェデーレのトルソ》は、かのミケランジェロも虜にしました。
頭部や四肢は失われましたが、胴体だけでも迫力があります。
ラファエロの間
ラファエロの間は下記の4つで構成されています。
これは余談ですが、すべての作品を本人が描いたわけではありません。
ラファエロは多忙だったため、下絵のみ描いて残りを弟子に任せることも多かったようです。
- コンスタンティヌスの間
- ヘリオドロスの間
- 署名の間
- ボルゴの火災の間
とくに注目すべきなのは「署名の間」です。
《アテナイの学堂》の右端にラファエロ本人がさりげなく描き込まれているので、探してみてください。
《聖体の議論》など、著名な壁画もお見逃しなく。
システィーナ礼拝堂
バチカン美術館のハイライトといっても過言ではありません。
システィーナ礼拝堂はいつ行っても混雑しますが、開館直後に訪れるとやや空いています。
順路を変更してゆっくり鑑賞するのも1つの手段でしょう。
奥行き40m、幅は約13m、天井までは20mもの高さがあります。
ミケランジェロが4年の歳月をかけて完成させた天井画《天地創造》はぜひご覧ください。
祭壇の壁画《最後の審判》もあわせてご堪能あれ。
絵画館(ピナコテーカ)
絵画館には多数の作品が展示されています。
一部を抜粋して紹介しておきます。
- ラファエロ《主イエスの変容》
- レオナルドダヴィンチ《荒野の聖ヒエロニュモス》
- ベッリーニ《死んだキリストへの嘆き》
- カラヴァッジョ《キリストの埋葬》
上記以外にも見どころはありますので、お気に入りの作品を探してみてはいかがでしょうか。
余談ですが、出口の二重螺旋階段にもご注目ください。
上から見ると大きなアンモナイトに似ていて、その美しさは圧巻です。
ミュージアムショップ・カフェ
館内の至るところにお土産コーナーがありますが、途中で購入すると鑑賞の妨げになるかもしれません。
グッズを持ち運ぶ手間を省くためにも、最後に買うことを推奨します。
ショップ
バチカン美術館でおすすめのお土産を厳選しました。
彫刻のレプリカ
トルソの複製、カエサルやシーザーの胸像など
図録やポストカード
バチカン美術館の図録、人気の展示作品のカードなど
生活雑貨
マグカップ、花瓶、筆記具など
アクセサリー
スカーフ、Tシャツなど
カフェ・レストラン
バチカン美術館は広いため、カフェやレストランが館内に点在しています。
飲食店の一覧
- フードコート
- カフェチェントラレ
- ピッツェリア
- カフェデッレカロッツェ
- カフェラピーニャ
- カフェデルフォルノ
フードコートとカフェチェントラーレに関しては入り口が同じです。
展示を見て回るだけでもかなり体力を使うため、休憩スポットを見つけたら小休止を挟むことをおすすめします。
イタリアの長い歴史を肌で感じられる美術館
バチカン美術館にはありとあらゆる分野のコレクションが存在します。
歴代の教皇たちがいかに美術館の発展に情熱を注いだかが伝わるのではないでしょうか。
現地を訪れる際は予約しておくとスムーズに入場できます。
当日券を買う場合は長蛇の列に並ぶことになりますので、時間を有効活用するためにもチケットを買っておきましょう。
繰り返しになりますが、バチカン美術館の敷地面積は広大です。
鑑賞したい場所を絞ると無駄なく回れるでしょう。
イタリアへ観光する機会があれば、ぜひ立ち寄ってみてください。