オランジュリー美術館は、パリ最古の公園・チュイルリー庭園の一角にあります。
印象派や後期印象派の作品が収蔵されていて、モネの代名詞である《睡蓮》の連作で知られているミュージアム。
パリといえばルーブル美術館やオルセー美術館が人気ですが、オランジュリー美術館も負けてはいません。
小規模ながら、アートが好きな人なら一度は鑑賞したい作品が一堂に会しています。
オランジュリーとは、フランス語で「オレンジ温室」または「オレンジ畑」という意味。
柑橘類の温室があった場所に建てられたことから名づけられました。
オランジュリー美術館の歴史・成り立ち
ミュージアムの見どころをお伝えする前に、オランジュリー美術館が設立された経緯を説明します。
その背景には、モネの代表作《睡蓮》を巡るドラマがありました。
オレンジの温室から美術館へと生まれ変わった
オランジュリー美術館は、かつてオレンジの温室として使われていた場所に建設されました。
その歴史は意外に浅く、19世紀に遡ります。
美術館があるチュイルリー庭園には宮殿が存在していました。
そこにオレンジの温室を作るように命じたのは、時の権力者だったナポレオン3世。
寒さに弱い植物を越冬させるために温室が設置され、そこにオレンジも保管されていたのです。
宮殿は火事で燃えてしまいましたが、温室は残りました。
オレンジの温室を美術館に生まれ変わらせたのは、当時の大統領クレマンソーでした。
友人のモネに対し、作品を展示するスペースにふさわしいと提言したのです。
モネの《睡蓮》を展示するために設立された
第一次世界大戦が終結した翌年の1919年、モネはクレマンソーに「私の作品を国家に寄贈したい」と手紙で伝えました。
その意向に賛同したクレマンソーにより《睡蓮》の国家プロジェクトが誕生したのです。
ここからが大変で、作品の展示場所が決まるまでに約4年の歳月を要しました。
その間にモネの白内障が進行し、一時はほぼ失明状態に陥ります。
高齢による体力低下も加わり、モネの制作意欲は削がれる一方。
作品を国家に寄贈するという計画は暗礁に乗りかけました。
危機的な状況を救ったのは他でもないクレマンソーでした。
もともと医者だった彼は、モネに白内障の手術を受けるようにすすめます。
不完全ながらもモネの視力は回復し、ようやく作品が完成。
モネの遺言により《睡蓮》の連作は画家の死後に公開されました。
後に「ジャン・ウォルター&ポール・ギヨームコレクション」が追加され、改修工事を経て現在に至ります。
オランジュリー美術館の特徴
オランジュリー美術館といえばモネのイメージが強いですが、その他の作品群も充実しています。
先ほど登場したジャン・ウォルター&ポール・ギヨームコレクション(以後「ギヨームコレクション」)は地下2階に展示されており、常設作品はすべて撮影可能です。
それほど広くないため、1〜1時間半ほどで館内を回れるでしょう。
《睡蓮》の連作を360度のパノラマで鑑賞できる
ミュージアムの看板である《睡蓮》は、地上階(0階)に展示されています。
第2・第3展示室に分かれていて、四方の壁が連作で埋め尽くされているのが特徴。
部屋の中央にベンチがありますので、腰を落ち着けてじっくり作品を鑑賞してはいかがでしょうか。
ここで連作を紹介します。
【第2展示室】
- 「緑の反映」
- 「朝」
- 「雲」
- 「日没」
【第3展示室】
- 「2本の柳」
- 「明るい朝、柳」
- 「朝の柳」
- 「日没」
上記の作品はモネの最晩年、1919年から1926年にかけて描かれました。
近くで見ると筆跡が粗いものの、離れて眺めてみると1枚の絵として成立しています。
若い頃に手がけた《睡蓮》とは違う作風になっており、比較するとおもしろいですね。
ギヨームのコレクションも見応えあり
地下2階に下りると、ギヨームコレクションが登場します。
ギヨームは実業家出身の画商で、モディリアーニやピカソなどを支援しました。
彼の死後に作品を受け継いだ妻により、オランジュリー美術館に寄贈されています。
地下の展示フロアは画家ごとに部屋が分かれており、日本でも知られている作品が勢ぞろい。
美術愛好家が喜びそうな顔ぶれとなっています。
以下、人気の画家と作品をまとめて紹介しましょう。
画家名 | 作品名 |
---|---|
ルノワール | 長い髪の浴女、ピアノの前の少女たち |
モディリアーニ | ポール・ギヨームの肖像 |
ピカソ | 大きな浴女 |
ユトリロ | ノートルダム寺院 |
マティス | ソファーの女たちあるいは長椅子 |
ルソー | 婚礼、人形を持つ子ども |
ドラン | 大きい帽子を被ったポール・ギヨーム夫人の肖像 |
ローランサン | マドモアゼル・シャネルの肖像 |
セザンヌ | 林檎とビスケット |
ここでとり上げた作品はほんの一部です。
現地に足を運ぶ機会があれば、お気に入りの絵画を探してみてください。
ミュージアムショップ・カフェ
ショップとカフェは地下1階にあります。
館内を見て回った後は、お茶を飲んで一息つきましょう。
疲れを癒やしたら記念のお土産もどうぞ。
ショップ
美術館ならではのおしゃれなグッズを取り揃えています。
オンラインショップはこちらからご覧ください。
売れ筋商品は睡蓮をモチーフにした雑貨やアクセサリーなど。
オランジュリー美術館でしか手に入らない物がずらりと並んでいます。
人気の商品
- ランチョンマット
- ストール
- トートバッグ
- お皿
- マグカップ
- 折りたたみ傘
- 扇子
- アイマスク
- ノート
- 付箋
日本人にもおなじみの睡蓮は、家族や友人へのプレゼントにぴったり。
眺めているだけで欲しくなるお土産が目白押しです。
カフェ
書店と喫茶を兼ねており、カジュアルで居心地の良さそうな雰囲気があります。
天井はガラス屋根になっていて、日の光が入るためクリーンで明るい場所。
詳しい情報はこちらからご覧ください。
メニューは下記のPDFで確認できます。
朝食メニュー
- ドリンク
- 菓子パン
ランチメニュー
- ドリンク
- ミックスサンドイッチ
- 焼き菓子(マフィン/クッキー/ドーナツ)
お子さま用メニュー
- ドリンク
- お好きなピザ
- ドーナツ/フルーツサラダ
ティータイム
- ホットドリンク
- スイーツ
クロワッサンを始め、フォカッチャ・ピザ・キッシュなどの軽食を提供しています。
スイーツもありますので休憩にご利用ください。
オランジュリー美術館でモネの傑作を堪能しよう
オランジュリー美術館はルーブル美術館やオルセー美術館の近くに位置しており、いずれも徒歩で行ける距離です。
パリ観光の見どころは数多くありますが、この3つは見逃せないスポットでしょう。
ルーブル美術館ほど混雑していないとはいえ、事前にチケットを購入しておくと待たずに入場できます。
常設展はもちろん、季節ごとの企画展もおもしろいですよ。
時間がなければ《睡蓮》だけでも鑑賞することをおすすめします。
オランジュリー美術館があるチュイルリー庭園は、それ自体が美術品のような美しい場所です。
時間に余裕があれば散策を楽しんでみてください。