原美術館ARCに込められた想いや設立の経緯について、この記事で紹介いたします。
現代美術と聞くと「何だかよくわからない」と思う人が多いのではないでしょうか?
しかし、原美術館ARCに行ってみると、印象がガラリと変わるかもしれません。
同館は実業家の原俊夫が1979年に設立した現代アート専門の美術館です。
当時の日本では現代美術があまり浸透しておらず、珍しいミュージアムでした。
草間彌生や奈良美智などとの関わりが深く、無名だった作家の作品を買い上げてはコレクションに加えてきた経緯があります。
原美術館ARCの歴史・成り立ち
原美術館ARCは2021年にリニューアルされました。
まずはミュージアムが設立されたきっかけと設立者・原俊夫について説明しましょう。
自由な芸術を求めて
初代館長を務めた原俊夫は、1935年に東京で生まれました。
学習院大学の政治経済学部を卒業後、アメリカのプリンストン大学に留学します。
原美術館の母体となった「アルカンシエール美術財団」を設立したのは1977年のこと。
当時の現代美術はまだ日本で市民権を得ておらず、マイナーな分野でした。
なぜ原俊夫は現代アートに惹かれたのか。
その理由は海外留学中の経験にありました。
日本の伝統的な美術に触れてきた彼にとって、枠や型にとらわれない自由なアートは衝撃的だったのです。
祖父の私邸を利用するアイデアは、デンマークの美術館から着想を得ました。
40歳で現代アートの美術館を作ろうと決意した原俊夫を待ち受けていたのは、周囲から寄せられる否定的な意見でした。
「騙されているのでは」
「ガラクタを集めてどうするのか」
しかし彼はそんな空気をものともしなかったのです。
現代美術の草分け的存在に
草間彌生や奈良美智といえば、今でこそ有名なアーティストとして知られています。
ところが時代を遡ると知名度は決して高くありませんでした。
原俊夫はそんな作家たちの作品を積極的に買い取り、コレクションを育てていきます。
草間彌生はこんな主旨の言葉を残しています。
「日本ではなかなか作品が評価されなかった。国内で最も早い時期に作品を買ってくれたのはありがたい」
そして奈良美智は学生時代に旧原美術館をしばしば訪れました。
同館に展示されていた人気作品「My Drawing Room」は原美術館ARCに移設されています。
東京にあった旧原美術館は、老朽化により2021年1月に閉館となりました。
同年4月に群馬県の伊香保にあったハラミュージアムアークと合併し、現在に至ります。
原美術館ARCの特徴
ミュージアムの特徴は建物とコレクションにあります。
それぞれ詳しくみてみましょう。
温泉地・伊香保に佇む建築
原美術館ARCの設計を手がけたのは建築家の磯崎新です。
旧原美術館は設立者の祖父が建てた洋館を改装したもので、外観の白さが際立つモダンな佇まいでした。
新たな原美術館は、自然光を取り入れている点に特徴があります。
ピラミッド型の屋根があるギャラリーAを中心に据え、ギャラリーBとCが翼のごとく両脇から付き出すデザインになっているのです。
シンプルな建築だからこそ作品が際立つといえるでしょう。
個性豊かな作品たち
原美術館ARCを支えるのは2つのコレクション。
原美術コレクション
ミュージアム設立時から所有している作品群です。
1950年代から今に至るまで、世界中の現代アートを揃えているとのこと。
絵画・彫刻・映像・インスタレーションなど、その総数はおよそ1000点にも上ります。
来館者を出迎えるのはジャン=ミシェル・オトニエルの「Kokoro」。
美術館の顔ともいえる大きなハートのアーチです。
別の場所にはアンディ・ウォーホールが生み出した「キャンベルのトマト缶」もあります。
SNSにも多数の投稿があり、写真スポットになっているようですね。
原六郎コレクション
原六郎は設立者の祖父で、明治時代に実業家として活躍しました。
東洋古美術の愛好家だった彼が蒐集した作品は、特別展示室「觀海庵」にて常設展示されています。
国宝に指定されている中国の陶磁《青磁下蕪花瓶》や円山応挙の《淀川両岸図巻》など、古美術ファン必見のラインナップ。
書院風の展示スペースである觀海庵のモデルとなったのは、滋賀県の三井寺(園城寺)にあった旧日光院客殿です。
併設ミュージアムショップ・カフェ
いよいよショップとカフェの情報を紹介します。
お土産を買ってゆっくりお茶を楽しむのもまた一興でしょう。
ショップ
ここでしか手に入らないグッズが目白押し。
ショップの情報はこちらからご覧いただけます。
オンラインショップ
おすすめの商品
オリジナル 束芋 × HARA MUSEUM「『公衆便女』稚児扇子」 | 2006年に原美術館で展示された大型インスタレーション作品「公衆便所」に登場するお稚児をモチーフにした扇子。黒一色に銀字の刻印がおしゃれです。 |
円山応挙「淀川両岸図巻」一筆箋 | 応挙が描いた大画巻を一筆箋にしています。ページの絵柄はすべて違うもの。使うたびに楽しめますよ。 |
雪村「列子御風図」てぬぐい | 古美術コレクションで最も人気の作品を手ぬぐいにしました。職人がすべて手作りしているこだわりの品です。 |
カフェ「ダール」
ご利用の際はチケットが必要です。カフェのみの入館は不可。
春になると満開の桜を眺めながらお食事を楽しめますよ。
【おすすめのメニュー】
ランチメニュー(11時~15時まで) | 季節ごとに旬の食材を使ったメニューを用意しています。 スモークサーモンとアボカドのサンドイッチ(スープ・サラダ付) 本日のパスタ(サラダ付) ビーフシチュー(パン、サラダ付)など |
オリジナル「イメージケーキ」 | 展覧会の内容に沿ったスイーツを提供しています。 数量限定ですのでお早めにどうぞ。 |
パーティプラン | 状況が落ち着き次第、気の置けない仲間とパーティを企画してみては? 立食スタイルと着席スタイルの2通りから選べます。 |
まとめ
原美術館ARCには冬季休業期間がありますので、ご注意ください。
3月半ばから1月初旬にかけて営業しています。
現代アートの良さは堅苦しさを感じない点にあるといえるでしょう。
伝統的な西洋絵画や神話画などと異なり、いかようにも作品を解釈できる楽しさがあります。
自由に楽しめるアート、それが現代美術。
こんな芸術もあるのだと思えればそれでいいのです。
ご興味があれば実際に足を運んでみてくださいね。
※休業日や営業時間、その他の掲載情報については変更の可能性があります。日々状況が変化しておりますので、最新の情報については施設・店舗へお問い合わせください。
アクセス
美術館名 | 原美術館ARC |
住所 | 群馬県渋川市金井 2855-1 |
電話番号 | 0279-24-6585 |
ホームページ | https://www.haramuseum.or.jp/ |