初期フランドル派とはどんな時代なのか、また有名な画家や作品についても解説していきたいと思います。
芸術はとても奥深く時代による違いもあるので、知らないこともたくさんあるのではないでしょうか。
なかでもネーデルランド、現在のベルギーやオランダ周辺に広まった美術スタイルといえば「初期フランドル派」だと思います。
油彩画の技術を確立させたのも、初期フランドル派がいたからだと言われているのです。
初期フランドル派とは
初期フランドル派とは、その名の通りフランドル地方を中心に栄えた芸術のスタイルです。
フランドル地方は別名ネーデルランドとも呼ばれています。
そもそもネーデルランドとは、「低地の国々」といった意味を持っており、オランダやベルギー、ルクセンブルク周辺の地域としています。
15世紀〜16世紀の時代は17つの州で構成されていました。
経済が栄えていた地域としても知られており、文化が発展した場所でもあります。
毛織物の産地としてもとても有名な場所になり、絵画や音楽などの分野でも発展しました。
1384年には、フランドルの女性伯爵である「マグリット」と「ブルゴーニュ公」が結婚したことで、「ブルゴーニュ公国」と名前を変えています。
初期フランドル派は、このブルゴーニュ領のネーデルランドで活動した芸術家と作品の両方を示している言葉になります。
初期フランドル派は、都市部で大きな成功を収めた人が多い特徴もあり、西洋美術の点から見ても高く評価されています。
もともと序盤の初期フランドル派はゴシック様式などの影響も強く受けています。
初期フランドル派は1420年からヘライトダフィトが亡くなるまでの1523年としています。
研究科のなかには、1566年や1568年とする説もありますし、ルネサンスの全盛期ともほぼ合致しています。
初期フランドル派には有名な画家がたくさんいますが、中世美術はもちろん、ルネサンスのゴシックなどの両方の特徴を捉えているとも言われています。
ネーデルランドはヨーロッパの経済における中心地でもあったことで、高級なものが売れる場所でした。
ただし16世紀半ばになってオランダを中心にしたビルダーシュトゥルムが起こります。
イコノクラスムによる破壊運動の影響もあり、ほとんどの作品が破壊されてしまいます。
現在で確認できるのは数千点程度になってしまいます。
その後初期フランドル派の人気も低迷し時代がわかっていきました。
初期フランドル派の特徴とは
初期フランドル派の作品には、どんな特徴があるのでしょうか。
この時代ならではの特徴もありますし、それまでの美術の常識を大きく変えたといっても過言ではないのです。
初期フランドル派にはどんな特徴があるのか、紹介していきたいと思います。
作品との一体感を重視した
初期フランドル派の特徴として、何よりも一体感を求めたとも言われています。
それまでの美術では輪郭線や平凡な遠近法などで表現するのが一般的でした。
でも、初期フランドル派はこの手法を使わずに、絵画を全く知らない人が見たときに、作品との一体感をどの程度感じられるのかを大切にしています。
例えば、自分が絵画に画かれているような錯覚をもたせるのも、初期フランドル派で生まれた手法です。
初期フランドル派はそれぞれの画家が高い技術を持っていたからこそできる技法もたくさんあります。
肖像画においても風景画においても繊細な表現で描くことを実現したともいえるのです。
油彩が主流となったきっかけ
初期フランドル派は絵の具の固着剤においても大きく変化を与えたと言われています。
もともとは卵テンペラを使ったものが絵画の主流として使われていました。
華やかで明るい雰囲気になることもあり積極的に使われていましたが、乾燥があまりに早いので自然な雰囲気に仕上がりにくい問題もありました。
そのため油彩は透明感を維持しつつもなめらかな仕上がりになる特徴もあります。
筆の使い方によって細い線や太い線などのかきわけもできるなど、使いやすいことにも定評がありました。
乾燥に時間がかかることで、その時間をうまく利用することができたのです。
例えば完全に乾ききってから色を重ねることはできませんが、乾く前であれば追加することもできます。
一度塗った絵の具のうえから、乾燥した上の部分をそぎ取ることで、下の部分を表面に出す手法も生まれました。
筆で描く以外の方法も取り入れていたことで、絵画作品の幅を広げたといっても過言ではないのです。
初期フランドル派で有名な画家とは
初期フランドル派がいかに優れているのかは十分に伝わったと思います。
実際に初期フランドル派にはどんな画家がいて活躍していたのか、有名な人を中心に紹介したいと思います。
初期フランドル派の魅力も伝わってくるのではないでしょうか。
ロヒール・ファン・デル・ウェイデン
1399年に生まれた初期フランドル派の画家です。
キリスト教を主題にした祭壇画と肖像画を多く描いており、最も成功した画家としても知られています。
有名な代表作には「読書するマグダラのマリア」や「歳暮を描く聖ルカ」などが有名です。
1427年にロベルトの弟子になり、ギルドの親方に認定されます。
公的画家として活躍していたものの、詳しい人生についてはわかっていません。
ロヒール・ファン・デル・ウェイデンの作品は、人間のうち川をえぐり出したかのようなとても繊細で細密な描写が多いことでも知られています。
人間が持っている心の弱さなどを絵で表現することに長けています。
人間の感情を揺さぶるような高い表現力を持っている画家でもあります。
細部にまで注目して作品を眺めるのをおすすめします。
あまりにリアルな表現だったことで批判されたこともあるようです。
ヤン・ファン・エイク
初期フランドル派の有名な画家の一人です。
神の手を持つと称されるほど卓越した技術を持っていました。
ネーデルランド絵画の創始者としても度々登場します。
どの程度修行していたのかなどの記録は残っていません。
それまでの油彩画法をより改良したものが多く、薄めるなどの工夫をして制作しました。
ルネサンス時代にも負けない、革新的な技術をもたらしたとも言われています。
お兄さんも画家だったことで、協力しあって作成した作品などもあります。
例えば「ヘントの祭壇画」は1425年頃に制作されたものです。
兄が制作していたものを亡くなったあとにエイクが引き継ぐことになります。
自身を描いた「赤いターバンの男の肖像」なども有名です。
いかに写実性が高いのかがわかるのではないでしょうか。
ロベルト・カンピン
有名な画家ではあるものの、描いた作品が一枚も残っていない画家です。
油彩を使用した画家でもあり、とても大成功をしました。
でも反乱に巻き込まれ、投獄されてしまいます。
絵に自身のサインを入れていなかったこともあり、本人が描いたと証拠になるものがまったくないのです。
代表作として知られているのが「ロベルト・感便の工房」です。
ただ複製画では?と疑う声もあります。
日常生活のなかに深い意味をもたせたものをあえて描いているなどの、オリジナル性も特徴です。
まとめ
今回は、初期フランドル派とはどんな時代なのか、また有名な画家や作品について紹介しました。
初期フランドル派は、素晴らしい技術を用いていたからこそ生まれた芸術ともいえます。
画家それぞれの作品を見ていると、どれも個性があり面白いと感じます。
ブルゴーニュやルネサンスの時代だからこそ生まれた技術といっても過言ではありません。