ボッティチェリは、かの「ヴィーナスの誕生」を描いたことでも有名な画家です。
名前だけ聞くと知らない人もいると思いますが、神話をモチーフにした絵画がとても有名です。
絵画はモチーフによって、見る人のイメージや好みが分かれることもあります。
同じ作品でも解釈が変わることもあります。
ボッティチェリは、なぜ神話をモチーフにした絵画を描いたのでしょうか?
この記事では、サンドロ・ボッティチェリについて解説していきたいと思います。
ボッティチェリとは?
ボッティチェリはあだ名?
ボッティチェリは、イタリアのフィレンツェ生まれの著名な画家の一人です。
主に活躍したのは1445年3月1日頃から1510年といわれています。
4人兄弟の末っ子として誕生し、決して裕福な生活ではなかったと言います。
ルネサンスの時代のなかでも序盤に最も活躍し、多くの功績を残したことでも知られています。
本名はアレッサンドロ・ディ・マリアーノ・フィリペーピです。
しかし、なぜサンドロ・ボッティチェリと呼ばれるようになったのでしょうか。
それは、ぽっちゃりとしていた体型から「小さな樽」を意味するあだ名として付けられたものだといわれています。
そのため本名ではなく、サンドロ・ボッティチェリのほうが多くの人に知られ、親しまれるようになっていきました。
神秘的な絵への興味|ヴィーナスの誕生を描くまで
ボッティチェリは、ルネサンス期の政治家としても活躍したメディチ家に保護され、フィリッポ・リッピのもとで学びます。
当時のフィリッポ・リッピは、プラート大聖堂の礼拝堂にてフレスコ画を制作していたと伝えられています。
市政への影響を強く感じたボッティチェリは、神秘的な絵を描くことに強く興味を惹かれます。
ボッティチェリ自身は自由な立場にいたこともあり、多方面より依頼を受けて描くこともありました。
ボッティチェリの作品で最も高く評価されている「ヴィーナスの誕生」もこの時期に描いたものです。
1490年以降は、古代異教的文化に対して否定的な意見が増えたこともあり、甘美な絵や神秘的な作品を描かなくなっていきます。
どちらかというと、キリストの受難もしくは救済などの重いテーマで描くことも増え、もともとの遠近法を用いた作品とは変わっていきました。
ボッティチェリが評価されるまでに時間がかかった理由
ボッティチェリは、とても優秀な画家としても知られています。
ただ、当時はほとんど評価を受けることがありませんでした。
当時のヨーロッパは、ボッティチェリのような神秘的な絵などを受け入れるような状況ではなく、多様性を求めてはいませんでした。
そのためボッティチェリが描いた作品は、400年以上も眠り続け19世紀に入りラファエル前派によって注目されたことで、一気に知名度を高めました。
彼らは象徴主義美術と呼ばれる作風を使うグループでもあり、ボッティチェリの絵を高く評価しました。
時代に翻弄されたといっても過言ではありません。
とはいえ、ボッティチェリの作品は現代にとって、とても高く評価され誰もが知っている作品がたくさんあります。
ボッティチェリの代表作|ヴィーナスの誕生
ボッティチェリの作品は、実際に美術館などで見られるものも多く存在しています。
どれも、独自性があり官能的なイメージのものも多く、見るものの心を鷲掴みにします。
ボッティチェリの代表作について説明いたします。
プリマヴェーラ|ヴィーナスの誕生と双璧
ボッティチェリが1482年頃に描いたとされる作品です。
現在は、「世界でも有名な絵画作品のひとつ」として高く評価されています。
プリマヴェーラに描かれている植物たちはトスカーナ地方に自生しているものであることが、近年の研究によってわかっています。
よく見ると500種類以上の植物、190種類にもなる花々が描かれています。
研究者によってもプリマヴェーラに対しての解釈が変わります。
作品に描かれている人物たちは、どれも神話に登場する人ばかりです。
一つの作品のなかには、6人の女性と2人の男性が描かれています。
また、ボッティチェリはこの作品に名前をつけておらず、あとになってジョルジョ・ヴァサーリが名前をつけたと考えられています。
どんな目的で描かれた作品なのかわかっていませんが、メディチ一家の依頼を受けて作成したものではないかといわれています。
現在は、フィレンツェにあるウフィツィ美術館に保管されています。
ヴィーナスの誕生
ボッティチェリの作品のなかでも、ヴィーナスの誕生は最も有名な絵画です。
製作されたのは1483年頃だと考えられています。
キャンバス地にテンペラの方法を用いて作られました。
女神のアフロディーテが成熟した大人の女性となった姿を描いています。
ヴィーナスが貝の中から出てきているのは、海の中より誕生した姿を描いているためです。
当時の作風としてはとても珍しく、ヴィーナスの首の長さなど、古典的な描き方をしていません。
長く女性らしく描かれている首のラインはとても美しく、美しさをより追求し描いたともいわれています。
若い女性の肖像|ボッティチェリの理想的な肖像
若い女性の肖像は、1480年から1485年に製作された作品として考えられています。
現在はシュテーデル美術館に所蔵されている作品になります。
横顔の美しい女性を描いたものになり、胸元は少し斜めのこちら向きに描かれています。
首元にはカメオのメダルをつけており、有名なアンティーク作品の複製だと考えられています。
見る人によっても持つイメージが変わり、女神として神話になった女性を描いたものとして考える説もあります。
理想の女性像の姿と考える研究者もいます。
ボッティチェリにしかわからない部分だとも思いますが、女性の横顔の美しさがなんとも印象的な作品だと思います。
マルスとヴィーナス|空虚で官能的な幻想
1485年頃に製作されたものだと考えられています。
美と愛の女神として伝えられるアフロディーテと、戦争の神様であるアレスを描いたものになり、数ある神話作品のなかでウフィツィ美術館には所蔵されていないものです。
製作された背景として新婚の夫婦向けの作品として、結婚祝いの目的で描かれたものだといわれています。
ゆったりと寝そべる姿が印象的で、ところどころに愛の象徴を描いています。
例えば、鉢の群れが描かれているのは、愛は痛みを伴うものというメッセージ性が込められているなどです。
快楽的な意味を持つ絵としても人気があります。
聖母子と天使
1465年以降に製作された、現在はフィレンツェにある養育院美術館に保管されている珍しい作品です。
初期の頃に描かれた作品としても知られており、師の影響を強く受けたのではないかと考えられています。
ぽっちゃりとした赤ちゃんがとても愛らしく、幼児期のイエスだといわれています。
聖母とイエスの組み合わせを描いたものです。
まとめ
ボッティチェリの作品はどれも奥深い意味を持ったものが多く、神話好きな人にとっても興味深い作品ばかりです。
どれも意味を持つものばかりですので、作品の背景や意味を考えながら鑑賞してみるのも面白いのではないでしょうか。
サンドロ・ボッティチェリの作品はまだまだたくさんあるので、世界観を楽しんでくださいね。