美大受験予備校とは、美術大学を受験する高校生や卒業生が入学試験に備えて実技や学科に取り組む予備校です。
美大入学前でありながらも美大と同じかそれ以上に個性的な授業があります。
この記事では、意外と知られていない美大受験予備校の中身を解説します。
美大受験予備校こそ、多くの人がイメージする美術大学
美大のイメージは「絵を教えてくれるところ」ではないでしょうか。
実は、美大に入学したあとは、絵のテクニックを習うことはめっきりなくなります。
絵のテクニックは美大受験予備校で習います。
美大受験予備校に入学する人は、現役の高校生と浪人生です。
現役の高校生は、夜間クラスに入ります。
夜間クラスは午後5時半くらいから8時くらいまで週3~5日通います。
浪人生は、朝9時ごろから午後5時までアトリエで授業を受けます。
夏期講習などの短期講習のときだけは、現役の高校生と浪人生が合同のクラスになり同等の立場で腕を競い合います。
美大受験予備校に入学したら、画材の買い方から習います。
使い方も一から丁寧に指導されるため、美大受験をするころには道具を使い慣れています。
美大に入ったら絵を習うのではなく、美大受験予備校で絵の基礎を習い、うまく描けるようになった人が美術大学に合格するのです。
授業は厳しい!トップから最下位まで一目瞭然の講評
美大受験予備校には講評があります。
講評とは、ひとつの課題が終わったら、全員の作品を前に並べて講師が一枚一枚口頭で指導することです。
問題は作品の並べ方です。
最初は、生徒たちが早いもの順に前に並べます。
その後、講師が相談しながらトップから最下位まで「うまい順」に並べ替えるのです。
すべて並べ替え終えたらトップから順に講評が始まります。
夏期講習などの短期講習では、浪人生の作品も現役高校生の作品も交えて並び替えです。
現役高校生の作品がトップになり、浪人生の作品が最下位になることもあります。
作品には名前や名札がついていないため、作品の出来栄えだけで判断されます。
講評は厳しいです。
しかし、生徒たちは講師の言葉を一言も聞き洩らさないように必死でメモをとります。
そして次回の制作にいかします。
講師は美大の教授以上に個性的
美大受験予備校の講師の経歴はさまざまです。
ムサビやタマビだけでなく、東京造形大や女子美などさまざまな大学や学科の卒業生が講師になっています。
現役の芸術家もいます。
美大受験予備校の講師は、自分の制作と講師の仕事を両立させている人が多く、教える仕事を専門にしている大学教授よりも個性が強いです。
予備校生は、個性が強い講師と芸術論や将来の夢を語りながら、美術とは何か、将来はどうなりたいのかを考えます。
美大に入学すると、生徒と教授の距離は少し遠くなります。
美大受験予備校の講師よりも年齢が高くなるため、緊張感があり気軽に質問することも難しいかもしれません。
一方の美大受験予備校の講師は年齢が20代から40代が多く、生徒との距離がとても近いのです。
バーベキューや季節のイベントも多く、予備校というよりもサークルのような温かさがあります。
同じ美大受験予備校出身の友はつきあいが長くなる
美大受験予備校に通っている人たちは、同じ志を持ち、同じ夢を追いかけている同士のため、ライバルでありながらも絆は強くなります。
受験が近づいてくると、不安な気持ちになりますが、お互いに励まし合います。
美大の数は少ないため、同じ美大受験予備校の中から同じ美大に通う人が必ずいます。
美大は、入学直後から課題がたくさん出され、徹夜で制作したり、プレゼンテーションに挑戦したりします。
右も左もわからない中で、美大受験を一緒に乗り越えた友はとても心強い味方です。
美大を卒業してもつきあいは続きます。
美大卒業生の進路はさまざまで就職する人もいれば留学する人もいます。
結婚して親になる人もいれば起業する人もいます。
卒業直後の進路はバラバラですが、それでも遠いところから思い続けて、数十年後に再びつながることがけっこうあるのです。
美術は一生モノです。
結婚や子育てで美術から離れても、子育てが落ち着いたら再び美術に戻る人もたくさんいます。
一般企業で事務の仕事をしながら、家で絵を描き続けている人もいます。
美大受験予備校で知り合った友は、美術を志した大切な時を共に過ごした人たちです。
社会人になってからの人間関係とは違い、卒業後もかけひきや損得勘定が一切ない純粋な友になります。
おわりに
美大受験予備校の定義は「美術大学に合格するために通うところ」かもしれません。
しかし、美大に合格しても美大受験予備校は母校のように温かさを感じる場所です。
美術に携わる基礎や考え方を初めて学ぶ場所が美大受験予備校です。