この記事では、大人も子供も楽しめる絵本と、その芸術的な絵本を描く画家を紹介します。
有名な絵画でなくても、心の中で大人になった自分を支えてくれている絵本を久しぶりに思い出して楽しんでみてはいかがでしょうか。
集めたくなる!エリック・カール
エリック・カールの代表作「はらぺこあおむし」は、日本でも有名な絵本です。
鮮やかな色彩と大胆な構図でありながらも計算しつくされた絵が何度見ても飽きません。
エリック・カールは、幼いときから絵の才能を発揮し、芸術アカデミーでグラフィックデザインを学びます。
大学卒業後は、アートディレクターやデザイナー、イラストレーターとして働きます。
35歳で作成したポスターがきっかけで絵本の世界に入ることになるのです。
そして40歳で「はらぺこあおむし」を出版し、翌41歳にボローニャ国際児童図書展グラフィック大賞を受賞します。
エリック・カールの作品は、はり絵です。
貼る紙も紙と絵の具を使って作ります。芸術家のはり絵というと「感覚で紙を作って感覚で切って絵を作る」というイメージです。
しかしエリック・カールは、習作をしてから作品に入ります。
鉛筆やペンで走り書きのような下絵ではなく「このまま絵本になりそう」と思うくらいしっかりとした習作です。
無駄をとことんなくした絵本は、デザイナー経験がいきた習作があってのものなのかもしれません。
エリック・カールの作品は、シンプルで簡単にみえますが、生き物は正確なデッサン力に基づいて作られたはり絵であり、構図と配置はデザイナーだからこそできる美しい配置です。
色の配置は鮮やかなのに目がチカチカしない統一感があります。
一枚でも満足できる絵がたくさん詰まった絵本は、まさに大人も楽しめる画集といえるでしょう。
東洋と西洋の魅力の融合!エロール・ル・カイン
エロール・ル・カインは1941年にシンガポールで生まれました。
その後インドで暮らし、15歳からはイギリスに移住します。
47歳という若さでこの世を去るまでに、40冊以上の作品を描きました。
日本で発表された絵本もたくさんあります。
東洋の雰囲気と西洋のアールヌーボーやウィリアム・モリスを連想する画風が融合した作品は、多くのファンを魅了しました。
エロール・ル・カインはイメージの魔術師とよばれています。
「おどる12人のおひめさま」は、現実の部屋と地下の世界観を絵画のように描いています。
ページをめくるたびに全く違う雰囲気の世界があらわれる楽しさがあるのです。
「ハイワサのちいさかったころ」は、インディアンの子どもが主人公です。
この作品は、絵を写実的に描くのではなく、色数を抑えたデザイン画のような絵にすることで幻想的な世界になっています。
エロール・ル・カインは、東洋と西洋の環境で育っただけではなく、東洋と西洋の血脈ももっています。
さらに、カトリックから日蓮正宗に帰依しています。思想も西洋と東洋の両方を経験しているのです。
国内外のファン多数!マルセル・マルリエ
幼いころにブックローンのファランドール絵本を持っていた人も多いのではないでしょうか。
今から40年ほど前に販売されていたシリーズでとても高価な絵本です。
マルチーヌという女の子が主人公のシリーズもあれば、動物たちが主人公のシリーズもあります。
どのシリーズにも共通しているのがマルセル・マルリエの挿絵です。
リアルに描かれた絵には動きがあります。
「マルチーヌはじめてのじてんしゃ」では、マルチーヌが自転車から転げ落ち、スカートがめくれ上がっている絵が描いてあります。
それをみている馬は目を見開いて驚いているのですが、擬人化された馬という印象は全くありません。
写実的に描かれつつもユーモアある絵は40年以上が経ち、大人になった読者をも楽しめる絵本となっています。
マルセル・マルリエは、ベルギーのイラストレーターです。
2011年に81歳でこの世を去ります。
60作以上の作品があるマルチーヌのシリーズが代表作ですが、表情豊かな動物の絵にも多くのファンがいます。
みんな知っている14匹!いわむらかずお
いわむらかずおは、1939年に東京で生まれました。
6人兄弟で育ち、戦時中は秋田県に疎開しています。
代表作「14ひきシリーズ」は、たくさんのネズミの兄弟が自然の中で生きる姿を描いています。
いわむらかずお自身の経験がいかされている作品といえるのではないでしょうか。
いわむらかずおは、東京芸術大学の工芸科で学んでいます。
油絵や日本画ではなく、工芸科というところが作品独特の色合いに影響しているのかもしれません。
淡い色合いの絵でもボケッとした印象にはならず優しい雰囲気になっています。
「14ひきシリーズ」は、おつきみやひっこし、朝ごはんのように生活の一部をテーマにしています。
お気に入りのワンシーンを絵画のように飾ってみてもいいのではないでしょうか。
まとめ
今回は、大人も子供も楽しめる絵本とそれを描く画家について解説いたしました。
絵本の絵には、一枚一枚に当時の思い出があります。
「絵本は子どもが読むもの」と思っている人もいますが、そういう人にも捨てるに捨てられない絵本があるものです。