美術の授業などで触れたことがあるものの、版画のやり方・種類について詳しく知らないかもしれません。
日本でも昔から版画の技術は伝えられてきたものになり浮世絵も版画の一種です。
時代とともに変化している版画の奥深さについて、わかりやすく解説していきたいと思います。
版画も絵画作品の一つ
版画は芸術の表現方法として広がったものではなく、宗教の布教のために印刷する目的で生まれたという意見もあります。
中国などで木版画が使用されていたなどの記述も残されています。
ヨーロッパで版画が生まれたのは1400年のルネサンス時代です。
当時、ヨーロッパの伝統的な美術の発展に行き詰まりを感じた作家が、版画に着目したことだと言われています。
ヨーロッパでも中国と同じように、キリスト文化を広めるために、文字を読めない人に対してわかりやすいように使われていたそうです。
当時、日本の浮世絵の技術の影響を受けたとも言われています。
最初からうまくいくものではなかったものの、何度も試行錯誤して、版画の表現方法を磨いていきました。
15世紀に入り、グーテンベルクによって活版印刷が発明されると、印刷の文化がより発展します。
これがきっかけとなり、芸術的な表現方法として取り組むようになりました。
実際に美術品として注目されるようになったのは、19世紀に入ってからになります。
現在ではアートのジャンルとしても確立するまでに成長したのです。
日本で版画が文化として伝わったのは、7世紀の飛鳥時代です。
仏教の経典としての版画が利用されており、その後芸術へと変わっていきます。
18世紀に浮世絵の文化が花開き世界でも最高峰と言われるまでになりました。
版画の技術を世界的に広げたのは日本といっても過言ではありません。
版画というと油絵や水彩画とは違ったジャンルのように思っている人もいると思います。
実は昔からある技法の一つでもあり、れっきとした絵画作品に分類されます。
そもそも版画のやり方は、木や板にさまざまな技法でもって版を作ります。
その後、インクなどを使ってひとつの作品を作り上げていきます。
オリジナルの原版を使用して作る技法になるため、版画に対しての考え方は人それぞれ異なります。
版画にはどんな種類があるの?
版画には複数の種類が存在します。製作する工程や原画によっての違いもあります。
数ある版画のなかでも独自性が高いと言われているのが「オリジナル版画」になります。
作家自身が版画にするための原画を描きます。
その後製作の工程を行ったものになり、一つとして同じものは存在しません。
作家自身が下絵を描いて版を作ります。
刷りなどのすべてに携わることによって、一つの作品を作り出していきます。
複数作らせないように、完成したあとにエディションナンバーをつけて、限定であることを伝えています。
ナンバーを付けた版画を他の人が勝手に使ってはいけません。
またオリジナルよりも簡易的に使えるのが「エスタンプ版画」になります。
これは、画家が描いた作品をもとにして第三者によって作成します。
絵画はもともと版画用として描かれていないものが多く、監修などの関わりもありません。
エスタンプ版画は、もともとの原画をより忠実に再現したものになります。
承諾を得て作っているため、コピー作品ではありません。
複数版画がとも呼ばれています。
版画に描かれているサインとは?
ちなみに版画にはサインが描かれていますが、この文化は19世紀頃に生まれたものです。
直筆で描くことで自己の作品として認めて、完成したことを証明するものです。
版画のなかにはノーサインのものもあります。
ノーサイン=安価なものだと思うかもしれませんが、実際は高価なものも多く市場価値の高いものも見かけます。
サインの部分も版画が掘られているものもあります。
これはエスタンプに多く見られますが、安価なものから時代によって変わったものもあります。
サインのなかでもピカソなどは作品のなかで、スタンプのような形状のものも見たことがあるのではないでしょうか。
これは作者自身が記したものではなく、亡くなったあとに遺族などの手によって押したものになります。
本人ではないので、どうしても価値が下がってしまいますが、スタンプサインの一種として考えられています。
版画の作品のなかには、自筆ではないサインも見られます。
版画のやり方・技法にはどんなものがあるの?
一言に版画といってもさまざまなやり方、技法があります。版画を知るためにも、まずはそれぞれの違いや特徴について、しっかりと押さえておく必要があります。
リトグラフ|版画のやり方・技法
ヨーロッパで主流の版画の技法といえば、リトグラフは外せません。
石を使った版画になり、水と油の反発する力を利用したものになります。
平板形式の版画になりますが、近頃は入手しやすさを重視するために、亜鉛板やアルミ板などを用いたものをよく見かけます。
リトグラフは、油脂性の減量などを使ったクレヨンやペンなどを使い、版に直接絵を描いていきます。
インクが付着する部分とそうでない部分がありますが、そこを刷り上げていきます。
リトグラフの版画は、数ある技法のなかでも最も作家にかかる負担が少ないのも特徴です。
版材を彫る必要も、腐食させる必要もありません。
リトグラフはアレンジの幅の広さも特徴になり、版画といっても細かな部分までイメージ通りの作品や表現ができます。
絵画と同じ感覚で細部にまで作れるのが、リトグラフの面白いところです。
木版画|版画のやり方・技法
日本では木製の版画が主流です。
そのため、技法というとこの木版画を最初に思い浮かべる人も多いのではないでしょうか。
日本では水性の絵の具を使い、和紙に染み込ませるような手法が使われています。
これは浮世絵にも見られたものになり、江戸時代にはすでに誕生していました。
多色で制作できる版画は、当時その技術力の高さからも世界的に評価されていたと言われています。
日本では水性ですが、ヨーロッパでは油性のインクを使うなどの違いもあります。
木版画にも種類によって違いがありますが、現在でもよく使われている方法になります。
シルクスクリーン|版画のやり方・技法
木の枠に張ったナイロンのうえに画像を切り抜いたフィルムを張り付けます。
光科学的に処理した感光剤になるので、インクを通さない膜面を作っていきます。
枠のなかにインクを入れて、ヘラ状のウレタン板を使って刷り込む方法になります。
比較的新しい技法になり、時代とともに改良され続けています。
これからの時代に発展する可能性があると期待されている方法なのではないでしょうか。
大まかに説明しましたが、他にもたくさんの技法があります。版画で同じ版から作られたものでも、同一のものとしてみなさないものもあります。
色の入れ方によっても作品の印象が全く変わります。
版画を作る用紙一つでも印象が変わるのも、版画の面白さかもしれません。
まとめ
今回は、版画のやり方・種類と意外と知らない版画文化について説明しました。
版画は日本の飛鳥時代から存在していたものであり、もともとは芸術的な分野ではなく宗教的な要素があったことにも驚きです。
版画について知ると、より奥深い魅力が伝わってくるのではないでしょうか。
版画だからこその良さがあるはずです。