ピーテル・パウル・ルーベンスは、バロック美術に貢献し、最も偉大な画家として知られています。
画家としてとてもたくさんの作品を残していて、その中には誰もが一度は見た作品があるのではないでしょうか。
フランダースの犬というアニメの中で、最後に登場したのがピーテル・パウル・ルーベンスの作品です。
ピーテル・パウル・ルーベンスとはどんな人物だったのか、また、その作品についてもご紹介いたします。
ピーテル・パウル・ルーベンスとは?
ピーテル・パウル・ルーベンスは、1577年~1640年に活躍したアントウェルペン出身の画家です。
父親が宗教紛争から逃れる目的によって、ドイツに渡ってきたと伝えられてきます。
10歳になったときに、その父親を亡くし、母親の実家に戻ることになります。
貧しい生活だったため、13歳のときに伯爵の未亡人のもとに奉公に出されることに。
その後、18歳でファン・フェーンに弟子入りし確かな実績を積んでいきます。
20代・30代初旬まではイタリアで過ごし、たくさんの芸術に触れています。
このイタリアでの生活が、ピーテル・パウル・ルーベンスに大きな影響を与えたとも言われています。
ローマではミケランジェロ、ラファエロなどの作品に触れ、自らの作品に生かしました。
その後、イザベラ・ブラントと結婚し、幸せな生活を送ります。
30代は画家としてたくさんの作品を残すまでになりました。
40代になると、忙しい毎日を送るなかで、愛娘と妻を亡くし、絶望的な気持ちを経験します。
晩年は、外交官として積極的な外交に尽力し、平和交渉などに手腕を発揮したと言われています。
宮廷画家ならではのピーテル・パウル・ルーベンスの立場
ピーテル・パウル・ルーベンスは、宮廷画家として活躍していたことでも知られています。
画家としてはとても地位の高い存在になり「王様たちの画家でもあり、画家たちの王様」などの異名を持っています。
ネーデルランドのアルブレヒト大公夫妻の宮廷画家としても、活躍した人物です。
ピーテル・パウル・ルーベンスはとても優秀で、画家としての成功はもちろん、外交官としての仕事もこなしていました。
ピーテル・パウル・ルーベンスは、数カ国語を話せることや、教養の高さも認められていたことからも、任されている仕事がたくさんありました。
しかし、そのことにより画家の仕事を制限することになってしまい、迷いが生じていたともいいます。
ただ、外交官の仕事をしていたこともあり、画家として得られる情報や、王家にある貴重な絵画を眺める機会もあり、メリットとして捉えていたようです。
これだけ多忙な生活を送っていたピーテル・パウル・ルーベンスですが、実際には2,000点以上もの作品を世に送り出しています。
ピーテル・パウル・ルーベンスは他の画家にはない境遇や才能、技術や知識を持っていたからこそ「画家の王様」と呼ばれるまでの存在になったのではないでしょうか。
フランダースの犬に登場した作品は?
フランダースの犬のアニメは、誰もが子どもの頃、一度はみたことがあると思います。
フランダースの犬のなかで、最終回に登場した絵画が「聖母被昇天」です。
ピーテル・パウル・ルーベンスの作品のなかでも、最も有名な作品といえば「聖母被昇天」です。
この絵画は、聖母マリア様が亡くなったときに魂や肉体が天国に上がっていく姿を描いたものです。
大きめの作品になっており、とても迫力がありますね。
フランダースの犬の最終回でも出てきたように、まわりにいる天使たちが、マリア様の魂や肉体を天に連れて行く姿を描いています。
とても美しい絵になるのですが、よく見ると下のほうにお墓も描かれており、そこから出てきたのかな?とわかるような描写もあります。
ピーテル・パウル・ルーベンスの作品はとても細かく描かれていることもあり、巧みのあるタッチが特徴です。
また、はっきりとした色彩など色鮮やかなのも特徴になり、技術力の高さもあり目を惹きますね。
人間の肌の質感もとてもリアルなものですし、自然な艶感もあり、とても美しいものです。
単色ではなく複数の色を組み合わせることで、一つの作品を作り出しているのです。
大聖堂で倒れながらも、「聖母被昇天」を見上げるフランダースの犬の最終回はとても感動したものです。
ついもう一度、フランダースの犬のアニメをみたくなるような懐かしさも込み上げてきますね。
ピーテル・パウル・ルーベンスの作品にはどんなものがある?
2,000点にもなる、ピーテル・パウル・ルーベンスの作品は素晴らしいものがたくさんあります。
ピーテル・パウル・ルーベンスの作品の特徴として、ドラマティックな作品も好んで描いていたといいます。
ドラマ性を追求した作品でもあったため、神話の人物が登場する絵画が多くなっています。
作品のジャンルも一つに絞ったものではなく、他ジャンルに及びます。
歴史画などはもちろん、神話や宗教的な絵も描いています。
また、風景画などの景色を描くこともありました。
ジャンルの多さに対して、賛否両論の意見はありましたが、いかに素晴らしい作品を残すかに力を入れていた人物でもあるのです。
楽園のアダムとイヴ
アダムとイヴは、1600年以前に制作されたものとして知られる有名な作品です。
イタリアへ留学する間に作られたもので、旧約聖書の神様によって創造されたアダムとイヴを描きました。
ピーテル・パウル・ルーベンスならではの、美しい色彩を使っています。
表情の一つひとつにこだわって作られており、躍動感のある様式が特徴です。
ピーテルの作品は、女性が少しぽっちゃりとしたふくよかな体型にて描かれています。
肌艶もとても美しく憂いを帯びたような表情が印象的ですね。
サムソンとデリラ
1609年に制作された作品。
ピーテル・パウル・ルーベンスの代表作としても名高い有名な絵画です。
イタリアからの帰国直後に依頼を受けて制作したもので、とても情熱的なテーマで描かれています。
怪力者として活躍したサムソンが、ペリシテ人の娼婦のデリラに恋をする姿を描いたものです。
サムソンはこんなに強靭な力をもっていながらも頭髪に弱みがあることを伝えてしまいます。
その結果、ペリシテ人から頭髪をそられることになります。
そんなシュールなシーンを描いた作品でもあるのです。
理由を知ると、なかなかおもしろいものですね。
最後の審判
1615年前後に描かれた最後の審判。
宗教画としても最も高く評価されている作品です。
死から復活したイエスは神となり、人間の救済や断罪を行うことをテーマにしています。
宗教画のなかでも最後の審判は最も人気が高いもので、現世や地獄を繊細なタッチを使って描き完成させています。
最後の審判を描いたあとに、翌年には小さな最後の審判も完成されており、それぞれに違った良さがあります。
至福と救済を重点的に描いた作品としても有名なものです。
まとめ
ピーテル・パウル・ルーベンスの作品を見ていると、いかに人物としても優れていたのかを感じ取れると思います。
繊細なタッチで描かれる作品は、どれもテーマ性をもって描いたものになります。
ジャンルに囚われることなく、好きな作品を描いたこと、色彩の美しさなども含め、ピーテル・パウル・ルーベンスを超える画家はいないのではないでしょうか。
有名な作品だけでなく、意外と知らない名作も多い人物なので、あなたもぜひピーテル・パウル・ルーベンスの世界観を体験してみてくだいね。
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