この記事では、ユニバーサルデザインについてと、意外と身近にある例を一緒に解説いたします。
ユニバーサルデザインのターゲットはすべての人間です。
デザインをするとき、ターゲットになる人物を原則としてイメージします。
例えば、若い女性がターゲットならばかわいいデザイン、来日している外国人がターゲットならば日本らしいデザインでしょう。
意外と範囲が広すぎて分かりにくい、ユニバーサルデザインとはどういうものか、詳しくみていきます。
ユニバーサルデザインとは?
ユニバーサルデザインとは、1985年にアメリカのノースカロライナ州立大学のロナルド・メイス氏が提唱した考え方です。
ロナルド・メイス氏は、自分が障害を持っていたため、誰もが使えるデザインを求めました。
ユニバーサルデザインは、工業製品や日用品だけではなく、建築や飲食物やマークにも及びます。
ひとつのものをデザインするとき、ほとんどはターゲットを決めて考えるものですが、それでは使いやすく感じる人と使いにくく感じる人が出てしまいます。
国や年齢、生涯の有無に関係なく「使いやすいデザイン」をユニバーサルデザインは目指しています。
ユニバーサルデザインの身近な例
まがるストロー
ストローの上部が蛇腹のようになっているまがるストローは、もともと頭を傾けなくてもストローが使えるように「障害がある人をターゲット」にしてデザインされたものでした。
しかし実際に流通すると、頭を傾けなくていいデザインは多くの人が使いやすいと感じるユニバーサルデザインの例となったのです。
このまがるストローは、「ユニバーサルデザインで制作をしよう」と作られたものではなく、使う人たちによってユニバーサルデザインになりました。
シャンプーの容器
シャンプーやコンディショナーの容器は形が似ているため、パッケージの文字が読めない人は間違えて使用する可能性がありました。
そこで考えられたのが側面の凹凸でした。
ところが実際に使われ始めると、シャンプー中に目を閉じたままでも凹凸によってシャンプーをみつけることができます。
つまり視力や文字の認識に関係なく、すべての人にとって使いやすいユニバーサルデザインであることがわかったのです。
ユニバーサルデザインの7原則
原則1:公平に利用できる
特定の国の人や年齢の人が使えないということはなく、すべての人が同じように利用できるデザインである必要があります。
男性は使いやすいけど女性は使いにくい、文化の違いによって意味が変わるようなデザインはユニバーサルデザインではありません。
原則2:利用上の柔軟性がある
ひとつの決まった使い方だけではなく、使う人によって自由な使い方ができるデザインがユニバーサルデザインとされています。
右利きでも左利きでも使えるデザインや、ゆっくりでも早くでも使えるデザインがユニバーサルデザインの例としてあげられます。
原則3:使い方がわかりやすい
一目みただけで使い方がわかり、特別なスキルがなくても使えるデザインがユニバーサルデザインです。
例えば、持ち手に見える装飾がたくさんついていれば、どこを持ったらいいのか迷います。
必要なものを必要な場所にデザインすることがユニバーサルデザインです。
原則4:情報がわかりやすい
ユニバーサルデザインは国や性別や年齢を問わず使いやすくなければなりません。
言葉がわからなくても一目みれば情報が伝わるデザインがユニバーサルデザインです。
とくにマークでは、厚生労働省のマタニティマークなどがユニバーサルデザイン例として広く知られています。
原則5:ちょっとしたミスがあっても危険な状況にならない
ユニバーサルデザインは、想定した使い方以外の使い方や間違った使い方をしたとしても、大きな事故につながらないように配慮してあります。
判断能力が未熟な子どもや思うように手足が動かせない障害がある人でもミスを恐れることなく使うことができるのです。
原則6:体への負担が少ない
ユニバーサルデザインは、無理な姿勢や強い力を必要とすることがないようにデザインされています。
原則7:どんな人でも使いやすい大きさと距離
ユニバーサルデザインは、さまざまな体格の人、車いすの人など、高さや幅に関係なく使いやすい大きさと距離、広さがあるようにデザインされています。
多目的トイレは代表的なユニバーサルデザインの例です。
バリアフリーとユニバーサルデザインの違い
ユニバーサルデザインを解説する上でバリアフリーを忘れてはいけません。
バリアフリーの原則は、もともと建築物の中で「段差がない」「段差をつくらない」ということでした。
車いすでもスムーズに移動ができるように段差や障壁がないことをバリアフリーでは意味します。
しかし最近は「心のバリアフリー」や「障害物すべてのバリアフリー」を含んだ意味も持ち、ユニバーサルデザインとバリアフリーの意味は近くなりつつあります。
おわりに
今回は、ユニバーサルデザインの身近な例と、ユニバーサルデザインの7原則についてご紹介しました。
ユニバーサルデザインは、すべての人間をターゲットとしています。
しかし、現実的にはすべての人間が使いやすく感じるデザインを生み出すことは不可能に近いでしょう。
ユニバーサルとは、物そのものデザインだけではなく、多くの人が長く好んで使えるものを作ろうと思うデザイナーの意気込みをも現しているのでないでしょうか。