絵画など美術作品には、著作権と肖像権と特許権などさまざまな権利があります。
そして権利があることで作品や作家は守られてきました。
ところが最近はインターネットやSNSの普及により、素人でも簡単に作品を投稿できるようになり、知らず知らずのうちに他人の権利を侵害したりされたりすることが増えています。
この記事では、自分の作品だけでなく相手の権利を守るためにも知っておきたい3つの権利についてわかりやすく解説します。
著作権とは?
著作権とは、絵画など制作したものを守るための権利です。
美術作品である絵画だけでなく文章や音楽や写真など、誰かが創作したものすべてに著作権は発生します。
例えば、Aさんがカエルのキャラクターを創作し、Bさんが真似をして全く同じカエルのキャラクターが描かれた商品を発表すれば著作権侵害になります。
Aさんが生み出したカエルのキャラクターをBさんが真似して描いてみただけならば著作権侵害にはなりません。
個人的に楽しむだけで描いたのならば問題にはなりませんが、無断でキャラクターを利用して利益を得ることは著作権侵害になります。
著作権は、届け出を出して発生するものではなく、誰かが何かを制作したら自動的に発生します。
最近はインターネットからさまざまな作品を入手することができます。
それらのほとんどに著作権があるのです。
勝手に画像をコピーして商業目的で利用することはできません。
著作権を利用する場合は、著作権の権利者に許可をもらうか、権利制限規定の例外の範囲で利用することになります。
権利制限規定の例外の範囲とは、個人的に利用するためのコピーや教育・福祉目的の利用などです。
絵画に限らず著作権には保護期間があります。
制作者の死後70年間は保護期間となり権利者に著作権があります。
しかし70年より先はパブリックドメインとよばれ、公共の財産になります。
権利者に許可を得ることなく利用できます。
ただし、完全にすべてが自由に使えるというわけでもありません。
制作した作家の人格を傷つけるような使い方は著作者人格権に反することになります。
肖像権とは?
肖像権とは、第三者に勝手に撮影されたり、撮影された画像などを公表されたりしないようにできる権利です。
著作権は、制作した絵画などの作品に対する権利でしたが、肖像権は自分自身や被写体になった人に対する権利といえるでしょう。
肖像権は、知らず知らずのうちに侵害してしまっていることがあります。
例えば、街中で風景を撮影したつもりが、写真の片隅に第三者が顔までハッキリと写り込んでしまったとします。
「別に気にしないだろう」と思い込んでコンクールに出品したりSNSに投稿してしまったりすれば、肖像権侵害で訴えられてしまう可能性があります。
コンクールに出品する映像作品や写真を撮影するときには被写体になる人の許可をもらうか、「ここで撮影しています」とアピールしながら撮影する必要があります。
もしくは、顔にピントを合わさずぼかして撮影するといいでしょう。
特許権とは?
特許とは、特許庁に発明を申請し審査が通り、一定期間の独占使用を認めることです。
その権利を特許権といいます。
特許は、絵画や楽曲に発生する著作権とは異なり、申請が必要です。
特許申請には条件があります。まず発明でなければなりません。
絵画や映像作品は発明ではなく創作のため特許とはあまり関係がないでしょう。
また、産業上の利用が可能である必要があります。
このほかにもいくつか条件があります。
これからの美術に求められる追求権とは
著作権に続き、絵画など美術作品でもっとも注目されている権利が追求権です。
追求権とは、作品が制作者の手を離れても売買されても、売買されるたびに売上の一定割合が制作者に入るという権利です。
例えば、画家がディーラーのAさんに1万円で作品を売り、Aさんが10万円でBギャラリーに転売し、さらにBギャラリーがオークションに出品し100万円で落札されたとします。
作品は100万円の値で取引されているにもかかわらず、絵を描いた画家の手元には1万円しか入りません。
自分の作品の価値があがることはうれしいことですが、自分の手元に一銭も入ってこない状況は歯がゆさを感じるでしょう。
現在の日本には美術作品に対する追求権がありません。
フランスは1920年に世界で初めて追求権を導入し、イギリスは2006年に導入しました。
世界では70か国以上が追求権を導入しています。
絵画や彫刻などの美術作品は、時代と共に値段が大きく変わります。
画家の手元を離れても作家にとって作品は子どものように大切なものです。
追求権は作家の思いや作品への愛情を汲むひとつの手段なのかもしれません。
おわりに
今回は、絵画などの作品における著作権と肖像権と特許権などの権利について解説してきました。
美術の世界は、個人の感情や思いを作品にぶつける世界であり、公的な法律や権利とは無縁な印象があります。
しかし、大切な絵画などは著作権という権利で守られています。
法律や権利を正しく理解し、誰も傷つけない作品や制作活動を続けることが大切なのではないでしょうか。