サントリー美術館は、アートでありながら実用性があるコレクションが多いのが特徴です。
美術館好きなら、「六本木アート・トライアングル」をご存じでしょうか?
森美術館、国立新美術館、そして今回のテーマであるサントリー美術館を結ぶエリアです。
設立者の佐治敬三は、ACジャパンの発起人としても知られる実業家。
彼は父譲りの「やってみなはれ」をモットーに、さまざまな事業を展開しました。
この記事では、サントリー美術館の歴史と魅力に迫ります。
企業から文化へ:サントリー美術館の誕生
サントリー美術館について解説する前に、サントリーホールディングスの歩みをご紹介しましょう。
お酒好きな方は詳しいかもしれませんね。
ぶどう酒から文化へのシフト:サントリーのアートへの情熱
サントリーの始まりは、1899年に誕生した鳥井商店という小さな会社でした。
創業者は鳥井信治郎。佐治敬三の父親です。
苗字が違うのは、幼少時に母方の親戚の養子になったから。
佐治姓を名乗りつつ、両親と暮らします。
長男の吉太郎は若くして病没し、次男の佐治敬三が後継者になりました。
1945年、佐治敬三がサントリーの前身「寿屋」に入社。
1961年に社長に就任すると、その2年後に現在の社名に変更しました。
ちなみに、サントリーという社名は「SUN」+「鳥井」に由来します。
今ではビールやウイスキーが有名ですが、スタートはぶどう酒の製造販売から。
1923年、ウイスキーの開発に着手します。日本人好みの味を生み出すため、鳥井信治郎らは試行錯誤しました。
初の国産ウイスキー「サントリー角瓶」が誕生したのは 1937年。
ウイスキー事業が軌道にのるきっかけとなりました。
社会貢献を芸術で表現:サントリー美術館のCSR活動
サントリー美術館のいしずえは、1921年に創業した社会福祉団体「邦寿会」です。
ちなみに、サントリーは同年「鳥井商店」から「寿屋」に社名を変更しています。
鳥井信治郎は情に厚い商売人で、事業の利益は社会に還元すべきだと考えていました。
そんな思いから、生活困窮者を支援する施設を作ったのです。
大正時代にして、いわゆるCSRの発想があったとは革新的ですね。
その思いは息子にも受け継がれました。
佐治敬三は 1961年にサントリー美術館を設立し、初代館長に就任します。
文化的事業で社会に恩返しをするのが目的でした。
丸の内から赤坂見附へ、そして 2007年に六本木のミッドタウンへ移転。
六本木でアートを楽しめるスポットとして人気を集めています。
サントリー美術館:東京の中心で味わうアートの響き
サントリー美術館には常設展示がありません。
学芸員が、年に 6~7回の展示を企画します。
いずれも個性が光る内容。
「生活の中の美」を追求するサントリー美術館の理念
同館は、「生活の中の美」を大切にしています。
2007年に六本木に移転してからは、「美を結ぶ。美を開く」というメッセージを掲げています。
古い物と新しい物。
東洋と西洋。
異なる要素をうまく結び付け、新たな発想から新たな発見を見出していくこと。
根底にはこんな思いがあります。
隈研吾設計:和とモダンの調和が生む空間美学
設計を手掛けたのは、著名な建築家である隈研吾氏。
外観は白磁の縦格子で、ムダな装飾をそぎ落としたデザインが目を引きます。
内装には、木と和紙が使われました。
床の材質にもご注目。
なんと、ウイスキーの樽材が再利用されているのです!
和の素材がかもし出す独特な柔らかさ・自然の温もりに満ちた空間です。
展示室に続く階段もまた素敵ですので、じっくりご覧ください。
展示室は動くカベで仕切られていて、さながら日本家屋のふすまや障子のよう。
6階には茶室「玄鳥庵」があります。
通常非公開ですが、展覧会期間中の指定日時にお茶とお菓子を味わうイベントが開催されます。
古美術の魅力を再発見:サントリー美術館のコレクション
意外にも、佐治敬三が古美術を蒐集し始めたのは1961年。
美術館を開館する少し前なのです。
絵画や陶磁、染織(着物)、ガラスに至るまで幅広いコレクションが形成されました。
特にエミール・ガレの作品は見逃せません!
国宝が 1点、重要文化財が 15点、重要美術品が 21点と、そうそうたるもの。
見逃せない名品:サントリー美術館が誇るコレクションハイライト
- エミール・ガレ ≪おだまき≫
イチオシの作品です。
ガラスの魔術師であるガレが、植物学者としての知識を活かして作り上げました。
開花直前のおだまきの花を繊細に表現しています。
- 作者不詳 ≪藍色ちろり≫
鮮やかな藍色が印象的な、冷酒用の器です。江戸時代に作られました。
取っ手にねじりが利いていて、シンプルながら美しいフォルム。
- 作者不詳 ≪菊蒔絵文台≫
重要文化財。室町時代に作られた蒔絵細工の机です。
古くから伝わる文台として極めて価値が高い 1品。
連歌の席にて懐紙や短冊を置くのに使われました。
- 伝 狩野山楽 ≪南蛮屏風≫
重要文化財に指定されています。
17世紀初頭に描かれた屏風。
南蛮とはポルトガルやスペインです。
南蛮貿易の様子を今に伝える歴史的資料ですね。
- 伝 土佐広周 ≪四季花鳥図屏風≫
室町時代の作品。重要文化財です。
季節の花々や鳥たちが色鮮やかに描写されています。
アートと生活を結ぶ:ミュージアムショップとカフェでのひと時
コンセプトは「SHOP×CAFÉ(ショップバイカフェ)」
2つが一体となり、同じフロアにあります。
ミュージアムショップ
営業時間は10時半から 18時まで。
火曜日、展示入替期間は11時から18時です。
会期中の金曜日・土曜日は20時まで。事前にご確認ください。
休業日は展示入替期間の火曜日、年末年始です。
オススメグッズ
- ハードノートカバー
- 手ぬぐい
- 図録
- アクセサリー
和のテイストのグッズが多数。
江戸切子や薩摩切子は思わず目を奪われる美しさ。
ノートは美術館ならではのおしゃれなデザインです。
お土産にも、プレゼントにもぴったり。
ミュージアムカフェ
11時から 18時まで。
会期中の金曜日・土曜日は 20時までです。
休業日はショップに準じます。
※カフェの内部は撮影禁止です。
金沢県の名店、加賀麩不室屋がプロデュースしています。
お麩をモダンにアレンジした軽食や甘味が売り。
ちなみにお食事は撮影可能です。
オススメメニュー
- くるま麩のフレンチトースト
- 加賀麩とりどり膳
- 麩あんみつ
- 麩ぜんざい
- 生麩まんじゅうとお茶のセット
- 不室屋パフェ
- プレミアムモルツ
- オールフリー(ノンアルコール)
スイーツに300円追加でドリンクが付きます。
加賀棒茶、コーヒー(ホット/アイス)、紅茶(ホット/アイス)から選べますよ。
ビール好きな方は、ぜひプレミアムモルツとオールフリーをどうぞ。
くるま麩のフレンチトーストは、ぜひ味わっていただきたいです。
美術館で紡がれる物語:サントリー美術館での美の体験
今回は、サントリー美術館について紹介いたしました。
足を運んだ際には、こだわりの照明技術もお忘れなく。
下からはLEDライト、上からは蛍光灯や光ファイバーで作品を演出します。
展示品ごとに照明が違うので、じっくり観察してみてください。
最後にお得な情報です。
メンバーズクラブに加入すると、本人と同伴者1名に限り、有効期間中は何度でも無料で入場可能。
そのうえ、図録割引やショップ&カフェ割引もあり。
混雑時には優先的に案内してもらえます。
会費は年間 6,000円。
リピーターはぜひ検討してみてはいかがでしょうか?
※休業日や営業時間、その他の掲載情報については変更の可能性があります。日々状況が変化しておりますので、最新の情報については施設・店舗へお問い合わせください。
アクセス
美術館名 | サントリー美術館 |
住所 | 東京都港区赤坂9丁目7−4 東京ミッドタウン ガレリア 3階 |
電話番号 | 03-3479-8600 |
ホームページ | https://www.suntory.co.jp/sma/ |