太田記念美術館は、国内最大級の浮世絵作品を所蔵する美術館です。
渋谷区にある原宿駅から徒歩5分程の場所にあります。
大通りからは少し外れた場所にあるので、美術館周辺は静かで落ち着いた雰囲気の街並みです。
ここは、比較的小さな私設美術館なのですが、浮世絵好きな方の間ではよく知られている美術施設です。
この記事では、太田記念美術館の見どころ、特徴、グッズなどを深掘りして紹介いたします。
太田記念美術館の歴史、成り立ち
太田記念美術館は、東邦生命相互保険会社の社長を務めた実業家・5代目太田清藏氏がコレクションしていた浮世絵を、たくさんの人に公開するために太田清藏氏の遺族の方々によって創設されました。
1977年、銀座にある東邦生命旧本社ビル7階で約2年間活動を続けた後、1980年に現在の東京都渋谷区原宿において、太田記念美術館をスタートさせました。
現在、太田記念美術館の浮世絵コレクションは、5代目・太田清藏氏が約半世紀かけて収集した約12000点を含め、おおよそ14000点。これは国内でも最大級です。
コレクションは「版画」が11000点、絵師が直接描いた「肉筆画」が1000点、江戸時代の和本が300点、下絵等の関連資料が600点ほど。ほとんどが版画ですね。
太田清藏氏は風景画や美人画といった特定のテーマを決めて収集せず、さまざまなジャンルの浮世絵を収集していました。
また、浮世絵の歴史を辿れるような、幅広い年代の作品を所蔵していることも特徴です。
浮世絵が登場した1680年頃の貴重な作品や、葛飾北斎・喜多川歌麿・歌川広重・歌川国芳・東洲斎写楽などの人気の絵師、無名の絵師の作品まで所蔵しているそう。
コレクションの中でよく知られているものとしては、葛飾北斎「冨嶽三十六景 神奈川沖浪裏」や、歌川広重「名所江戸百景 大はしあたけの夕立」、宮川長春「美人立姿図」、歌川国芳「通俗水滸伝豪傑百八人一個 混江龍李俊」などがあります。
また、浮世絵を知るうえで重要な「肉筆画」と「版画」、どちらも収集している個人コレクションは、世界的に見てもとても貴重。
太田記念美術館は、国内のみならず海外からの来館も多い美術館です。
太田記念美術館の特徴
ユニークな切り口の企画展
太田記念美術館に「常設展」と呼ばれるものはなく、毎月さまざまなテーマを設定し、そのテーマに関連した企画展が開催されています。
毎月訪れても、その度に違う浮世絵を鑑賞できるのは嬉しいですよね。
館内は、畳になっているスペースや石庭などもあり、大変趣のある雰囲気。
落ちついて浮世絵を鑑賞出来そうです。
展覧会は私たちに親しみやすいテーマや、ユニークな切り口のテーマのものが多く企画されています。
「江戸の恋」、「江戸の天気」という企画展では、江戸時代を舞台とした恋物語や、天候・気象に着目することにより、浮世絵の魅力を存分に感じることのできる展覧会でした。
また、勝負事や戦で負けた歌舞伎の登場人物や歴史上の人物にスポットをあてた「江戸の敗者たち」という展覧会や、赤という色に注目して浮世絵の魅力を解き明かす「赤―色が語る浮世絵の歴史」という展覧会を企画されていたこともあります。
思いがけないテーマで浮世絵を鑑賞できるとなると、つい足を運びたくなってしまいますよね。
さらに、有名な浮世絵師の生誕祭や没後の節目となる年には、その作家の生涯を振り返ることのできるような企画展も開かれています。
2018年に催された「江戸の悪 PARTⅡ」という展覧会では、國學院大學博物館、東洋文庫ミュージアム、ヴァニラ画廊など美術館以外の施設からの協力によって開催されました。
展覧会では、浮世絵や作品の制作された背景などを丁寧な解説つきで観ることができます。
浮世絵が制作された当時の様子や、制作の裏側などを知ることで、浮世絵をもっと面白く感じることができます。
美術館の公式サイトでも、浮世絵の画像付きで、とても分かりやすく作品の見どころが解説されており、見ているだけで展覧会に足を運びたくなりますよ。
太田記念美術館は、浮世絵に少し興味がある!という方から、浮世絵に詳しい方までさまざまな人々が楽しめる場所です。
浮世絵の魅力を伝えるために
太田記念美術館では展覧会を開催する以外にも、浮世絵の魅力を人々に伝えるためのさまざまな取り組みに力を入れています。
その1つが、「江戸文化講座」です。浮世絵文化が最も花開いたとされる江戸時代を知るために、さまざまな分野を通して江戸の文化を学ぶための講座です。
2つ目は、企画展開催中の日曜日に開催されている「映写会」。
こちらは、美術館地下1階にある視聴覚室で、「江戸文化の精華」「伝統木版画の技法-匠達の技」など浮世絵の歴史・技法についての映画を鑑賞できるプログラムとなっています。
また、小・中学生の子どもたちが浮世絵に親しみをもてるよう「夏休み子ども講座」も開催しています。
さらに太田記念美術館では、浮世絵の研究者を支援するための研究助成金の交付にも取り組み、浮世絵に関する学術的な調査・研究の支援も行っています。
「若手研究者講演会」と呼ばれる講演会では、最新の浮世絵に関する研究の成果を知ることができます。
美術館では他の美術館と同様、公式X(旧Twitter)も運営しています。
開催している展覧会の見どころを紹介するだけでなく、浮世絵に繋がる「なるほど!」と唸ってしまうような話、思わず笑顔になってしまうような楽しい話もつぶやいています。
アートファンであれば興味深い内容のものも多数あり、国内の美術館の中でも有数のフォロワー数を誇るアカウントとなっています。
浮世絵関連グッズが多数!
太田記念美術館では、ミュージアムショップと呼ばれるものは設けていないようですが、美術館受付にて、浮世絵に関する絵葉書や書籍、和小物、シールやマスキングテープ、原寸大ポスターなどのグッズを販売しています。
浮世絵をモチーフにしたユニークなグッズは、眺めているだけで楽しめます。
館内には、手ぬぐいを専門に扱う「かまわぬ」という店舗も入っており、伝統文様からモダンな雰囲気の手ぬぐいまで、各種豊富にグッズを取り揃えています。
また、展覧会図録や浮世絵に関する論集も発行しているようです。
葛飾北斎や歌川国芳などの人気絵師、好評だった展覧会の図録は完売することも多いそう。
おわりに
浮世絵を専門とした太田記念美術館。
浮世絵の所蔵作品に力を入れている美術館は国内に複数ありますが、その中でも、最大級の作品数を所蔵する美術館です。
専門というとちょっと難しそう、と思われる方もいるかもしれません。
しかし、浮世絵をもっと身近に楽しんで欲しいという思いからユニークな取り組みを行っている美術館です。
興味のある方はぜひ足を運んでみてはいかがでしょうか。
※休業日や営業時間、その他の掲載情報については変更の可能性があります。日々状況が変化しておりますので、最新の情報については施設・店舗へお問い合わせください。
アクセス
美術館名 | 太田記念美術館 |
住所 | 東京都渋谷区神宮前1丁目10−10 |
電話番号 | 03-5777-8600 |
ホームページ | http://www.ukiyoe-ota-muse.jp/ |