芸術についてある程度知っていくと、普段では聞き慣れない言葉やフレーズに遭遇することがあります。
芸術作品の一つ一つに画家が込めた想い(メッセージ)があり、それを知るためにも、どんな言葉の意味なのか興味を持ち、知ることはとても大切なことだと思います。
聞いたことがあってもキュビズムを説明できない人も多いのではないでしょうか。
知ることで、芸術の素晴らしさがより見えてきます。
今回は、芸術の分野では必ずといっていいほど出てくるキュビズムについて説明します。
キュビズムとは?
キュビズムは、20世紀の初頭に生み出された新しい美術の表現方法を言います。
生み出したのはかの有名な「パブロ・ピカソ」と「ジョルジュ・ブラック」です。
どちらもキュビズムを意識した作品を数多く残しています。
キュビズムは、1個の視点から絵を描くのではなく、多方面(複数)の視点から見た時のイメージを形にしたものです。
本来絵は一点の視点から見た姿しか描きませんが、複数の視点が1枚の絵のなかに集約されています。
20世紀初頭では考えられなかった描き方でもあり、まさに革新的な美術としても高く評価されました。
パブロ・ピカソの作品を見ても、どの視点から描かれているのかがわかりにくく、不思議な印象を受けます。
まるで合わせ鏡を見ているような気持ちになります。
キュビズムという言葉は、ジョルジュ・ブラックが風景画を描いたときに小さなキューブに見えたことからついたと言われています。
キュビズムというフレーズ自体がかわいらしい印象ですよね。
キュビズムは当時の美術の土台となり現在に伝えられています。
ただ、1911年に展覧会に出展したことで一躍有名になりますが、第一次世界大戦によって収束を迎えることになりました。
パブロ・ピカソとジョルジュ・ブラックがお互いの想いが合致したからこそ、キュビズムという新しい文化が生まれたのだと思います。
もし、ここで出会っていなかったら一つの視点から描く絵が当たり前の時代が続いていたのかもしれません。
キュビズムを描いた有名な画家
キュビズムは画家にとっても新しい分野に挑戦することでした。
ピカソは91歳になるまで精力的にキュビズムを描き続けた画家でもあります。
アートの巨人とも言われる優れた才能の持ち主になり、後世の画家にも影響を与える存在です。
印象派の巨匠としても知られたセザンヌから影響を受け、「アビニヨンの娘たち」を描きます。
その後、キュビズムの技法を生み出したとも言われています。
また、ピカソと一緒にキュビズムを生み出したブラックは、遠近法を用いたダイナミックな作品を描いていた画家でもあります。
複数の視点から同じ位置で対象物を見るなど、そのときの要素を反映させた作品を生み出しています。
ピカソとは違った一面ももち、木目をインサチュした壁紙を作り、ロープなど絵を描くのとはちょっと違った作品も挑戦しています。
ピカソとブラックは両者で違った視点も持ち合わせていたからこそ、キュビズムの発展に繋がったのだと思います。
キュビズムの奥深さはここに原点があるのかもしれませんね。
またもうひとりキュビズムで有名な画家が存在します。
その名も「ファン・グリス」といいます。
実際に19歳のときにパリに移住しピカソと出会っています。
その後1911年よりキュビズムに携わるようになり、1912年にはアンデパンダン展にて作品を出展するまでになりました。
カラフルな絵を描くのを好みその後コラージュを入れ込むなど、次々に新しい技法を生み出してきました。
他のキュビズムの画家とは全く違う技法で作品を仕上げています。
カラフルな色使いを得意としていたことからも、若い頃から注目されていました。
現在でもキュビズムを使って描く画家はたくさんいます。
一見、難解にも見える絵を描くことは簡単なことではありません。
築き上げた土台があること、技術的にも他の画家とは一線を画する才能を持っていたからこそキュビズムができたのだと思います。
キュビズムで有名な作品を見ていこう
キュビズムの技法を使って描かれた作品は数多く残されています。
どれも、独創的な世界だからこその魅力もありますし、どんな意味を持った絵なのか?
そもそも何を描いているのかなどを考えてみると、その面白さがわかるのではないでしょうか。
キュビズムの作品について、有名なものを厳選してご紹介していきたいと思います。
アヴィニョンの娘たち
1907年にパブロ・ピカソが描いた作品です。キュビズムの代表といっても過言ではないかもしれません。
裸の女性がたくさん描かれていますが、スペインのアビニヨンにあった売春宿で働いていた娼婦を描いたものだと言われています。
題材がとても難しいこと、見る人によっては不快に思ってしまうこともあり、一部の友人に公開すると不評を受けてしまいます。
そんななか、ブラックだけがピカソの絵の偉大さに気付き、キュビズムが始まったとも言われています。
どちらかというと平面的な描き方をしていますが、ピカソ自身が影響を受けた古代のベリア彫刻の特徴が影響しているそうです。
裸の女性を描いているのにどこかいやらしくもなく芸術として仕上げているのは、キュビズムをうまく取り入れたピカソだからこそ、できたことなのではないでしょうか。
ギターを持つ男
1910年にジョルジュ・ブラックによって描かれた作品です。
見た限りでは何が描かれているのはわかりにくいのではないでしょうか。
タイトルにギターを持つ…と紹介が入って初めてわかるほどの難解な絵です。
画面の中央部にある細長い線はギターを表現しているのだとか。
大きな手がギターを支えているのも見て取れますね。
ブラックの作品はヒントを与えることで、絵の理解がしやすいように手助けをするようなこだわりも持っています。
よく見ると顔が描かれているのもわかりますか?
光にはどんな効果があるのか、また技術方法なども含め研究していたブラックだからこそ、描けた作品です。
果物皿
ファン・グリスによって描かれた作品になり、製作年数はわかっていません。
ファン・グリスは埋もれた芸術家とも言われるように多彩な才能を持ち合わせていながら、知られていない作品もたくさんあります。
静止画でもその才能を発揮しており、キュビズムから離れ統合的なキュビズムとして生み出したのがこの作品です。
机のうえに置かれているのは本物のような皿、新聞、本、コップですがすべてが別の角度(視点)から見た時を描いた不思議な作品です。
すべてが見たままではなく、一部誇張されることによって全体のバランスを保っているともいえます。
キュビズムの統一感を追求したどり着いた作品でもあるのです。
ゲルニカ
もう一点、ピカソの有名な作品にゲルニカがあります。
1937年に描かれたもので、反戦絵画を描いたものとしても世界的に評価されている作品です。
当時スペインのバスク地方で無差別襲撃を受けたことを題材に描き、内戦状態であったことがわかります。
ゲルニカの空襲時、ピカソはパリに滞在していたそうです。
現状の悲惨さを伝える大切な絵です。
まとめ
キュビズムとは、今までの視点のあり方を変えた全く新しい芸術の技法だったことがわかります。
ピカソやブラック、ファンがいなかったらキュビズムは変わっていたのかもしれません。
キュビズムはいつまでも眺めていたくなるような味わい深さもある、素晴らしい技法です。