近代美術(モダンアート)では「自然をリアルに模倣する」ことから解放され、自由になっていきました。
20世紀初頭のパリには、近代美術の若い才能が大集合します。
若い才能は色彩も形も完全な開放へ向かったのでしょうか。
この記事では、近代美術の作品をより具体的な美術様式ごとに紹介いたします。
エコール・ド・パリとは?
貧しい中で自由を謳歌し意見を交えていくうちに、彼らの中から多くの新しい芸術運動が生まれていきました。
まるで国際交流のように芸術と青春は若い才能たちを集結させたのです。
そして、特定の主義を設けずに活動する画家たちは、近代美術においてエコール・ド・パリと呼ばれました。
『ジャンヌ・エビュテルヌ』モディリアーニ
イケメンとして有名なモデリアーニですが、『ジャンヌ・エビュテルヌ』といった作品名ばかりが多くあると感じる人も多いのでは?
そのタイトルは最多で作成されていますが、それは内縁の妻の画像です。
彼女を「瞳のない白目」で描くことにより日常から切り離して、「彼女」というモデルを神秘的に表現していますね。
特徴は、引き延ばされたような顔や身体。
他の作品では『南フランスの風景』などが有名です。
生前は全く売れなかったというのですから不思議です。
『私自身:肖像=風景』ルソー
ルソーの作品は、遠近法はなっていないし、「もしかしてヘタ?」と一度は皆が思ってしまうのではないかと思われるようなものばかりです・・・。
ですが、実に素朴で味わいがありますね。
ツッコミどころ満載な作品ではありますが、元祖“天然”ならではの新しさがあります!
狙っていない凄さがあるピカソは天才という評価をされていますし、他にも『蛇使いの女』『夢』など、独特の雰囲気の作品があります。
『誕生日』シャガール
ひとめぼれしたベラという女性と結婚できることになったシャガールは、自分の誕生日に、彼女が部屋を飾り付けて花を生けようとするのを見つけました。
そして、喜びのあまり宙に自分が浮く姿を描いています。
結婚後はナチスドイツに「ユダヤ人の退廃芸術」と見なされて、作品を燃やされたことも。それだけではなく、妻ベラを伝染病で亡くしてしまいます。
ですから、この作品は“色の魔術師” シャガールが描いた、紛れもなく自身の人生で最高の瞬間が描かれた画像になることでしょう!
その他に『私と村』『白襟のベラ』など。
フォーヴィズムとは?
1903年に「サロン・ドートンヌ」という秋季展が始まったことから、若い画家たちの発表の場ができました。
現実の色ではなく、画家の感性に沿って従順に描かれた配色や彼らの荒々しいタッチは、近代美術においてフォーヴィズム(野獣派)と呼ばれました。
『金魚』マティス
心地よい空間創りの絵と評されるマティスの作品は、現実から解放された色彩のもとで配色のバランスは富み、センスも絶妙と言われていますね。
強烈な色彩と激しいタッチは、なんとなく野獣をイメージさせるものも。
この『金魚』は、色やタッチは落ち着いてきた中でも単純化した絵画であり、重苦しい要素を排除しています。
他に『緑の筋のあるマティス夫人』『赤いハーモニー』など、色と形のみで自由に表現しています。
キュビスムとは?
近代美術におけるキュビズムとは、形を解放して自然を幾何学的な立体として分解し、複数の視点から合成、理論的に描いたものです。
『泣く女』ピカソ
ピカソは、「変な絵」の代表でもありますが、絵はうまいが女癖の悪い天才だったそう。
そして女性を踏み台に成長する“自己中”男でもあったとのことです。
そして、それらの画像はもちろん決してデタラメではなく、きちんとした構成からなる作品なのです!
他に『アビニヨンの娘たち』『ゲルニカ』など数多く残していますね。
ドイツ表現主義とは?
近代美術におけるドイツ表現主義とは、ドイツで起きた画家の内面を自由に表現しようとした運動です。
この表現主義は、キルヒナーたちがドレスデンで結成した「ブリュッケ」が率いました。
また、カンデンスキーやマルクがミュンヘンで結成した「青騎士」も同様であり、後にクレーも参加して抽象芸術の母体創りをしました。
未来派、絶対主義・構成主義とは?
近代美術におけるイタリアの未来派は、全く新しい美に対する基準を打ち出し、マレーヴィチらが絶対主義を提唱します。
また、タトリンやロトシェンコといった総合芸術家は建築、デザイン、絵画まであらゆる分野を巻き込み構成主義へと発展させますが、20年代後半にはスターリンの独裁下で弾圧されてしまいます。
抽象主義とは?
外界の具体的な対象ではなく、画家の精神を純粋に色と形だけで構成したものが抽象主義です。
『コンポジションⅤⅢ』カンデンスキー
具体的対象を描かない絵画なので、題名通り、色と形の構成物になっています。
見る人に楽しそうな印象や面白さ、リズムを与える、つまり目に見えない感覚や理論が根底にありますね。
カンデンスキーはピアノやチェロといった音楽才能があったことが活かされて、表現方法も才能も豊かなのだろうと考察されていますよ。
他作品は『円の中に円』『即興8の習作』など。
ダダイズムとは?
第一次世界大戦の戦火を逃れてスイスのチューリッヒに芸術家たちは集うようになります。
そこで詩人ツァラが宣言した「あらゆる意味を否定する芸術運動」が、ダダイズムです。
アメリカでニューヨークダダが展開して、フランスのデュシャンはなんと『モナ・リザ』の複製画に髭を付け足したりなども。
シュルレアリスムとは?
夢の中の光景が、とてもリアルに感じることはありませんか?
シュルレアリスムとは、非現実ではなく、それを超現実として追及する芸術です。
『記憶の固執』ダリ
この作品は、ぐにゃりと溶けた時計が印象的です。
時間をゆがめて記憶を蘇らせることで、眠る記憶を超現実的に再現していますよ。
モノにたかるハエやアリの存在がダリの作品には定番のように描かれていますが、『記憶の固執』では、やはり時計にアリが群がっています。
他に『新人類の誕生を見つめる地政学の子供』、『水面に象を映す白鳥』なども。
おわりに
近代美術は明治以降に入ってきたこともあり、宗教色は薄く、表現も濃すぎることはありません。
私たちは巨匠たちが生きてきた時代を鑑みながら絵に向き合ってみることで、彼らが苦難の状況下で情熱を注ぎ活躍した姿を知ることができます。
偉人たちに思いを馳せることで、それらの絵画はより鮮やかなものとなりますね。