海外からの玄関口であった横浜の歴史が感じられる地域と、みなとみらい21など近代的な景観が楽しめる場所からほど近くにある横浜美術館。
横浜といえば、現代アートの祭典である「横浜トリエンナーレ」の開催地であることもよく知られていますね。
では、横浜美術館とはいったいどのような施設なのでしょうか?
約3年にわたる改修工事が完了し、2024年3月15日(金)リニューアルオープンです。
横浜の街並みに映える、荘厳な佇まい
1989年 11月に開館した横浜美術館は、重厚感のあるシンメトリーな石造りの外観がとても印象的。
この建物は故・丹下健三氏によって設計されました。
左右180mある建物正面には、長い柱廊が広がっており、モダンで荘厳な佇まいをしています。
館内に入ると、御影石を用いてつくられたエントランス、そして高さ20mの開放的な吹き抜けのある空間が広がります。
そこから、左右約100mに広がる階段状の展示空間は、横浜美術館のシンボルともいえる場所。
非日常的で、とても贅沢な雰囲気です。
こちらでは、展示企画に関連したレセプションやイベントも開催されており、彫刻作品等も展示しています。
また、横浜美術館の展示室は7つあり、建物の右端の棟にはワークショップなどを行うためのアトリエ、左端の棟には11万冊以上の蔵書を所蔵している美術情報センターがあります。
さらに、レクチャーホールでは、展覧会に関連したイベントや、講演会や演劇、音楽会などが開催されます。
横浜美術館は、国内でも比較的大きな規模の美術館といえそうですね。
横浜開港以降のアートを楽しむ
横浜美術館では、横浜開港の年である1859年以降の近代・現代アートを観ることができます。
また、ピカソ・セザンヌ・マグリット・ダリ等の歴史に名を残すアーティストや、幕末・明治以降の横浜に縁のあるアーティストなど、約13000点に及ぶ国内外の作品を所蔵(コレクション)しています。
さらに、日本における写真発祥の場所の1つが横浜であることから、写真のコレクション収集にも力を入れているそう。
建物内には、温度・湿度管理の厳しい作品や、大規模な空間を必要とする展示などにも対応可能な設備が整っており、年間を通して実に多彩な展覧会が催されています。
その1つは、建物の右半分にある3部屋で行われる「企画展」。企画展では、アートだけでなく、ジャンルの壁を越えたさまざまな展覧会も多く開催されています。
過去には、ファッションとアートに焦点を当て、横浜らしい“外国との文化交流”をテーマとした「ファッションとアート 麗しき東西交流」が開催されました。
その際には、貴重な服飾品や工芸品が多数紹介されていたそう。
さらに、「村上隆のスーパーフラット・コレクション ―蕭白、魯山人からキーファーまで―」という企画展では、現代の日本を代表するアーティスト・村上隆氏のコレクションを大規模に公開するという、ユニークで斬新な取り組みが行われました。
横浜美術館は、横浜の地域性を活かしたテーマや、新しい試みの企画にも挑戦しているようですね。
そして、3年に1度横浜で開催される現代アートの国際展「横浜トリエンナーレ」に関連した展覧会も開催しており、2011年度からは横浜トリエンナーレを企画展事業の1つとして定めているそう。
建物の左半分、写真展示室を含む4部屋で開催されるのは「コレクション展」です。
こちらでは、その名の通り横浜美術館が誇る所蔵作品(コレクション)たちを、各テーマに沿って公開しています。
過去に開催された「横浜美術館開館30周年記念/横浜開港160周年記念の横浜美術館コレクション展」では、「横浜浮世絵」や「明治写真」などの貴重な資料、横浜の歴史に関連のある木版画や工芸品などの作品たちを公開していました。
他にも、「New Artist Picks」(NAP)という展覧会では、現在注目の若手作家を積極的に紹介しています。
こちらは、主にアートギャラリー1・アートギャラリー2で行われます。
多様な人々に向けた「ワークショップ」
横浜美術館は、美術鑑賞の場を提供するだけでなく、利用者向けのワークショップ等も開催しており、主に建物内にある「アトリエ」で活動しています。
その1つが「子どものアトリエ」。こちらは、クラフトルームやプレイルーム、光と音のスタジオの3部屋で開催されている未就学児〜12歳の子ども向けのワークショップです。
そして、12歳以上の方を対象に企画されているのは「市民のアトリエ」です。
設備が整った立体室・平面室・版画室などがあり、アーティストや専門のスタッフの指導のもとに行われています。
その他にも、特別支援学校向けのプログラム、生きづらさを抱える若者に向けてのプログラムなどさまざまな立場の人々に向けた取り組みが特徴です。
また、鑑賞の手助けになる「展覧会ワークシート」をHP内で公開しています。
これは誰でも利用可能なので、授業や家でも活用することができるそう。
「展覧会ワークシート」は、ワークショップに特に興味が無い方でも、なるほど!と思えるような内容なので、気軽に読んでみるのもおすすめです。
インターネット空間でアートに触れる
横浜美術館の公式HPでは、開催した展覧会の紹介や展示の様子、アーティストへのインタビューなどを映像で楽しめます。
公開しているアーティスト・トークや学芸員による作品紹介は見応えがあり、インターネットからいつでも無料で観ることができるのは、かなりお得感がありますね。
2010~2011年に行われていた「ラジオ美術館」は、「インタビューを通してアートに親しむ」という目的で企画されました。
これは、毎回さまざまなテーマを設け、アートや美術館に関わる人々にインタビューを行う音声プログラムなのですが、どの回もとても興味深い内容となっています。
例えば「痛み、やまいとアート」というテーマの回では、精神科医の斎藤環氏をゲストに迎え、アートや映画を精神科医の視点から読み解いています。
また、横浜美術館に関する音声案内「耳でたのしむ!横浜美術館(音声ガイド)音」も公式HPからアクセスできます。
こちらでは美術館の施設・ワークショップ等の紹介を行っているようです。
併設ミュージアムショップ、カフェ、レストラン
ミュージアムショップでは、横浜美術館のオリジナルグッズや、展覧会に関連したグッズなど約1000種類の品々を取り扱っています。
展覧会のチケットを購入していない方でも、ショップだけ訪れることも可能です。
また、自然光が気持ちの良い約60席あるカフェは、とてもゆったりとした雰囲気。
広場に面した場所にあるので、ケヤキ並木などの景色を眺めながらひとやすみできそうですね。
軽食やデザート、ドリンクなどを取り揃えており、展覧会とコラボしたメニューや、展覧会に合わせた展示も楽しめる場所となっています。
館内にある美術情報センターでは、美術に関する書籍や映像資料を収集しています。
11万冊以上の蔵書と、おおよそ580タイトルの映像資料は、誰でも無料で利用することができるそうです。
入り口が少し分かりにくい場所にあるのですが、一般にはあまり出回らない貴重なものもあるので、ぜひチェックしてみてはいかがでしょう。
さいごに
歴史と近代文化、そして最先端のアートが交わる場所にある横浜美術館。
訪れた際には、横浜の街の雰囲気をのんびりと感じることで、新たなアートの魅力が発見できるかもしれませんね。
アクセス
美術館名 | 横浜美術館 |
住所 | 神奈川県横浜市西区みなとみらい3丁目4-1 |
電話番号 | 045-221-0300 |
ホームページ | https://yokohama.art.museum |