海外から逆輸入された園芸植物が人気を集めています。
漫画、音楽、時計など、メイドインジャパンの品物が海外で評価され逆輸入されることがあります。
園芸の世界でも、日本産の植物が海外で人気に火がつき再び日本に入ってくる逆輸入があるのです。
欧米で品種改良されたおしゃれさと原産地が日本だからこその育てやすさがあります。
さっそく紹介していきたいと思います。
海外から逆輸入された園芸植物4選を紹介
1. セイヨウアジサイ
日本のアジサイもシーボルトによって海外へと紹介されました。
シーボルト『日本植物誌』の中には、長崎で採取されたアジサイが取り上げられています。
その名前は「Hydrangea otaksa」(ハイドランゼアオタクサ)」。
シーボルトが日本人の妻の呼び名「オタキサン」から名付けたと言われています。
アジサイは西洋に渡ってから品種改良が進み、逆輸入されたものを「セイヨウアジサイ」といいます。
といっても、日本人が普通に“アジサイ”と呼んでいる丸く花を咲かせるアジサイこそが「セイヨウアジサイ」なのです。
日本固有のアジサイは「ガクアジサイ」と呼ばれる花が周囲に付いているタイプのアジサイです。
今ではすっかりセイヨウアジサイが主流になっています。
定番として広まったセイヨウアジサイに代わり、最近は「アナベル」という品種も人気を集めています。
アナベルは北アメリカが原産なので、逆輸入ではなく輸入モノです。
ワイルドホワイトハイドランジアというアジサイの野生種を園芸用に品種改良したものです。
水色や赤紫色ではなくグリーンがかった白い花と柏の葉のような形の葉が、セイヨウアジサイに慣れた目には新鮮に映ります。
アジサイに限っては、逆輸入されたセイヨウアジサイがあまりにも浸透しているので、輸入モノのアナベルが逆輸入品のようなイメージを持たれ、人気を集めているのかもしれません。
アナベルの苗は、通販サイトでも買うことができます。
2. カサブランカ
フラワーショップで華やかに咲く大輪のユリを見て、日本産のものだ、と思う人は少ないかもしれません。
意外なことに、いかにもヨーロッパ風のユリも、そのルーツは日本なのです。
ヨーロッパにも野生のユリはありますが、日本のヤマユリやテッポウユリのような大きめの花は少なく、江戸時代の末期にその存在が知られると大変な人気となりました。
日本産のユリの球根はロンドンで高値で取引されたのだそうです。
日本のユリを海外に広めた立役者は、大の親日家の医師、シーボルトでした。シーボルトは『日本植物誌』という本を出版し、他にも多くの日本の植物を紹介しました。
驚くことにシーボルトは植物の通信販売もやっていたのだそう。
ユリが欧米で大人気となった背景にはキリスト教文化があります。
西洋でユリといえば白いユリが多く、その純潔なイメージから聖母マリアを象徴する花とされていたのです。
一方、日本では下を向いて咲くユリは、武家には好まれませんでした。ユリは日本古来の植物でありながら、アオイやフジ、キキョウのように家紋として使われることがほとんどないという扱われ方だったのです。
今では、武家の縁起かつぎも関係がなくなり、海外から逆輸入されたユリは、日本でも多く流通しています。
なかでもユリの女王と言われるカサブランカは、フラワーギフトとして広く利用されています。
自分で育てたい場合には、もともと日本の山野に自生したオレンジ色のオニユリがおすすめです。
日陰にも耐えて、育てやすいユリとして人気があり、通販で苗を買うこともできます。
3. ギボウシ
ギボウシもやはり海外に紹介したのはシーボルトと言われています。
日本に20種類ほど自生していたギボウシは、江戸時代末期に海外に渡り、園芸品種が数多く生まれました。
その数はなんと400種類以上にも及びます。ギボウシは緑の葉もあれば、白っぽい斑(ふ)と呼ばれる模様の入った斑入りの葉もあります。
花の色も、薄い紫が主流ですが、白やピンク色のものもあります。
大きさもさまざまです。葉、花、大きさ、それぞれが少しずつちがう品種が開発されたことで、ギボウシのバリエーションが豊かになっていったようです。
英名はホスタといい、海外では日本以上に流通しています。
イングリッシュガーデンでもよく使われ、イギリスやオランダには有名なホスタガーデンもあります。
海外で人気の鍵は、種類の豊富さと育てやすさでしょうか?
初心者でも育てやすい丈夫さがあり、何種類かとりあわせて植えるだけでも庭づくりができてしまう主役にもなる植物です。
日本でも、イングリッシュガーデンのブームや山野草の人気とともに、ギボウシはガーデニング愛好家の間では不動の人気を誇っています。
4. ピンポンマム
菊といえば日本では仏壇にお供えする花、といったイメージがあります。菊の花を人形にした“菊人形”もやや古くさい印象です。
最近お店で見かける「マム」にはそんな日本古来の菊とは一線を画したおしゃれさがあります。
マムには和風のイメージはありませんが、実は日本の菊の逆輸入モノです。
菊もやはり、江戸時代の後期に海外へと渡りました。
これまで紹介した3種と同じく、シーボルトの『日本植物誌』にも記載されています。
しかし、広めたのはシーボルトではなく、1860年に来日したイギリスのロバート・フォーチュンという人物だと言われています。
ロバート・フォーチュンはこの時代に多くいた「プラントハンター」の一人です。
プラントハンターとは、日本やアジアの植物や香辛料を自国に持ち帰り広めることを仕事としていた人のことで、その後は植物の採取は植物学者によって行われるように変わっていきました。
マムの代表格、スプレーマムはスプレーで噴射するように枝が分かれた先に花が咲いた品種です。
枝分かれのしかたのちがいで、日本の菊のイメージを一新して、可愛らしい品種として脚光を浴びています。
もう一つ有名なピンポンマムは、その名のとおり、ピンポン玉のように丸い菊です。
コロンとした花は他にはない存在感があり、ブーケやフラワーアレンジメントに欠かせない人気の花となっています。
マムはどちらかと言えば、切り花として流通することが多いのですが、もともと日本の山野に自生する菊が原種なので、鉢植えでも育てやすい花です。
おわりに
今回、紹介した花は、街の花屋さんでも扱われているものばかりです。
しかし、海外での品種改良により多種多様な園芸品種が生まれているため、流通することが少ない品種を店頭で探すことはむずかしいと思います。
もし、お目当ての品種がある場合には、専門サイトや生産者の方が運営しているネットショップが便利です。
おしゃれな逆輸入の花を取り入れると、ガーデニングのモチベーションも上がり、咲いた花は親しい人にプレゼントしても良いかもしれません。