「美大生は変わっている」「美大生は個性が強い」とはよく言われることです。
この記事では、美大生自身は普通と思っていても、社会人になった際によく言われる「美大生ならでは」について紹介いたします。
価値観が普通と違う
美大生は価値観が独特です。エルメスやヴィトンのバッグを持っていると「恥ずかしい」と感じる傾向があります。
ハイブランドの商品はすばらしいけれど「多くの人が持っている」というだけで魅力的には思えないのです。
美大生は「自分なりの価値観で発掘したもの」にこだわります。
筆者は、世界の物産展でみつけた一点モノの手作りバッグを愛用していました。
また、美大の構内にはしばしば芸能人が歩いています。
とくに芸術祭にはプライベートで芸能人がやってきました。
しかし、多くの美大生は芸能人に興味がありません。
筆者が美大生だったときも芸術祭の終盤にかなりの大物芸能人がやってきました。
しかしサインや握手を求める人はだれもいませんでした。
美大生は、サインや握手には価値を感じず、出演した「作品」にのみ価値を感じるのです。
美大生は、大衆の価値観に左右されず「自分の中に芯となる価値観」を持っています。
それこそが「個性が強い」といわれる所以なのかもしれません。
お金をかけるポイントが普通と違う
美大生は食費やブランド品にお金を使いません。
知っている美術大学の当時一番高いメニューは特定食500円でした。
特定食を食べる学生はほとんどなく「卒業までに一度は食べたい」と言っている学生がほとんどです。
また、ブランド品には興味がありません。
住む場所にもこだわりは少ないでしょう。
今では珍しい家賃2万5千円の風呂と洗濯機が共同のアパートも普通です。
鍵穴から家の中がみえるという今では防犯上問題があるアパートに住んでいる学生もいます。
かなり古い一戸建てを3人で借りて家賃の節約をしている人もいます。
衣食住は徹底的に節約します。
しかし、夏休みになると海外に飛び出し、美術館めぐりや資料の撮影をするのです。
さらにブランド品は買わないけれど、同等額の画材や材料は迷うことなく購入します。
襟もとが擦り切れたTシャツの上からプロ仕様の高級カメラをぶら下げている姿をあちこちでみられます。
美大生は、古い家に住んで古い服を着ていますが、まさに「ボロを着ていても心は錦」です。
社会人になってからは「見栄」「みられ方」を意識するようになり、見た目はよくなったのかもしれません。
しかし、今でもボロの服を着て古い家に住み「自分の基準」でお金を使っていた時代は心の中でキラキラと光っています。
美術以外のサークル活動が活発
美大にはさまざまなサークルがあります。
その多くは美術とは関係がないサークルです。
例えば武蔵野美術大学(以下ムサビ)ではワンダーフォーゲル部や五美術大学管弦楽団や演劇、ラテン音楽研究会などが盛んです。
ワンダーフォーゲル部は山登りをするサークルですが、授業が終わると重たい荷物を背負って構内の階段を一列に並んで上り下りします。
仲間の絆も強く、サークル内で結婚している人もいます。
五美術大学管弦楽団は、五つの美大が集まって構成している管弦楽団です。
プロを講師として招き、合宿も行う本格的なサークルです。
ラテン音楽研究会は、イベントに招かれるほどのレベルの高さです。
サークルに在籍している人はスタイル維持にも力を入れています。
演劇は「劇団むさび」というサークルです。
ムサビには空間演出デザイン学部があり、将来は舞台美術の仕事に就く人もいます。
また、ムサビの卒業生には俳優や脚本家になっている人も多くいます。
美大生といえば絵を描いているイメージですが、実はさまざまな方法で「表現すること」を学んでいます。
自分にあっている表現方法をみつける機会が美大にはあふれています。
おわりに
美大生は「普通」と言われるよりも「個性が強い」「変わっている」と言われる方がうれしいです。
なぜならば、個性が強いということは自分の世界観ができているということであり、制作には世界観がとても大切だからです。
美大は、それぞれの個性をぶつけ合いながら、お互いによりよい世界観を作り上げるための4年間です。
外からみれば不思議な人たちかもしれませんが、美大には自分に正直に生きている人たちがたくさんいるのかも知れません。