トーベ・ヤンソンといえば世界的にも有名なキャラクターでもある、ムーミンを描いた女性画家です。
画家でもあり小説家でもあり、児童文学作家としても知られるなど多彩な才能を持っている人物としても知られています。
トーベ・ヤンソンとはどんな人物だったのか、またムーミン以外の作品についても詳しく解説していきたいと思います。
トーベ・ヤンソンとは?
1914年8月9日、スウェーデン系のフィンランド人の父親と母親のもとに誕生しました。
フィンランドでは、当時フィンランド語と、スウェーデン語を母語としていましたが、スウェーデン語は、全体の1割程度の人しか使っておらず、公用語とはいえない環境でした。
この環境は、トーベ・ヤンソンの思考に大きな影響を与えたと考えられています。
父親は彫刻家の仕事をしており、母親は商業デザイナーとして活躍し絵がとても身近な場所にあったのがきっかけになったと言われています。
父親もとても有名な彫刻家になり、現在でも街の中で見かけることができます。
1933年から37年まではフィンランドにある芸術アカデミー美術学校に在籍し15歳で政治風刺を中心としたガルムに挿絵を描き始めます。
その後ストックホルムの工芸専門学校に生きヘルシンキ芸術大学、パリの美術学校などに通いました。
1945年には「小さなトロールと大きな洪水」を世の中に発表し、ムーミンシリーズをはじめて公開しました。
トーベ・ヤンソンは日本ではムーミンを描いた人物として有名ですが、一般向けの小説や文庫本などの発行も行っています。
出身地のフィンランドでが、画家としても評価が高く、公共施設の壁画なども含め、精力的に手掛けています。
トーベ・ヤンソンがムーミンを描いたのは、戦争のさなかになり自分を慰める目的だったそうです。
当時、爆風で窓が吹き飛んだアトリエで暮らしていました。
トーベ・ヤンソンがストックホルムの工芸専門学校に通っていた頃、寄宿先の叔父さんが「レンジ台のうしろには、ムーミンといういきものがいるぞ」と驚かせたことがとても印象強かったのです。
当時、トーベ・ヤンソンは戦争に強く反対しており、ガルムのなかに独裁者を痛烈に批判するような風刺画を描くようになります。
自分の名前も描き、著名の横にキャラクターが登場するようになりました。
1945年に戦争が終わると、ムーミンの本が出版されますがパっとした結果にはなりませんでした。
イブニングニュースをきっかけにムーミンの人気が決定的なものになると、あっという間にトーベ・ヤンソンの名は世界中に広がっていきました。
漫画から火がつき、オリジナルの児童文学シリーズになり、高い評価を受けるまでになります。
その反面ムーミンブームが加熱したことで、本来の絵画制作ができなくなってしまい、忙しい毎日を過ごすことになります。
トーベ・ヤンソンは、辺式のアトリエにて執筆活動を精力的に行い、最後の小節を発表した1998年の3年後に天寿を全うしました。
最後まで描き続けた人生だったと言われています。
画家としてのトーベ・ヤンソン
ムーミンの連載漫画が終わってからというもの、トーベ・ヤンソンはやっと時間が確保できるようになり画家としての仕事に尽力するようになります。
1960年には主に絵画を描き、グループ展などを個展にて発表しています。トーベ・ヤンソンの描く絵画は、フィンランド湾の群衆や、大海原などの自然の姿をそのまま描いたものでした。
1975年には「自画像」を描き素晴らしい表現力としても高く評価されるまでになりました。
柔らかい色彩で描きながらも、力強い筆使いで描く作品は、とても素晴らしいものです。
色使いがとてもきれいなのも、ムーミンを描いた作家ならではですよね。
日本では画家としての一面を知らない人も多く、もったいないなと思ってしまいます。
多彩な才能を持っていたこともあり、画家や作家など多方面で活躍した女性でした。
色使いの豊かさなども人間性を表しています。
画家としてもダカット金貨賞を受賞するなど、高い評価を得ていたことがわかります。
木の根元で眠る者たち
1930年に描かれた作品で、木の根元で寝ている動物たちの姿が描かれています。
とてもシンプルな構図の絵になりますが、さまざまな動物が一緒に寝ている姿はとても癒やされます。
木と土のシンプルな色使いに、あえて真っ白な絵の具で動物を描いたことで、真っ暗な暗闇のなかで寝ている動物の姿を描いています。
ムーミンのキャラクターにもつながっています。
現在はムーミン博物館に展示されている作品になります。
トーベ・ヤンソンの初期の頃の作品ですが、とても高い評価をされている作品です。
自画像、タバコを吸う娘
1940年に描いた作品で、唯一残っているトーベ・ヤンソンの自画像のうちの一つです。
20歳の頃を描いたものと、60歳の頃を描いた作品の2種類が存在します。
これだけ年の離れた時期を描いたのは、一体どんな理由だったのでしょうか。
トーベ・ヤンソンは意外にも、たばこや酒好きな女性としても知られており、自画像のなかでもたばこを吸っている姿を描いています。
彼女自身がたばこを吸っている自分を受け入れていたのだと思います。
画家でたばこを吸っている人はたくさんいますが、絵に残しているのは珍しいですね。
タバコを吸っているときの表情がとてもリアルで、ほっとできる瞬間だったのでしょうか。
青いヒヤシンス
1939年に描いたテラスから見た外の景色と、大きく立派な青のヒヤシンスを描いた風景画です。
これだけ大きなヒヤシンスはなかなか見かけませんし、よほど日当たりがいい場所なのでしょうか。
テラスの外には遠くに海が見え開放的な空間なのがわかります。
どこからの景色を描いたのかはわかりませんが、自然と融合したとても美しい風景だと思います。
青のヒヤシンスを描いているなど絶妙なバランスが美しい作品です。
一見同じ色に見えてしまいがちな、空や海、ヒヤシンスなどの青をそれぞれ色の種類を変えて描くなど、とてもこだわっている作品だと思います。
冬の夜の狼たち
1930年代に描いた作品になり、ちょっと不気味にも見える絵です。
全体的に暗いタッチになりますが、空の雲の動きを感じられる自然の雄大さも見えます。
たくさんの狼が、空に向かって吠えている緊迫した姿が描かれています。
トーベ・ヤンソンの作品のなかでも暗いタッチなのが珍しく、色のコントラストを丁寧に描いています。
まるで悪夢を見ているような作品でもあり、つい見入ってしまいますね。
トーベ・ヤンソンと聞かないとわからない作品かもしれません。
「不思議の国のアリス」や「ホビットの冒険」など
ちなみにトーベ・ヤンソンはムーミンのイメージが強いと思いますが、晩年はルイス・キャロルの「不思議の国のアリス」や「ホビットの冒険」などの挿絵も手掛けました。
フィンランドに行くと、トーベ・ヤンソンの描いたイラストをあちこちで見ることができ、どれも優しいタッチと、ちょっと不思議な印象の画風が特長です。
色彩も美しく、丁寧に描かれているので、作品の特徴をよくいかしているなと感じます。
幅広い分野で活躍していたことがわかりますね。
まとめ
トーベ・ヤンソンの作品はどれも素晴らしいものばかりです。
画家として活躍していたことを知らない人も多いのですが、実はとても才能に溢れた人物になりたくさんの作品を残しています。
亡くなるまで精力的に作品を描き続けたことでも知られており、ムーミンの世界だけにとどまることのない多彩な才能を持った人物でもあるのを、わかっていただけたのではないでしょうか。