ガーデニングをするにあたって、日当たりの問題は避けて通れません。
住宅が密集した日本では、庭があっても日照に恵まれないケースは少なくありません。
日本の住宅事情を考慮した時、十分な日照を確保するのが難しいのが現実です。
今回は、日本の住宅事情にマッチし、広まってきているシェードガーデンについて解説します。
シェードガーデンとは?
シェードガーデンとはイングリッシュガーデンの中の一つの様式のことです。
イングリッシュガーデンは自然の美しさを生かす庭づくりが特長で、コテージガーデン、ボーダーガーデンといったタイプがあります。
シェードガーデンもその一つです。
日当たりの良い庭に大きな木(シンボルツリー)を植えて半日蔭(※1)をつくり、そこに花を育てることをシェードガーデンと言います。
また、もとから日陰の庭を指すこともあるようです。
日本では日当たりの良くない場所に合わせて庭づくりをすることをシェードガーデンと言うことが多いようです。
(※1)半日陰…日中の半分ぐらいの時間日が当たるところ。または木漏れ日ぐらいの日差しが当たるところ。
シェードガーデンのメリット
何よりのメリットは、日当たりに恵まれない場合にも庭づくりをあきらめなくてよいことです。
シェードガーデンの考え方は浸透してきていて、日陰や半日陰でもガーデニングを楽しむ人が増えてるようです。
シェードガーデンのメリットは他にもあります。
日当たりがよくないために、木漏れ日のような柔らかい日差しとなり、リラックス効果が得られると言われているのです。
デメリットとされてきた日陰にそんな効果があるとは嬉しくなりますね。
さらに、日陰であることにより、猛暑を避けられるというメリットもあります。
畑いじりをしていて、熱中症を発症してしまったというニュースはめずらしくありません。
ガーデニング作業も熱中症の危険とは隣合わせです。
シェードガーデンは陽射しが弱めという点で、熱中症のリスクが減ると言えるのではないでしょうか。
もちろんシェードガーデンであっても熱中症には万全の対策が必要です。
シェードガーデンのグランドカバープランツとは?
シェードガーデンを作っていく上で、重要になるのが植物選びです。
植物は日光を必要とするものですが、日向よりも日陰の方がよく育つ種類があります。
シェードガーデンにはそういった植物を上手に選びましょう。
日陰でもよく育つ植物は上に伸びるよりも横に広がる傾向にあります。
そのため、シェードガーデンは“グランドカバープランツ”と呼ばれる植物で土を覆うようにしていることが多いのです。
グランドカバープランツが茂っていると生き生きとした雰囲気になり、暗さを感じさせない空間を作ることができます。
またグランドカバープランツには、抜くのが大変な雑草を生えにくくさせる効果もあります。
以下は、グランドカバープランツの例です。
リュウノヒゲ(キジカクシ科ジャノヒゲ属)
リュウノヒゲは名前のとおり、龍の口ひげのような細長い葉をもつ常緑の多年草です。
和風の庭づくりにも用いられています。
日本、中国、朝鮮半島が原産ということもあり日本の気候によく合い、手間をかけなくてもよく育ちます。
一年中、濃い緑を保つので、シェードガーデンに緑色を取り入れたいときに大活躍してくれます。
ミント類(シソ科ハッカ属)
ハーブとして有名なミント類は日当たりの良すぎる所は苦手で、半日陰の風通しの良い場所に適しています。
数あるミント類の品種の中でも、生命力の強いペニーロイヤルミントは特にグランドカバーに向いていると言われます。
旺盛な繁殖力があり踏み付けにも強く、手間がかかりません。
薄紫色の小さな花も可愛らしいです。ペニーロイヤルミントには、他の植物につくと生育不良を引き起こすカメムシの発生を防ぐ効果もあります。
他のミントの葉はハーブティーなどにされることが多いですが、ペニーロイヤルミントは食用になりませんので注意しましょう。
ドクダミ(ドクダミ科ドクダミ属)
日本の庭でも古くから見られるドクダミはすぐれた耐陰性があり、グランドカバープランツにも向いています。
他の植物と組み合わせると、昔ながらのドクダミとはちがった雰囲気になるでしょう。
ドクダミの白い花はシェードガーデンを明るくしてくれます。
ドクダミがもともとあれば、そのまま生かすのがおすすめです。
太い地下茎を伸ばしてどんどん広がっていきますので、他の植物の生育を妨げるようであれば根ごと刈り取りましょう。
ハツユキカズラ(キョウチクトウ科テイカカズラ属)
ハツユキカズラはところどころピンクがかった葉が可愛らしく、日向の花壇や寄せ植えでも人気です。
日陰でも育つ性質ですので、半日陰のシェードガーデンにもよいでしょう。
ただしあまりにも日当たりの悪いところではうまく生育せず、葉もピンク色になりにくいようです。
半日陰以上の明るさのある場合に向いています。
セダム(ベンケイソウ科マンネングサ属)
セダムは多くの品種がある多肉植物で、丈夫な性質から屋上緑化のためにも使われます。
カーペット状に広がるので、シェードガーデンのグランドカバープランツにも適しています。
ただし、セダムは本来は日向を好むので、シェードガーデンに向く品種を選ぶとよいでしょう。
セダムには紅葉するものもありますが、常緑の多年草タイプを選ぶと日陰にも強い性質があります。
シェードガーデンでも鮮やかに咲く花は?
グランドカバープランツとして、花より葉が主体の植物を紹介してきました。
やはり花を置きたい方もいることでしょう。
日陰でも鮮やかな花を咲かせてくれる植物はたくさんあります。
アナベル(アジサイ科アジサイ属)
アナベルは、アメリカアジサイ、セイヨウアジサイとも呼ばれています。
日本のアジサイより花の盛りが長く、7月いっぱいぐらいまで楽しむことができます。
リンドウ(リンドウ科リンドウ属)
リンドウは、日本の山野に自生し直射日光が苦手で半日陰に向いています。
冬季に霜が降りるほどに寒い
地域では、鉢植えで管理し屋内に入れましょう。
インパチェンス(ツリフネソウ科ツリフネソウ属)
インバチェンスは、バラに似た八重咲きの品種は半日陰の方が向いています。
シェードガーデンに置けば、明るく華を添えてくれでしょう。
屋外で冬越しができることもありますが、心配な場合には鉢植えで管理し屋内に入れましょう。
シャガ(アヤメ科アヤメ属)
シャガは、日陰の庭だけでなく木の生い茂った山道にも自生しています。
少し高さがあるので、単調になりがちなシェードガーデンに動きをつけてくれます。
シェードガーデンをベランダにも取り入れよう
庭がなくベランダで日当たりもよくないとしたら、少し前ならガーデニングはあきらめてしまう人が多かったかもしれません。
今ではシェードガーデンの考えが広がり、日陰、半日陰のベランダでも庭づくりを楽しんでいる方が大勢います。
日当たりに恵まれないベランダであっても、シェードガーデンの考え方を取り入れると臆することなくガーデニングが楽しめます。
グランドカバーの代わりに吊り下げるアイビーなどで緑の部分を増やしたり、シンボルツリーとして大きめの観葉植物の鉢を置いたり、自分なりのイメージをしっかりと持つことです。
ベランダだからガーデニングに不利ということは決してありません。
鉢植え管理だからこそ育てながら最も合う置き場所を探ることができます。
花が咲いたら目立つところに移動させることもできます。
好きなハーブを育てて、お料理に使うこともできます。
育て方が似ている植物は寄せ植えにしても、本格的な雰囲気が出ます。
ベランダに合わせたガーデニングを楽しんでみましょう。
まとめ
シェードガーデンというスタイルを知ることにより、日当たりに恵まれない場合や大きめの木があって日陰になってしまう場合にもその特性を生かしてガーデニングを楽しめます。
日当たりや広さに制約がある中でのガーデニングは、やりがいもあり楽しいものです。
一つ一つ大切に植物を選び、配置してみましょう。
シェードガーデンには癒し効果があると言われます。
シェードガーデン自体はもちろん、シェードガーデンを目指して庭づくりをしているだけでも楽しく、かなりのリラックス効果を得られるのではないかと思います。