この記事では、西洋絵画の時代背景も覗きながら、ルネサンスからロココまでを見ていきます。
ルネサンスは、フランス語で「再生」を意味します。
ルネサンスは古代ギリシアのリアルな肉体表現とキリスト教との融合で開花していきます。
ロココの語源は、バロック庭園の人口洞窟を飾った小石や貝殻を指す「ロカイユ」からとのこと。
絵画に関してはキリスト教美術が古代ギリシャの肉体表現を吸収した時代と考えられます。
リアルな肉体を表現!ルネサンス絵画の巨匠(15~16世紀)
初期のルネサンス|3大巨匠による絵画
ドナテッロ・『ダヴィデ像』
注目したい作品です!
「ゴリアテとの戦い」の勝利後にリラックスした姿勢で余韻に浸るダヴィデ像。足元には倒したゴリアテの死人の首!
洒落た帽子をかぶったこの美少年の陶酔したような顔はなんとも優美そのもの。
また、古代において全裸の男性像として最初の作品ともいわれる最高傑作!
つまりミケランジェロより先に「ダヴィデ像」はあったということですね。
マサッチオ・『楽園追放』
彼は、彫刻家ドナテッロから人体構造を、建築家ブルネッレスキから遠近法を学び、そこから人間性を追求していったとされています。輪郭を描かない画法を行ったことでも知られています。
禁断の実を食べてしまい楽園から追放されるアダムとイブ。
筋肉の動きや影、遠近法を巧みに用いていますね~。
また他に、これこそがルネサンスを象徴する有名絵画として
ボッティチェリ・『ヴィーナスの誕生』
ボッティチェリの絵画を前にすればわかる人も多い!
初期の巨匠たちの精神を受けリアルで科学的な肉体表現をしています。
リアルで生き生きしていますね。
最盛期のルネサンス|3大巨匠による絵画
そのリアルさは後世の多くの画家たちのお手本となっています。
ダ・ヴィンチ『モナ・リザ』
この作品の女性は誰なのか、また謎の微笑は見るたびに笑っているのかいないのか?など、『モナ・リザ』は謎が多いことからも有名です。
ですが、作品としては、むしろ『岩窟の聖母』や『最後の晩餐』のほうが代表作と呼ぶにふさわしいという意見もあります。
また、万能の天才だったがゆえに、逆に万事が企画倒れに終わりがちでもあったそう。
『モナ・リザ』は、空気遠近法で遠景ほど明るく、かつ青みを帯びて描き、輪郭線を一切描かず、すべてグラデーションと明暗で表現した「スフマート」を用いていますね。
ミケランジェロ『最後の審判』
ミケランジェロのこの作品は、ローマ法王の住居であるヴァチカン宮殿の礼拝堂正面に描かれました。
キリストを中心に向かって右は自国へ堕ちる人々、左は天国へ昇る人々、キリストの左横には聖母マリア、右には天国と地獄の鍵を渡す聖ペテロの姿が。
この作品は、時代を先取りしたルネサンスの巨人の超大作と言って間違いなさそうです。
彼は、とてもパワフルな人でローマ法王にもズケズケとものを言うだけでなく、かなり面倒くさい性格だったそう。
企画倒れになりがちなダ・ヴィンチ、形式主義の代名詞にされがちなラファエロたちと対象的に、仕事は確実にこなし重用されていたのだとか。
ラファエロ『最後の聖母』
ここまでカメラ目線の聖母は珍しく、描かれているのは、聖母マリアと幼きイエス、洗礼者聖ヨハネ。当時の異国趣味ブームが投影され、親近感ある優しい画像です。
彼は、ヴァチカン宮殿の「署名の間」に描いた『アテネの学堂』で、プラトンをダ・ヴィンチ、ヘラクレイトスはミケランジェロをモデルとして敬意を表したとされています。
不自然さが魅力、神秘的な表現はマニエリスム(16世紀)
なんとマニエリスムは「マンネリ」が語源なのだそう!
つまり16世紀前半のイタリアで、否定的な意味で用いられていたのですね。
ですが、その不自然さには独特の味があって肯定的評価をする人も少なくはありません。
まず、マニエリスムの代表者であるブロンズィーノから。
マニエリスムの代表者
ブロンズィーノ・『愛の寓意』
彼の名は、あまり知られていないようですね。
整った作品を残していますが、心優しい芸術家ともいわれていてコジモ1世からとても気に入られていたのだそう。
洗練を極めた故に誕生した「不自然な美」は、一時ダメな芸術とみなされましたが、それを逆に「味」ととらえて、ポジテイブ評価する人も多いと言われています。
バロック(17世紀)は、力強く派手、こってり濃い!?
ポルトガル語のゆがんだ真珠を意味する「バロッコ」が語源だとか。
つまり過剰なまでに装飾的、劇的であるようです。
カトリック教会は宗教革命で失った信者を取り戻したい、新たに台頭してきた絶対専制君主たちのそれぞれが、民衆に権威をアピールするために派手さを求めたのでしょうね。
バロックの2大巨匠
ベルニーニ・『東方三博士の礼拝』
彼の最大の仕事とされるのがこのサン・ピエトロ広場の設計。
彼の設計による壮大な楕円形の広場は、バロック建築の代表例でもあり4列のドリス式円柱、全体の景観も見事です。ローマ教会と広場を飾ったことで知られていますね!
ルーペンス・『 東方三博士の礼拝』
才能と質の偉業で知られるルーベンスは、ヨーロッパ中の宮廷や美術館を飾った画家としても知られ、この作品は初期ルーベンスにおける最高傑作のひとつ。
降誕したイエスと、その礼拝に訪れる欧州、亜細亜、阿弗利加の三博士を描いたもの。
豊かな色彩、ミケランジェロを思わせる劇的な肉体描写、画面構成、豊かな色彩は、圧倒的な表現力で認められています。
ロココ(18世紀)は、お洒落とエロスの融合!「恋愛美術」
「ベルばら」的なインテリアと恋の駆け引きが、ロココの神髄と言えるかもしれません。
より世俗的で個人的、かつ享楽的な作品が人気になり、お洒落なエロスを極めたようです。
ロココの2大巨匠
ヴァトー・『迷惑な求婚』
林間の空き地で優雅に5人の集う男女、まるで演劇の様だと思いませんか?
舞台を見ているかのように目の前で求婚が始まっています。
それを眺める3人の物憂げな様子などから「雅な宴」と言われる典型作品となりました。
ブーシェ・『ポンパドゥール夫人』
この肖像画は、威厳のある完成された美しさを称え、一人の意志をもった人格として表現されていますね。
芸術や少し気のきいた会話の中での教養ある女性の存在を思い出させます。
まとめ
今回は、西洋絵画の時代背景と共に、ルネサンスからロココまでの巨匠と作品を紹介しました。
マニエリスム、バロックと派手な演出をしてロココは世俗化します。
絵画も大げさな宗教画や歴史画に替わって、貴族たちのアウトドアを描く雅宴画や寝室での男女など享楽的作品が人気になっていったのがこの「古典」時期のようですね。