ボストンと聞いて思い浮かべるものといえば、おそらく野球場ではないでしょうか。
その球場の近くにあるのがボストン美術館です。
日本人にとってはなじみが薄いかもしれませんが、実は意外な人物が関わっているのです。
その人物とは、日本美術の歴史を語るうえでかかせない岡倉天心。
彼はボストン美術館の職員として勤務していました。
日本美術の振興を目指していた岡倉は、海外で祖国の芸術の価値を高める活動に邁進したのです。
姉妹館の「名古屋ボストン美術館」は2018年に閉館し、現在は「金山南ビル美術館棟」として営業しています。
この記事では、ボストン美術館について解説します。
ミュージアムが設立された経緯や見どころなどをまとめました。
これからアメリカへ旅行する予定があれば、参考にしてください。
ボストン美術館の歴史・成り立ち
ボストン美術館が誕生したのは19世紀後半。
その頃の日本は明治時代の黎明期でした。
ここではミュージアムの経歴を紹介します。
有志の市民によって設立された
ボストン美術館は、アメリカの独立100周年を祝う記念碑として設立されました。
1870年にボストン市民によって建築計画が立案され、6年の歳月をかけて建物が建造されています。
コプリースクエアの一角に開館したミュージアムは、のちに全米有数の観光スポットとなるのです。
1909年には初代の建物が閉鎖され、現在地であるハンティントンアベニューでリニューアルオープン。
その後エヴァンスウィングが増設され、徐々に規模を拡大していきました。
1920年代に突入すると、ジョン・シンガー・サージェントが美術館のために壁画を描きます。
彫刻と建築装飾が合体したこの作品は、1999年に復元作業が施されて大事に保管されています。
改修と増築はこの頃から行われており、1928年には美術館の東側に装飾芸術棟が開館。
ここにはヨーロッパとアメリカの膨大な美術品が収蔵されています。
アメリカ有数の美術館になるまで
時代は下り、1970年代に至ります。
現代になっても増改築が繰り返され、ジョージ・ロバート・ホワイト・ウィングやウェストウィングなどが竣工しました。
その他に図書館やレストランといった施設や、特別展用のギャラリースペースがお目見えしています。
2005年にビルディングプロジェクトが始まり、閉鎖されていたエリアが再オープンして賑わいは増すばかり。
現代アートの展示棟も作られ、古今東西のあらゆる作品を鑑賞できるようになりました。
ようやく工事が終わったのは2009年。最終的に5億400万ドルの資金が集まり、プロジェクトは無事に完了します。
こうしてボストン美術館は世界中から多くの人々が集まる観光スポットとなりました。
ボストン美術館の特徴
ボストン美術館は広いため、全体を見て回ると3時間くらいかかります。
じっくり展示を眺めたい場合は、1日かけると余裕をもって鑑賞できるでしょう。
実は日本と深い関係がある
ボストン美術館には「天心園」という枯山水の庭園があります。
日本美術に詳しい人ならピンとくるかもしれませんが、あの岡倉天心の名を冠しているのです。
外国人であるフェノロサは、日本美術を高く評価していました。
彼の通訳に任命された岡倉は、行動を共にするうちに日本美術を振興したいと考えるようになります。
フェノロサらの協力を得てアメリカへ渡航すると、岡倉はボストン美術館で東洋美術を統括する役職に就きました。
英語で著作『The Book of Tea(茶の本)』を発表するなど、精力的に活動しています。
貴重な浮世絵のコレクションを所有している
浮世絵に魅了された外国人は多く、ゴッホやロートレックなどが有名です。
ボストン美術館には葛飾北斎や東洲斎写楽などの作品が多数展示されており、コレクションの充実ぶりには目を見張るものがあります。
かつて江戸の人々を楽しませた木版画は、明治時代に海外へ流出しました。
1800年代の後半に西洋文化がもてはやされ、日本美術の価値は著しく低下します。
その影響により、浮世絵は安い価格で外国人に売られたのでした。
現代なら考えられない暴挙といえるでしょう。
ボストン美術館にある浮世絵の大半は、日本美術研究家のビゲローが収集したものです。
彼が美術館に寄贈し、収蔵品に加わりました。
印象派の作品が多い
日本美術で有名なボストン美術館ですが、西洋絵画も大きな見どころです。
とくに印象派のコレクションは素晴らしく、ルノワールの《ブージヴァルのダンス》は必見です。
ミュージアムのハイライトはモネの絵画。なかでも《ラ・ジャポネーズ》はモネの日本好きが伺える一枚ですね。
後期印象派も負けてはいません。ゴッホとゴーギャンの絵画は一見の価値ありです。
《郵便配達人ジョゼフ・ルーラン》や《我々はどこから来たのか、我々は何者か、我々はどこへ行くのか》はお見逃しなく。
ミュージアムショップ・カフェ
ボストン美術館は見どころがたくさんあり、適度に休憩を挟みつつ鑑賞するのがおすすめ。
合間にお土産を買ったり、カフェブレイクの時間を設けたりしましょう。
ショップ
ミュージアムショップは、ドラッカーファミリーパビリオンとハンティントンアベニューの2か所にあります。
ショップの詳細はこちらからご覧ください。オンラインショップでも購入可能。
リンデ ファミリー ウイング ブックストア&ショップ
主に書籍を販売しており、その他に装飾品や文房具なども取り扱っています。
お子様がいるご家庭向けに、おもちゃもあります。
シグネチャーショップ
こちらは大人向けの商品を多数取り揃えています。
美術館ならではのお土産が欲しい場合は、こちらで買い物するのがおすすめ。
以下では、個性豊かなグッズの中から厳選したものを紹介します。
書籍 |
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ボストン美術館の公式ガイドブックや展覧会の図録を中心に、美術関連の本を購入できます。ガイドブックは英語・中国語・日本語・スペイン語に対応。 |
ポスター |
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葛飾北斎の《神奈川県沖浪裏》をはじめ、名の知れた作品群がポスターになりました。艶消しプリントもありますので、お好きなほうをどうぞ。 |
生活雑貨 |
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クッションカバーやトレイなど、日常生活で手軽に使えるアイテムがそろっています。名画のある暮らしを楽しめますよ。 |
文房具 |
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付箋やノートを筆頭に、名画のステッカーやマグネットなどがあります。コンパクトで持ち運びしやすいため、家族や友人へのお土産に最適でしょう。 |
おもちゃ |
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草間彌生のパズル、エジプトの壁画がプリントされたトランプ、ぬいぐるみといった商品が手に入ります。子どもだけでなく大人も欲しくなりそうなものばかり。 |
カフェ&レストラン
ニューアメリカンカフェ
食事とお酒を楽しめるアラカルトダイニング。
ガラス張りの空間からは美しい中庭が見えるため、優雅な雰囲気も味わえますよ。
テイスト
カフェとワインバーを兼ねたお店です。
小腹が空いたらここで軽食を食べてみてはいかがでしょうか。
ガーデンカフェテリア
お子さま向けのメニューが多く、家族連れに最適です。
屋外の景色を眺めながら一息つきましょう。
失われた日本美術を堪能できるミュージアム
ボストン美術館には、明治時代に海外へ流出した貴重な日本の美術品がそろっています。
浮世絵が好きな人なら楽しめるでしょう。
エジプト美術やアメリカ美術のコレクションも豊富ですので、さまざまな時代・地域の作品を一気に鑑賞できますよ。
ミュージアムから徒歩10分ほどの場所にあるファンウェイパークは、レッドソックスの本拠地として知られています。
こちらはメジャーリーグで最も歴史ある球場ですので、野球に興味があれば足を延ばしてみてください。