「メセナ活動」とは、芸術文化の支援と擁護を意味し、この支援を指す言葉が「メセナ」、その具体的な取り組みが「メセナ活動」と呼ばれています。
芸術文化を通じて豊かな社会づくりに参加する、それが「メセナ」です。
日本は、1990年の企業メセナ協議会の設立に際して、本来のテレビ番組の協賛としてのスポンサーではなく、「メセナ」という言葉を採用しました。
そのため「メセナ活動」は、企業がパートナーシップの精神を基本として行う芸術文化支援を指す言葉というよりも、企業がパートナーシップの精神に基づき行うもの、として知られるようになっていきます。
メセナ活動と企業
「メセナ活動」は、舞台芸術、伝統芸能、建築、映像、文化遺産、さらには歴史的建造物の保護に至るまで、実に様々な分野での支援が繰り広げられています。
そして、メセナの援助方法も様々な形態が展開されています。
文化、芸術
企業は自らコンサートや美術展、ワークショップを含めた芸術文化活動を主催しています。
文化施設経営
コンサートホール、美術館などの芸術文化施設を運営します。
資金援助
芸術文化団体が活動していくための資金提供や、イベントに協賛することによって資金の援助を行っています。
コンクール等を主催
コンクールやコンペディションを主催することで、入賞者に資金提供をする、留学のための援助をする、などにも対応しています。
それらは、新しい芸術家を誕生させたり、優れた芸術家に対しての功績を称えることに繋がっています。
財団を設立
芸術文化を支援する目的のために財団を設立し、企業が基金を出すことがあります。
財団には2種類あり、ひとつは、外部の個人や団体を支援する『助成財団』、もうひとつは自社で芸術文化施設を運営し、コンサートや美術展を主催する『事業財団』です。
その他
例えば芸術文化活動のイベントの時は人材が必要ですから、人やイベント会場を提供する、または運搬、倉庫保管の場面などでも、サービス支援を行っています。
メセナ活動の詳細
「メセナ活動」には、企業のイメージアップを含め、企業全体の改善や連帯意識、さらには顧客とのコミュニケーションに至るまで、長期的なメリットを考慮するという方向性がありました。
ところが、最近はその活動は、リサイクル関係や福祉関係、教育関係といった当初と異なる方向への模索も行われているようです。
「メセナ」は活動を通じてできるだけ多くの人々が文化活動に関わることのできる環境や、アーティストたちの活躍できる環境や場所を提供しようとしています。
また、社会貢献をどのようにしていくかで、政治、経済、文化のバランスの取れた関係性も期待できるものがあります。
毎年、全国から企業・企業財団による「メセナ活動」を公募し、外部の専門家による審査会によって、受賞活動を選考。受賞企業には、表彰状と気鋭の美術作家が制作したトロフィを贈呈しています。
2004年より、このメセナ大賞を、【メセナ大賞部門】【文化庁長官賞部門】の2部門からなるメセナアワードとしました。
これまでの受賞企業・企業財団の活動は、認定活動一覧(メセナアワード)で紹介されています。
企業が見返りを求めず支援する理由
企業は、なぜ「メセナ活動」を行うことに対して、見返りを求めないのでしょうか?また、なぜ、そのように貢献するのでしょうか?
企業は、文化を支える人材を労働力として収奪していることから、次世代には文化で還元しなければならない、という考え方をしています。
資金提供を通じて文化活動・芸術活動を支援することは、社会貢献にもなる、という意向です。
つまり、資金不足が理由で文化活動や芸術活動をすることが叶わない個人や企業が多くあることからできた内容なのでしょう。
その活動に資金提供を行い、その事業で得た利益の一部を社会に還元しようというものです。
そのため企業のイメージ向上には非常に役立つのです。
近年では、CSR(社会的責任)が、要求されるようになってきました。
そのため、社会貢献活動は、企業が取り組むべき内容となってきています。
CSRとは?
CSRとは、その企業をとりまくステークホルダー、地域、国、地球の持続のために責任ある行動をしていくことです。
CSRでは、社会、経済、環境の三分野における活動についてステークホルダーに説明を行い、情報開示をする必要があります。
CSRを企業の中に位置づけることは、企業にとってブランド力を手に入れることに繋がり、価値の上昇に役立つことでしょう。
当初1980年代まで、意識的に「陰徳は美徳」とされ、活動がスタートしていました。
しかしながら、情報開示による戦略的活動が経過した2000年以降はCSRの時代、つまり社会的責任を負う時代に入ったとされています。
つまり、企業は社会活動に参画することにより社会責任を果たすこと、さらに、社員も社会に責任を果たすこと、という考え方が広がっているのです。
企業がメセナ活動で学んだこと
様々な取り組みをしていく中で、企業は資金提供だけでは意味をなさないことを知るようになります。
そのため企業は、事業活動以外に社会的な問題にも投資をしなければならなくなり、必然的に「メセナ」への取り組み意欲が減退していっている傾向があります。
「メセナ活動」そのものよりも社会貢献活動の方が歓迎されるようになってきているのです。
そのため、望ましい形は、現在、協賛から協働へと変化しています。
企業は芸術NPOと手を繋ぐことで様々な活動やコラボを通じ、アドバイスをするなどが必要になるでしょうし、スタッフや専門知識、情報における不足を支援することで組織として社会活動を行い、芸術振興に努めることが求められています。
まとめ
「メセナ活動」は、企業にとっての長期的なイメージアップともなり、世の中に貢献するという意味において、とても役立つことになるでしょう。
第三者機関が関与することで、安心して寄付できるようにしたり、個人も芸術に触れる機会を増やすなど、意識改革をしていくことが必要になるかもしれませんね。