昔も今も日本の美しさや愛おしさを、多くの画家が作品として表現されてきました。
この記事では、懐かしさを感じるだけでなく、芸術作品としても評価が高い作品を描いた日本の画家3人を紹介します。
桜島から長岡の花火まで「山下清」

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山下清は東京で生まれました。
軽い知的障害と言語障害があり養護施設に入ります。
しかし、施設での生活に飽きてしまい旅に出るのです。
テレビでは、スケッチブックを片手に放浪する画家としてドラマにもなりました。
しかし、実際は旅の途中で絵は描かなかったといわれています。
旅をしている最中は、目に映る景色をしっかりと頭に焼きつけ、帰宅してから記憶を呼び起こして作品にしたのです。
山下清の作品は、遠目から見ると平面的な絵に見えます。
しかし、近くで見ると小さな凹凸がある「はり絵」であることに気がつくでしょう。
山下清は、紙を細い「こより」にして端から貼りつけて絵を作りました。
「こより」にすることで表面が小さな凹凸になり、影の部分ができます。
山下清の作品は、細かいパーツがたくさんありますが、小さな影を作ることでさらに作品に立体的な奥行きや厚みを与えています。
山下清は、放浪の旅をして、さまざまな日本の景色を作品にしています。
「長岡の花火」は28歳のときに制作した代表作品です。
小さな人々や水面に映る花火は緻密に表現され、黒い夜空でありながらも一切暗さを感じさせない作品です。
「長岡の花火」や「桜島」は、リトグラフになって販売されています。
リトグラフや印刷物を選ぶときには、山下清が表現した繊細な色合いが忠実に再現されているものを選びましょう。
物語のワンシーンみたい「安野光雄」

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安野光雄は島根県で生まれました。
安野光雄は、絵本の挿絵を描く人というイメージが強いかもしれません。
しかし1989年の「読書画録」には日本の風景画が多数掲載されています。
「読書画録」は日本文学をテーマとした36編の作品がエッセイと共に描かれているのです。
淡い色合いで描かれた絵は、写真以上に空気感が伝わってくるでしょう。
安野光雄の故郷「津和野」を描いた作品「津和野」は、津和野が故郷ではない人でも故郷を思い出させる作品です。
安野光雄も「見知らぬ方々と子ども時代について語り合いたいと願ってこの本を描いた」と言っています。
絵を描くとき、一般的には「絵になる風景」を選びがちです。
しかし「津和野」に掲載されている作品のほとんどは普通のなにげない景色です。
「きれいな景色」が心に残るのではなく、なにげなくみてきた景色こそが人々の心の思い出になっていることがわかります。
安野光雄は多くの表現方法を持っている画家です。
「読書画録」や多くの絵本でみられる水彩画のような描き方が有名ですが、絵本「さよならさんかく」は水墨画と水彩画をあわせた絵です。
イラストのようなかわいらしい人物が日本の原風景の中でわらべ歌を歌っています。
安野光雄の作品は、絵本の挿絵も一枚の絵画として「みごたえ」があります。
故郷を思い出す「原田泰治」

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原田泰治は長野県で生まれました。
生まれて間もなく小児まひにより足が不自由になりますが、治療の甲斐あって歩けるようになりました。
大学(武蔵野美術大学)では油絵を専攻しますが、デザインに興味を持ちデザイン専攻に切り替えます。
そのため、原田泰治の作品は、油絵のような力強さとデッサン力、そしてデザインされた構図と色彩の繊細さの両方が共存しています。
色の境界線がはっきりしている描き方は、色彩のセンスがなければできないでしょう。
たくさんの色が使われているにもかかわらず、画面はうるさくなく統一感があります。
原田泰治は海外の風景も作品にしています。
しかし、海外の風景の作品と日本国内の作品には大きな違いがあるのです。
それは人物の数です。海外の風景の中には人がいないか、いても数人です。
一方、日本国内の風景の中には、お年寄りから子どもまでが何かをしています。
これは、原田泰治の思い出が作品にあらわれているのではないでしょうか。
日本の原風景の中には、画家になる前の原田泰治の子ども時代の思い出が投影されているのかもしれません。
原田泰治は「心の故郷を探し続けている」と言っています。
原田泰治は、現在も心の故郷を求めているのでしょう。
原田泰治の作品は、和とも洋ともいえない魅力があります。
和室に一枚あればぱっと明るいアクセントになり、洋室に一枚あれば和風モダンなインテリアになるのではないでしょうか。
まとめ
日本の美しさ、愛おしさを描いた画家3人のご紹介でした。
この3人の画家の作品は、日本にとどまらず海外でも人気があります。
山や海などの自然風景だけでなく、そこで暮らす人々の生活を感じる作品は国境を超えて人々の心に響くのではないでしょうか。
