エルミタージュ美術館は、ロシアのサンクトペテルブルグにある世界三大美術館に数えられるミュージアムです。
エルミタージュとはフランス語で「隠遁者・世捨て人」という意味。
エカテリーナ2世がお忍びで訪れる隠れ家でした。
だんだんと規模が拡大していき、最終的には現在の姿へと変貌を遂げています。
ロマノフ王朝の栄華をうかがわせる財宝や美術品の数々は、鑑賞者を驚かせること間違いなし。
この記事では、エルミタージュ美術館の魅力と見どころをひも解いていきます。
エルミタージュ美術館の歴史、成り立ち
エルミタージュ美術館の始まりは、18世紀まで遡ります。
エリザベータが基礎を作り、エカテリーナ2世がその後を継いで増築しました。
まずはエルミタージュ美術館が歩んできた歴史について解説しましょう。
ロシアへの渡航制限について
2022年7月時点において、ロシア全域に渡航中止勧告が出されています。不要不急の入国は絶対に避けてください。
2人の女帝が築いた壮麗な宮殿
冒頭でもお伝えしたように、エルミタージュ美術館の基礎を作ったのはエリザベータ女帝です。
当初は冬の間に滞在する住居として建築され、「冬宮殿」と呼ばれました。
宮殿の完成を待ち望んでいたエリザベータは病に倒れ、宮殿にほとんど住むことなく崩御します。
夫のピョートル3世を退けて即位したエカテリーナ2世は、冬宮殿をネオクラシック様式へと改装しました。
その隣に小エルミタージュ・大エルミタージュを増築し、膨大な数の美術品が展示されるようになります。
それぞれの建物の間には渡り廊下が作られました。
今のエルミタージュ美術館は、この当時の建築を下敷きにしています。
ソヴィエト崩壊後に美術館として一般公開
1917年にロシア革命が勃発し、ロマノフ王朝は滅亡しました。
それ以降は宮殿に臨時政府が設置され、ソヴィエトが解体されるまで政治の中枢機関であり続けたのです。
貴族や商人も王族に負けず劣らず美術品を買い集めていましたが、ロシア革命後に没収されて国の管理下に置かれました。
歴代のロシア皇帝たちが収集してきたコレクションと合わせると、その総数はおよそ300万点にも上ります。
宮殿は1991年に国立美術館となり、正式に一般公開される運びとなりました。
併設されている劇場では今でもバレエやコンサートが開催され、エンターテインメントを楽しむための施設としても使われています。
エルミタージュ美術館の特徴、見どころ
エルミタージュ美術館は5つのエリアに分かれています。
- 冬宮殿
- 小エルミタージュ
- 大エルミタージュ
- エルミタージュ劇場
- 新エルミタージュ
世界最大級と言われるだけあり、ルーブル美術館を凌ぐほどの広さ。
最低でも1日は費やさないと、お目当ての作品を鑑賞できません。
ここではエルミタージュ美術館の特徴を3つに絞って解説します。
宮殿建築そのものが美術品
美術館の建物は世界遺産に登録されており、外観を眺めているだけでも飽きません。
水色と白のコントラストが見事です。
中に足を踏み入れると、豪華絢爛な内装に目を奪われること間違いなし。
急いで回りたい人向けに、おすすめの鑑賞ポイントを紹介します。
大使の階段
美術館に入って最初に目にする場所で、有名な撮影スポットです。
ロシアバロック建築の最高傑作と称され、黄金の天井画や赤い絨毯に見とれてしまうでしょう。
冬宮2階
このエリアには見どころが凝縮されています。
- パビリオンの間
- 大玉座の間
- ピョートル大帝の間
- ラファエロの回廊
「パビリオンの間」には、ぜんまい仕掛けで動く黄金の孔雀時計が設置されています。
ポチョムキンがエカテリーナ2世に贈ったもので、イギリスの時計職人が作り上げた傑作です。
ロシア皇帝との謁見に使われた「大玉座の間」や、ピョートル大帝と女神の絵が飾られている「ピョートル大帝の間」は、目に焼き付けておきましょう。
人気の高い「ラファエロの回廊」も必見です。
聖書に書かれているエピソードを描いた作品が並んでおり、キリスト教徒でなくても見応えがありますよ。
世界的に有名な絵画が勢ぞろい
エルミタージュ美術館には、美術ファンなら知っているであろう作品がたくさん収蔵されています。
エジプト美術・印象派・宝飾品など、その種類は枚挙にいとまがありません。
あまり時間がない場合は、イタリア美術だけでもみていきましょう。
なかでもレオナルド・ダ・ヴィンチの《ブノワの聖母》と《リッタの聖母》は必見です。
余裕があれば、ティツィアーノ・ジョルジョーネ・カラヴァッジョなどもあわせてご覧ください。
エルミタージュ美術館が収集している作品のうち、もっとも数が多いのはフランドル美術です。
特筆すべきはレンブラント作品の充実ぶり。
彼の名を冠した展示スペースが設けられており、《ダナエ》や《放蕩息子の帰還》といった名画を拝める貴重な場所です。
美術品を守る「絵画護衛官」は猫
エルミタージュ美術館には、60匹以上の猫!が暮らしています。
ネズミから美術品を守るために飼われていて、正式に「絵画護衛官」という役職が与えられているのです。
それぞれに名前がつけられ、写真付きの身分証明書まで用意されているというから驚きですね。
猫たちの世話にかかる費用は、美術館の従業員や市民からの募金が財源。
いかに猫たちが愛されているかがよくわかるエピソードです。
併設ミュージアムショップ・カフェ
ここからはエルミタージュ美術館のショップとカフェについて解説しましょう。
世界情勢が落ち着いてロシアに行けるようになったら、足を運んでみてください。
ミュージアムショップ
ショップは館内にいくつか点在しています。
定番のお土産は、やはりポストカードでしょう。
持ち帰る際に場所を取らないため、気軽に購入できるグッズの代表格です。
図録もお忘れなく。
お目にかかれなかった作品を鑑賞したり、お気に入りの美術品を心行くまで眺めたりと、さながら持ち運べる小さな美術館です。
アクセサリーや小物入れなど、ここでしか手に入らないものも売られています。
おしゃれな装飾品が欲しい人は、旅の記念にいかがでしょうか?
カフェ&レストラン
ミュージアムカフェは1階にあります。
サンドイッチやサラダの他、スイーツやドリンクなどの軽食類を販売しています。
見学は長丁場ですから、時間がある時に休憩しておきましょう。
その他にも、美術館の周辺にあるおすすめのカフェ&レストランを紹介しておきます。
文学喫茶(リテラトゥールノエ カフェ)
プーシキンやドストエフスキーなど、ロシアの文豪たちが愛したカフェです。
美術館から歩いて行ける距離にあるので、立ち寄ってみては?
Koleso(コレソー)
名物はキーウ風カツレツです。こちらも美術館のほど近くにあり、アクセスの良さは抜群。
ロシア料理に慣れていない人でも安心して食事を楽しめますよ。
まとめ
エルミタージュ美術館の歴史や魅力について、駆け足で解説してきました。
あまりにも広すぎて全ての見どころを語り切れないのですが、最低限みて欲しい部分に焦点を当てています。
ロシア観光ができるようになった暁には、ご自分の目で確かめてみてください。
もし行く機会があるなら、事前に見学ルートを決めておくことを推奨します。
エルミタージュ美術館は広く、途中で挫折する人もいるくらい複雑な構造になっています。
初めての場合はオプショナルツアーに申し込むといいかもしれません。