この記事では、俳句に詠まれた秋冬の植物(秋・冬の季語)と、その植物の育て方についてご紹介いたします。
四季の風流の観点からも、ガーデニングと俳句は通ずるところがあります。
俳句を始めると奥が深く、一生の趣味になるといわれています。
ガーデニングもまた、これで卒業ということのない趣味です。
育てやすい植物から始めてやがて株分けをしたりと、俳句同様にどんどん世界が広がっています。
秋の季語、俳句に詠まれた植物
秋の季語
- 秋、爽やか、秋風、鹿、馬肥ゆる、山粧う、赤蜻蛉、撫子、吾亦紅(ワレモコウ)、雁、秋刀魚、銀杏、栗、木の実、松茸
秋の俳句
コスモスの夜の花びらの冷えわたり(中村汀女)
コスモスは秋の日に照らされて風に揺れているイメージがありますが、この句の場面は夜です。
秋の夜、一面のコスモスが花びらまで冷えている様子が感じとれるような気がします。
中村汀女は明治生まれで、女流俳人の第一人者として昭和期に活躍しました。
日常に題材をもとめ、女性らしい細やかさが特徴と言われています。
この句も、ありふれたコスモスが夜の闇に別の姿を見せることを女性らしい鋭敏さで切りとっています。
をととひのへちまの水も取らざりき(正岡子規)
「へちまの水を取る」とは、へちまのつるを切り、その切り口から水を取ることで「糸瓜(ヘチマ)の水取る」は秋の季語にもなっています。
つるの切り口を地面に置いた一升瓶に入れて水を取ることはよく行われていたようです。
化粧水として用いられますが、結核を患っていた正岡子規は漢方薬として口に含んでいました。
この句は療養していた子規が病床で読んだ句で、辞世の句とも言われています。
子規は病床から庭のへちまに目をやり、俳句にしました。我が身の不幸を嘆くこともなく淡々としているところに、子規が類まれな精神の持ち主であったことがうかがえます。
何も知らないで聞くと“へちまの水を取り忘れたことを詠んだ俳句”になってしまいますが、その背景を知れば読み捨てることはできません。
この句を読むと命があることのありがたさを感じ、できることを精一杯やろうという気持ちにさせられます。
冬の季語、俳句に詠まれた植物
冬の季語
- 冬、オリオン、狐火、枯野、ダイヤモンドダスト、カトレア、蕪、大根、山茶花、 雪吊、雪下ろし、白鳥、クリスマスローズ、ポインセチア、氷柱
冬の季語を用いた有名な俳句
冬薔薇は色濃く影の淡きかも(水原秋櫻子)
俳句に「薔薇」が出てくるときには「そうび」と読むこともありますが、この場合には「ふゆばら」と読む方がふさわしいようです。
冬のバラの色が濃いというのは、ガーデニングの世界では知られた本当の話です。
秋の紅葉が寒暖差があるときに色が濃くなるように、冬に咲くバラは春や秋に咲くバラよりも色が濃くなる傾向があります。
「影の淡き」は冬の弱い光のなかでくっきりとしていない影の様子を表しています。
水原秋櫻子は俳句界の四S(読み:しいエス、よんエス)の一人として活躍し、産科医としても皇室の出産を担当するなど多忙な人でした。
園芸をに親しむ時間などはなかっただろうと思いますが、植物を見る視点には園芸に詳しい人に匹敵するような鋭さがあり、感心してしまいます。
「冬薔薇」という言葉の美しさに、一目見てみたい気持ちにさせられます。
梅一輪一輪ほどのあたたかさ(服部嵐雪)
梅が一輪、また一輪と咲く頃にわずかなあたたかさを感じられるようになったことを表した句です。
江戸時代の句ですが、梅の咲き出す頃に少しずつ寒さが和らぐのは現代も同じです。
「梅」は春の季語なのですが、この句は前書きに「寒梅」とあるため、冬の句に分類されます。
服部嵐雪は松尾芭蕉に師事し、武士をやめて俳諧に専念した人物。
多くの弟子を育てたそうです。
俳句に詠まれた植物の育て方
ヘチマ
ヘチマは種まきからでも、苗からでもどちらでも育てられます。
今回は苗から育てる方法をご紹介します。
苗の選び方
葉が黄色っぽくなっているものは古い苗で、すでに病気にかかっている場合があるので避けましょう。
発芽したときの子葉に加えて、本葉が3〜4枚あるぐらいの大きさが最適です。
植えつけ
植え付けの時期は、関東では5月の連休以降が良いとされています。
ヘチマは暖かい所を好むので、肌寒さがなくなり暑さを感じる日が出てきた頃に植えましょう。
重要なのは、プランターの大きさです。
ヘチマを育てるには広いスペースが必要で、一つの苗を植えるのに深さは30センチ以上の鉢が向いています。
グリーンカーテンにしたいときなどは、本数に応じた大きさのプランターを準備しましょう。
もちろん、地植えであれば、ヘチマにとってより良い環境となります。
土
プランターの場合は野菜の培養土が適しています。地植えの場合は、2週間前から耕し始め石灰を入れます。
1週間前には肥料を入れ、土となじませます。
花と実
7月に入った頃から開花し、7月中旬から9月にかけて身を結びます
水やり
ヘチマは過湿にも乾燥にも弱いという性質があります。
土の表面が乾燥してから、たっぷりと水やりをしましょう。乾燥しやすい真夏の時期は、水切れに注意してください。
バラ
バラは園芸品種の花形といえる美しさと存在感があり、育てるのが難しいというイメージもあります。
今回は、コンパクトで鉢植えでも育てやすい品種を紹介します。
ベル・ロマンチカ
2008年にドイツでADR賞を受賞した「ベル・ロマンティカ」です。
ADR賞は、ドイツで3年間化学薬剤を使わずに育てられた中から美しいバラに与えられます。
ドイツは日本より寒冷なので、この受賞は寒さに強く、虫などがつきにくく丈夫なことを示しています。
初心者がバラを育てる際には、育てやすい品種選びと鉢植えで育てられることが重要です。
病気に強い品種を選び、日当たりやバラの状態に応じて移動ができる鉢植えを選ぶことで、栽培に成功しやすくなります。
「ベル・ロマンチカ」ならベランダガーデニングの延長線上で、憧れのバラ栽培を始めることができそうです。
ただし、耐寒性が強い品種なので、地域によっては別の丈夫な品種を選んだ方がいいでしょう。
おわりに
今回は、俳句に詠まれた秋冬の植物(秋・冬の季語)と、その植物の育て方についてご紹介しました。
入り口は入りやすいのにやればやるほど難しい、という不思議な共通点のある俳句とガーデニング。
両方とも挑戦してみると、育てた植物を俳句にしたり、秋・冬の季語で詠んだ植物を身近に置きたくなったり、いっそう楽しめそうです。