アルブレヒト・デューラーは、現在では特別珍しいものではないのですが、自画像をたくさん描いたことで知られている画家です。
実際に残されている自分の作品の多くに、アルブレヒト・デューラーが描かれています。
また、その作品はどれも時代を超えてまるでそこに存在しているかのような素晴らしいものばかりです。
この記事では、細部にまでこだわりぬいた美しい作風のアルブレヒト・デューラーについて紹介していきたいと思います。
アルブレヒト・デューラーとは?
1471年から1528年にかけて活躍したドイツのニュルンベルク出身の画家です。
ルネサンス時代を象徴する画家としても知られており、理論家や数学家の一面も持ち合わせています。
もともとアルブレヒト・デューラーの父親は、移住し金銀細工師として芸術に携わる仕事をしていました。
母親は、ニュルンベルクの金細工師の娘として生まれました。
アルブレヒト・デューラーは次男として誕生しましたが、兄弟の数は14人以上と大所帯だったと言います。
兄弟のなかでもハンスは同じ画家として活躍していました。
エンドレスは、父親と同じ職業に就き、あとを継ぎます。
15歳の頃には弟子入りできるほどに、絵の才能を発揮するようになります。
師弟修行を終えたあとに、約4年間の間旅をして過ごします。
アルブレヒト・デューラーは、20代にはたくさんの作品を製作し現在に残しています。
彼が描いたのは木版画になり、その技術力の高さはヨーロッパ中に広がるほどの影響力を持っていたと言われています。
1512年には、マクシミリアン1世がパトロンとなり、代表作となる巨大作品の「凱旋門」なども手掛けています。
結婚も経験していますが、友人に妻に対して深裂な言葉を伝えていることもあり夫婦仲は良くなかったのではないかと言われています。
一節によると、アルブレヒト・デューラーは両性愛者だったことが、絵画からも読み取れるようです。
また、アルブレヒト・デューラーは旅に出るのを好み、人生のうちで4回出ています。
アルブレヒト・デューラーは体調を崩してから、数々の作品を手掛けていますが理論的な作風を求め、最後まで完成に至ることはありませんでした。
そのため、アルブレヒト・デューラーの晩年の作品は少なく、ほとんど残っていません。
最後の作品はウルリッヒ・スタルクの肖像画になり、より複雑な構成で横顔が描かれています。
アルブレヒト・デューラーにとっての自画像
アルブレヒト・デューラーの作品を見ると、自分をまっすぐ正面から描いたものを数多く見かけます。
当時は顔を正面に描くのは、神や聖人に限られたものとされていました。
ましてや、自分の顔を画家が描くのも珍しい時代に、真正面から描き一つの作品としたのはアルブレヒト・デューラーが初めてです。
ただ時代背景的に自分の顔を描いたものは、作品として販売はしていませんでした。
限られた友人や身内の観賞用として製作していました。
ちなみに初めて描いた自画像は、婚約者のアグネスにあげるためのものだったと思われます。
アルブレヒト・デューラーの作品はとにかく多彩な表現方法が特徴です。
例えば木版画はもちろん、彫刻や水彩画なども意欲的に製作していました。
自分の功績をまとめた書籍なども手掛けています。
アルブレヒト・デューラーは、当時の有名な画家レオナルド・ダ・ヴィンチや、ラファエロなどと付き合いがあったと言われています。
アルブレヒト・デューラーの画家以外の分野での活躍
アルブレヒト・デューラーは、画家としてはもちろん幅広い分野で活躍した人物です。
例えば、コンピューターグラフィックスの技術である「レイトレーシング」の原理を発明した人物としても知られています。
この技術に関する書籍を4冊も出版していることからも、その功績を認められているのです。
自伝などを残している珍しい画家でもあり、ほぼ正確な内容がわかるのも特徴です。
また理想家としての一面もありますし、数学の分野に優れていたため遠近法にも高い技術を持ち合わせていました。
絵画を製作するうえで、どんなポジションに描いたらバランスの良い絵ができるのかなど、理想的なプロポーションの原理をまとめ、論文にしています。
アルブレヒト・デューラーはこれらの分野でも高い評価を受けるなど、いかに才能に溢れた人物だったのかがわかると思います。
他にもアルブレヒト・デューラーの作品を見るとわかるのですが、古典的なモチーフを積極的に使用していました。
北方の美術に導入したこともあり、より高い評価と名声を手に入れることになります。
アルブレヒト・デューラーの作品を紹介
アルブレヒト・デューラーが残した作品はたくさんあります。
肖像画だけに限らず、たくさんの才能を発揮した画家でもあります。
アルブレヒト・デューラーの作品について、紹介していきたいと思います。
28歳の自画像
1500年に描かれた、まっすぐ正面をみた自身を描いた肖像画です。
鋭い眼差しでまっすぐ前を見据える姿がとても印象的な作品になり、長い巻髪と豊かなひげ、左右対称に描いているのも特徴です。
この作品は、自分をイエス・キリストになぞらえて作成したものです。
芸術家として確かな実績を残したい、もっと技術を向上させたいと考える強い意思のようなものが垣間見えます。
一度観たら忘れない、素晴らしい自画像作品としれ現在でも高く評価されています。
数ある肖像画のなかでも技術力の高さに定評のある作品です。
野兎
アルブレヒト・デューラーというと、自画像の印象が強いと思いますが、動物の姿を描いたものも残っています。
1502年に描かれた野兎は、見た目の愛らしさもあり人気のある作品としても知られています。
ガッシュと呼ばれる絵の具を用いて描かれたものになり、北方ならではの伝統的な手法です。
まるで目の前にいるような毛の柔らかさや質感が伝わってきそうな高い芸術性を感じます。
毛の生えている向きや、瞳など細部を観てもいかに優れている作品なのかがわかるのではないでしょうか。
うさぎをここまでリアルに描く画家はなかなかいません。
メランコリアⅠ
1514年に製作されたものになり、アルブレヒト・デューラーの作品のなかでもかなり有名なものです。
「四体液説」に基づいたものになり、なかでも憂鬱をテーマにしたものを描きました。
ギリシャ哲学の考え方として血液・粘液・黒胆汁・黄胆汁のバランスが崩れたときに、人間は体調を崩し病気になると考えました。
憂鬱な気持ちは知性の内省的なものであり、この女性の表情からも読み解くことができるのではないでしょうか。
後ろで遊んでいる子どもが描かれているのが、この助成と反比例するからこそ、憂鬱な気持ちがよりダイレクトに伝わってきます。
聖母の7つの悲しみ
25歳の頃に依頼を受けて描いた作品です。
聖母マリアの悲しみの7場面を、1つの絵のなかにまとめています。
初期の代表作のなかでも高い技術を評価されているものになり、表情の一つ一つがとても丁寧に描かれています。
ただ、この作品は真ん中の聖母マリアはアルブレヒト・デューラーの作品とする一方でその他の7つは別の人が描いたのでは?という説もあり、わかっていません。
まとめ
アルブレヒト・デューラーの作品はどれも芸術性の高さだけでなく理論的であり、数学的な美しさも感じます。
15歳にして才能を認められるなど、いかに優秀な人物であったのかもわかります。
素晴らしい作品が数多く残されていますので、アルブレヒト・デューラーの世界観を堪能してみてはいかがでしょうか。