風刺画は、私たちの心の声でもありますね。
社会にはたくさんの不合理や矛盾が溢れています。
そのような出来事に反発する気持ちが出てくるのは、当然のことです。
そして、それらに対する抵抗心や批判精神に基づいて表現されたものが風刺画です。
次にあげるいくつかの作品からは、まるで自分のことを言っているかも・・・というものが見つかるかもしれません。
風刺画にはどんなものがあるのか?そしてそれに私たちは賛同できるのか、じっくりと見ていきましょう。
Georges Ferdinand Bigot(ジョルジュ・ビゴー)
「魚釣り遊び」と題される風刺画は、日本、清国、ロシアの3国間の対立を描いています。
日本と清国は、朝鮮を魚に見立ててどっちが釣ることができるのかを対峙しています。
ロシアはそれを橋の上から眺めタイミングをはかっているのでしょう。
やがてその風刺画は現実となり日清戦争(1894年~1895年)へ発展し、日本はそこで清国に勝利しますが、ロシアは、眺めていただけではありませんでした。
日露戦争(1904年~1905年)に突入します。
最終的にはアメリカ合衆国の斡旋の下でポーツマス条約調印となります。
Banksy(バンクシー)
狙われた鳩
世界的にも有名なバンクシーの作品ですが、これはパレスチナ自治区・ベツレヘムの壁にある「狙われた鳩」の画で、戦争反対へのメッセージです。
平和の象徴である鳩が防弾チョッキを着ていて、おまけに銃口で狙われています!
この皮肉は、世の中における平和への希求そのものです。
モバイルラバーズ
抱き合いキスをしようとしている二人が見ているのは相手の顔ではなく、スマートフォン。
暗い画像の中で、無機質なスマートフォンの明かりだけが光っています。
現代社会は、お互いの心よりも機械の中身のほうに向いているというシラケた滑稽な話題を提供しています。
Marco Melgrati(マルコ・メルグラティ)
私たちの生活は、日々、無機質感が高まっています。実際に人と会うのではなく、ネットを通じて繋がっているのです。
ツイッターやフェイスブックやあらゆるSNSで繋がって安心しているのが現代社会。
そこには、善もあるけれど・・・まことしやかな嘘の実在、悪の提供もあります。
見る目がないとはまってしまう落とし穴、私たち、いったい、どっちの世界を生きているのでしょうか?
電車に乗っても、自宅でもスマートフォンは、欠かせない?なんか、おかしくないかを考えたほうがいい。
この話題は、数多く挙げられていますね。
また、昨今の新型ウィルスにより、一時期、子供たちは外に出ること、友達と接触することができなくなりました。
外の空気を吸って、たくさん遊んで元気いっぱいな生活から、家に閉じこもることを余儀なくされたのです。
Igor Morski(イゴール・モルスキー)
彼は、ポーランドのアーテイスト。
風刺画を、そこにポンと提示して、観る人に多くを考えさせます。
監視された殺伐とした世の中で、夫婦の意見も対立、この画像は男女が反対方向に舵を切って、別々の人生を歩もうとしているのがわかります。
背景は、まるで社会全体や、それぞれの気持ちを色で表現するとこんなイメージなのだろうと。
でも、子供を抱えて生きていかなければならない姿勢に「なんか、わかる・・・」という人も多いのではないでしょうか。
時間に束縛されて、ずっと働き続け、もがいている現代社会人の様子が表現されています。
そうやって今までも、これからも、時間に縛られて生きていくのか??
まるであやつり人形のようです。
おわりに
風刺画を眺めていくと、いかに不平等なこと、おかしなことがまかり通ってきたことがわかりますね。
今、私たちの住む世の中に、ぞっとしてしまう方もいるでしょう。
「よくぞ、風刺画として残してくれた!」と思いつつ、気持ちの上で「スッキリ!」したのではないでしょうか。
風刺画を通じて、世の中の出来事をよく理解することができますし、時を経て語り継がれていくもの、保存されていくべき貴重な存在に違いありませんね。