みなさんは「バロック美術」について、どの程度知っていますか。
ヨーロッパで生まれたルネサンスとは全く異なる技法になり、美術の幅を広げた意味でも重要な役割を持っている美術様式になります。
名前は聞いたことがあるものの、バロック美術がどんなものか知らないなんて人もいるのではないでしょうか。
この記事では、世界各地の建築物にも影響したと言われているバロック美術について、わかりやすく紹介いたします。
バロック美術入門:その時代背景と芸術的影響力
まずは、バロック美術の定義と歴史的背景を振り返ってみましょう。
バロック美術は、1600年代〜1700年代にかけて登場し、一気に広まったと言われています。
バロックとは“ゆがんだ真珠”を意味する言葉になり、もともとは批判的な意味を持っている言葉として広まっていきました。
当時の美術は、左右が均等であるものなど構図が美しいものを高く評価していましたが、バロック美術は全く違う意味を持っているものです。
バロック美術が生まれたのはローマになり、その後、ブランスやイタリア、ポルトガル、スペインと各国に広まっていきました。
ヨーロッパで注目されたのはもちろんのこと、ドイツやロシア、オーストリアなどもバロック美術に注目するようになります。
そもそもバロック美術ってなに?と思っている人もいるかもしれません。
ルネサンスと比較すると、とにかく大胆でドラマティックな技法によって表現される絵になります。
宗教画や神話をモチーフにした絵もたくさん存在しており、芸術が大きく変化した時代です。
バロック美術が誕生したのは、当時の政治的な背景も関係しています。
1517年に「マルティン・ルター」によって宗教改革が本格化していきます。
もともとのカトリック教会に対して、キリスト教にプロテスタントと呼ばれる、新しい宗教が誕生します。
カトリック教会は美術を使って布教することに尽力したため、一気に芸術的分野を広めることになります。
当時、宗教的な色合いが強くなったのも、ヨーロパ全体が勢いのある時期から徐々に衰退していたことも大きいのではないでしょうか。
宗教改革が積極的に行われたことで、ヨーロッパ全土が混乱を招くことになります。
そんな時代背景のなか、魔女狩りなども行われ異端な人物に対しては厳しく取締を行いました。
そんななか、活版印刷としての技術の発展により、庶民の間にも「新約聖書」が広がり始めます。
宗教同士の対立が深まることで、よりバロック美術が注目されるようになり、100年もの長い間、たくさんの信仰がありました。
有名なバロック美術が発展したことで有名な画家を生み出し、現在にまで伝えられるようになったと言われています。
バロック美術にとって、こうした歴史背景が大きいのは言うまでもありませんね。
バロック美術の魅力:光と影、動きと感情の表現
バロック美術においては、ルネサンスと比較すると圧倒的な違いがあります。
バロック美術の作品を依頼する人の多くが宗教関係者になり、布教としての目的で美術を使っていました。
国によっても多少の考え方の違いがあります。
例えばオランダにもバロック美術が広がりましたが、宗教的な面だけに限らず、バロックの作風に強く興味を持ちました。
同じバロック美術といっても、宗教への反発として取り入れた国と、芸術の一種として取り入れた国での違いもあると考えると、感慨深いものがありますね。
バロック美術が発展したことによって、肖像画や風景画なども多く描かれ広まるようになります。
バロック時代の美術の主な特徴とスタイルは、どれも躍動感があるものが多く明暗の差がはっきりしているのが特徴です。
実際に描かれているものを見ると、人間の動きも生き生きとして流動的なものが多く見られます。
王様の生活や、貴族、ギリシャ神話、聖人などを描いたのもバロック美術には多く見られます。
建築でもバロック美術は広まりを見せ、装飾品を多く用いた様式が特徴です。
バロック美術の巨匠たち:時代を超える名画の紹介
バロック美術の広まりを見せ、多くの有名な画家が登場します。
カラヴァッジョ:光と影の革命家
バロック美術が最も発展したのは、イタリアだと言われています。
そのイタリアで有名になったのが「カラヴァッジョ」です。
カラヴァッジョの革新的な光の技法は、徹底的に描く写実性はもちろん、明暗の比率を美しく描き、豊かな感情表現でも知られています。
あまりにも強烈過ぎる表現もあり、なかには批判的な意見を持つ人もいたそうです。
画家としての一面だけではなく、喧嘩から相手を刺殺してしまい逃亡犯になり、一度は免罪されるも投獄され38歳の若さで亡くなりました。
代表作品 |
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病める少年バッコス |
リュートを弾く若者 |
女占い師 |
エジプトの逃避途上の休息 |
レンブラント:人間性の深みを描く
光と影の魔術師としても有名なレンブラントも、バロック美術で知られた画家の一人です。
まるで闇の中から浮かび上がるような、レンブラント作品に見るバロック美術の深みは、他の画家とは一線を画していました。
よりバロックっぽい色調を使ったのも特徴になり、明暗の対比が激しいのもレンブラントならではの描き方です。
オランダの黄金期を支えた巨匠としても知られており、精神性を帯びた表情などを描くことに長けていました。
生涯に渡り作品を作り続けた人物としても知られています。
国際的な一面も持ち合わせるなど、世界的に活躍した人物です。
代表作品 |
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賢者の対話 |
キリストの神殿奉献 |
テュルプ博士の解剖学講義 |
フローラに扮したサスキア |
他にもフェルメールなども、実はバロック美術を描いた画家として知られています。
ベラスケス:スペインバロックの精華
スペインの画家として知られているのがベラスケスになり、宮廷画家としても活躍していました。
人生のほとんどを宮廷画家として過ごしたとも言われる人物になり、イタリア旅行が彼にとっての人生の転機になったと考えられています。
宮廷画家という立場もあり、宮廷人や国王はもちろん、有名人を描いたことでも知られている人物です。
肖像画を多く描いたことでも知られるなど、他のバロック美術とは違った一面もあったようです。
一時期、その評価を落とすも亡くなってから、再評価された人物でもあります。
そのため残されている作品の数が少ないのは、残念です。
代表作品 |
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無原罪の御宿り |
セビーリャの水売り |
ウルカヌスの鍛冶場 |
フェリペ4世の肖像 |
ルーベンス:情熱と活動の画家
ルーベンスは、ベラスケスに対して、師匠のような存在となった人物です。
フランドル地方で活躍していた人物になり、もともとは法律家の息子という優秀な立場にいました。
イタリアでは宮廷画家として認められ、ヴェネツィア派の描き方を強く影響を受けたといいます。
ルーベンスの豪華で情熱的な絵画は、劇的な表現を特徴としており、豊かな造形美なども彼ならではです。
迫力のある絵が多く、キリスト教や神話、歴史がなど多彩に描きました。
風景画などにも挑戦するなど、幅広く結果を残した人物としても知られています。
代表作品 |
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無原罪の御宿り |
受胎告知 |
聖母被昇天 |
キリスト降架 |
バロック美術:過去から学ぶ、今に生きる芸術
バロック美術について知ると、誰もが知っているような画家や作品がたくさんあるのがわかると思います。
どれも、明暗がはっきりとしていて、繊細で上品な印象のルネサンスとは違った作風なのがわかると思います。
バロック美術は歴史とも大きな関わりがあること、また、芸術の分野の発展においても重要な役割を担っていることがわかります。
描く内容を大きく変えたことで、宗教に対しての考え方も変わっていきました。
バロック美術を知ると、当時の時代背景が見えてくるのも美術の面白さといえるのではないでしょうか。