近年、日本でも人気のある芸術家の一人に、ヨハネス・フェルメールがいます。
芸術に興味がない人でも、一度は目にしたことがあるのではないでしょうか。
フェルメールをテーマにした展覧会なども行われています。
オランダ出身の画家のなかでも最も有名な人物ですが、もともとは無名の画家でした。
現存している絵画はたったの36作品しかないのだとか。
フェルメールがどうしてここまで有名になったのか、説明していきたいと思います。
ヨハネス・フェルメールとは?
17世紀に活躍したオランダの画家の一人です。
ヨハネス・フェルメールが生まれたのは、ネーデルランド連邦共和国です。
当時のオランダは黄金時代とも言われていたように、経済的な発展が目まぐるしい時代でした。
経済面だけに限らずオランダで絵画が最も発達した時代です。
フェルメールが生まれたデルフトは、アジアやアメリカなどの貿易が盛んな場所だったこともあり、さまざまなインスピレーションを受けたとも言われています。
実際にフェルメールの作品を見ると、その影響を強く受けていることがわかります。
当時のオランダではアジアからの影響で、中国の陶磁器を元に作られた青の塗料の陶器=デルフトブルーの生産も行われていました。
フェルメールが描いた作品で残されているもののなかには、デルフト製のタイルを描いたものも見かけることもあり、探してみると面白いと思います。
フェルメールの作品の歴史とは?
フェルメールは43歳で亡くなるまで、たくさんの絵を残しています。
初期の段階では歴史をテーマにした作品も残されており、文学的な知識にもとても優れていたことがわかります。
歴史画を描くためには、それなりの知識を必要とするため、物語を読み解く力がないと、実現することはできないのです。
初期の段階では明暗を色濃くわけたはっきりとしたコントラストの作品を多く見かけます。
1656年以降になると小さな室内画も製作するようになり、日常生活を描いた作品も多く見られるようになります。
この辺りから、フェルメール特有の光の反射を利用した絵が多く見られるようになっていきます。
“光の魔術師”と呼ばれるようになった、フェルメールの原点ともいえます。
光の反射を示すために、絵の具を塗り重ねて使っています。
そのうえに小さな点を重ねる方法で仕上げています。
その後、フェルメールが画家として高く評価されるようになったのは、1662年に聖ルカ組合の理事としての役割をもらってからになります。
はっきりと明暗を分ける描き方から、柔らかい光を使った作品の輪郭を描くようになっていきます。
この頃のフェルメールの作品に「水差しを持つ女」がありますが、色彩がとても柔らかく、温かい気持ちにさせてくれます。
今までのフェルメールの描くものとは、違った印象とも言えるのではないでしょうか。
また、フェルメールといえば、人物の胸より上を描くトロニーの作品もあります。
晩年になると、女性の輪郭はよりシャープなものになり、平坦な筆使いを使ったものがメインになります。
1675年に亡くなりますが、具体的な日付や死亡原因についてははっきりしておらず、現在でも謎のままだと言われています。
フェルメールの作品はほとんど残されていない
そもそもフェルメールは富裕層向けに描いていたこともあり、現存する作品は数少ない画家でもあります。
フェルメールが使用していた絵の具は最高級なものばかりだったので、一般市民が購入できるものでは有りませんでした。
なかでも、ピーテルファンライフェン(芸術家)に売却した作品も多く、後にオークションにかけられたことで世の中に出回るようになりました。
フェルメールの作品のすべてが見つかっているわけではなく、現在でも、どこにあるのかわからない作品もあります。
今見つかれば高い価値でやり取りされるのはいうまでもありません。
残された作品一つ一つがとても有名なものばかりですし、いかに優れていた画家なのかがわかるのではないでしょうか。
フェルメールの有名な作品
フェルメールの残した作品は、どれも有名なものばかりです。
いつ頃描かれたものなのかによって、絵の雰囲気も違います。
タッチの違いなども比較して見ると、フェルメールの歴史が見えてくるのではないでしょうか。
数ある作品のなかでも有名なものを紹介します。
真珠の首飾りの少女
1665年に描かれたフェルメールの作品になり、マウリッツハイス美術館に保管されています。
フェルメールの描いた作品のなかでも、最も人気があるといっても過言ではありません。
具体的に誰のために描いた絵であるのかはわかっていません。
ビーテルのコレクションとして加わったあとに、義理の息子によって売却されました。
それまでは全く評価を受けたことのない忘れ去られた絵でもあったのです。
何度見てもその美しさに魅了されてしまうほど、女性の表情がとても丁寧に描かれています。
真っ黒な背景とのコントラストも美しく、フェルメールだからこそ残せた作品と言えるのではないでしょうか。
ほんのりと潤んだ瞳を見ていると、魅了されてしまいますね。
牛乳を注ぐ女
1658年に描かれた作品です。なんてことない日常風景を描いたものになります。
フェルメールの作品のなかでも特徴的なのが、描かれている女性が仕事をしている女中さんであることです。
裕福な女性でもなく、普通に存在している女性の姿が描かれています。
フェルメールの遠近法の技術はもちろん、光の入り方がとても美しく台所でのなんてことない姿を描いているからこそ、印象強く心に残るのかもしれません。
描かれている一つ一つがとても生き生きとしているのもあり、細かな部分にまで目を向けて欲しい作品です。
デルフトの眺望
オランダ時代における風景画のなかでも、最も知名度の高い有名な作品です。
デルフトの出身の彼が描いたからこそ、運河越しに見える故郷をとても丁寧に仕上げています。
ただ、この眺望に関して、正しい構図で描かれているものではありません。
どちらかというと、画面構成を優先している傾向があり、正確なものを描いた絵ではないのです。
当時のデルフトを描いた貴重なものではありますが、そのままでないのは、少し残念な気もしてしまいますね。
まるでタイムスリップしたかのような美しい絵としても、高く評価されています。
天秤を持つ女
こちらもフェルメールの作品のなかでは、特に有名なものになります。
光の入り方がとても美しく描かれており、印象的な作品です。
1664年に作成されたものになり、現在は、ナショナルギャラリーオブアート(アメリカ)に保管されています。
女性が持っている天秤は何も乗せられていないのがわかりますか?
これは信仰心を込めた作品でもあると考えられています。
構図は真珠の首飾りの女とも似ているところがありますね。
この作品からもわかるように、細部にまで描かれた光の入り方や構図、色彩など高い技術を持っていないとできない、細部へのこだわりを強く感じます。
フェルメールだからこそ描けたものです。
まとめ
フェルメールの作品を見ると、光の魔術師と言われたのも納得できる美しい構図や色彩のものばかりです。
時代による描き方の違いもありますが、彼がどの作品にも思い入れがあり描いていたことが伝わってきますね。
構図一つにしても、ここまでしっかりと描いている、芸術作品にはなかなか出会えないと思います。
フェルメールの作品が有名なのも納得です。