「この美術作品のどこがいいの?」と、美術が苦手な人からよく聞かれます。
美術作品の魅力は、見る側と作る側のそれぞれにあります。
絵が描けなくても感性があれば、美術作品の魅力を作品から感じることができます。
この記事では、美術作品の魅力はどこにあるのかを解説いたします。
時や場所を選ばずに心を解き放つことができる
美術作品の一番の魅力は、心を動かすことができることではないでしょうか。
どんなに暗い場所にいても春風を感じる明るい花畑の絵をみれば暗さを感じることはなくなるかもしれません。
ときどき「どんなにつらいときでもこの絵をみれば元気が出る」という人がいますが、その人の心の救いになるような何かが絵にあるのでしょう。
映画「ショーシャンクの空に」に主人公が刑務所の中で音楽を流すシーンがあります。
主人公が刑務所という束縛の強い場所にいながらも、音楽を聞いている間は自由を感じられるシーンです。
まさに芸術は場所を選ばず、感性さえあれば心を解き放つことができることを表現しているシーンといえます。
絵や彫刻の多くは人間が内面に抱える感情や思想を表現しています。
時代が変われば流行や技術は変わりますが、人間の感情はどんな時代になっても共通しているものではないでしょうか。
優れた美術作品は、時代を超えても人の心に響き、解き放つ力を持っています。
美術作品が制作された時代に思いをはせることができる
美術作品の歴史は古いです。
「レディ・ジェーン・グレイの処刑」は、わずか16歳で処刑された女王を描いた作品です。
具体的な描写だけでなく、周囲の人の表情から当時の残酷さがひしひしと伝わります。
さらに処刑される本人ジェーン・グレイは、取り乱すことなく、指示に従っている様子がわかり、さらに悲しさが込み上げます。
この作品は、悲しい歴史を思い出させる作品ですが、写真や画像以上に美術作品は当時の感情や雰囲気を伝えることがあります。
また、サモトラケのニケは、紀元前200年ごろに作られたといわれています。
今から2200年以上前です。
2200年以上前の人間が彫った美術作品を自分がみていると考えるだけでも美術のロマンを感じます。
とくに絵は、描かれた当時の時代を感じるものがあります。
言葉で表せない抽象的な感情を具現化することができる
美術に限らず音楽も言葉では表現できない抽象的な感情を表現する作品があります。
例えば、マーク・ロスコという画家の美術作品はキャンバスに色が塗ってあるだけで形あるものは描かれていません。
タイトルも「無題」や色の名前が並んでいるだけで、すぐに理解することは難しいものばかりです。
しかし、ロスコは「人間の基本的な感情」を表現し続けた人です。
「人間の基本的な感情」を表現した作品だと思いながら鑑賞してみると、さまざまな感情を感じることができます。
マーク・ロスコという画家は人間としてたくさんの苦労をしてきた人です。
言葉では言い表せない感情をキャンバスにぶつけています。
絵や彫刻の中には「これがなぜ有名なの? 」「素人には理解できない」と思う作品があるかもしれません。
しかし「わからない」という壁をたててしまった段階で作品を感じる道は閉ざされてしまうのです。
読みとろうとする気持ちや自分なりの解釈をすることがあり感性であり、感性に正解はありません。
会ったこともない画家や会えるわけがない時代の作家の感情や熱を感じられることも美術の魅力です。
これは作る側にも同じことがいえます。
一言では表せない感情を美術作品は表現することができます。
美術作品は画家や作家がいなくなっても生き続ける
美術作品は、制作した人がこの世を去っても残り、場合によっては数百年後には思いもよらない価値になっていることもあります。
画家や作家は、作品を作るときにはただ「いい作品を作りたい」と思って制作します。
アニメーターであり映画監督の庵野秀明氏はテレビのインタビューで「作品と自分の命を天秤にかけたら作品の方が重いと思っている」と言っていました。
実際に命より作品が重いのかは別として、それだけ画家や作家は、作品に対する思いが強いのです。
自分の子どもを自分の命以上に大切に思う人はたくさんいますが、子どもはひとりの人格であり、自分の描いた道筋通り育てることはできません。
一方の「作品」は、誰に遠慮することもなく、自分の思うように制作してかまいません。
そして、それが世間に認められて価値を高めていくならば、製作者としてこれ以上うれしいことはないでしょう。
優れた美術作品は長い年月をかけて価値がわかる人の手を渡り歩きます。
画家や作家が越えられない時代や国境も作品は超える壮大なロマンも美術作品の魅力のひとつです。
おわりに
美術作品の魅力について紹介しました。
今回、紹介した美術作品の魅力はほんの一部です。
美術作品の魅力は人それぞれで違います。
見る側の魅力は「感じよう」と思う気持ちさえあれば得られる魅力です。
はじめから「私には理解不能」と思わず、自分なりの解釈から始めてみてはいかがでしょうか。