旧白洲邸「武相荘」は、小田急線の鶴川駅から徒歩15分ほどの場所にあります。
白壁の門をくぐると、茅葺き屋根の古民家が来館者をお出迎え。
ここにはかつて白洲夫妻とその家族が暮らしていました。
現在は美術館として公開されており、多くのファンを魅了しています。
なぜ人々を惹きつけるのかというと、伝統的な日本の暮らしがわかる貴重な建築資料だから。
いわばタイムカプセルのような空間です。
白洲次郎・正子のファンはもちろん、建築好きな人にもおすすめのスポット。
それでは武相荘の魅力に迫りましょう。
旧白洲邸「武相荘」の歴史、成り立ち
武相荘が一般公開されたのは2001年。白洲正子が亡くなった3年後でした。
古民家が美術館になるまでの歩みを紹介します。
白洲夫妻と「武相荘」の出会い
まずは白洲次郎・正子について知っておきましょう。
次郎は1902年に神戸で生まれました。
実家は貿易商を営んでおり、裕福な家庭に育ちます。
英国留学で習得した語学力を生かし、吉田茂のブレーンとして活躍。
GHQとの折衝でアメリカと対等に渡り合った唯一の日本人です。
一方の正子は旧薩摩藩で有力だった樺山伯爵家の次女。次郎より8歳年下でした。
アメリカに留学し、現地の学校で学びます。
帰国後すぐに次郎と結婚しました。お互いに一目惚れだったといいます。
作家として名を馳せ、多くの名著を生み出しました。
武相荘の前身は、とある老夫婦が住んでいた古民家。
東京郊外に新たな居を構えたかった次郎たちが、ほうぼうを探し回って見つけたのです。
買い取った当初は傷みが激しく、すぐに住める状態ではありませんでした。
白洲夫妻がDIYで修繕し、かつての姿を取り戻したのです。
武蔵と相模の境にあった古民家に捻りの利いた名前をつけたい。
そこから「武相荘」と名づけられました。
旧白洲邸「武相荘」がオープンするまで
次郎は1985年に逝去しました。
残された正子は、夫亡き後も精力的に文筆活動を続けます。
「韋駄天お正」と呼ばれた行動力は衰えず、取材に出かけては記事を書きました。
次郎が没してから13年後、1998年に鬼籍に入っています。
白洲夫妻の長女・牧山桂子氏にとって、武相荘は住み慣れた自宅でした。
子どもの頃にあった光景が消えていくのを淋しく思っていた彼女は、この建物を残したいと考えます。
こうして「旧白洲邸 武相荘」が一般公開される運びとなりました。
貴重な茅葺き屋根は、2007年に葺き替えられています。
「旧白洲邸 武相荘」の特徴3つをご紹介
ここでは3つの見どころを紹介しましょう。
通常の美術館と異なり、靴を脱いで鑑賞します。冬は足元が寒いかもしれません。
1. 物書きの聖地とされる正子の書斎
正子の仕事場にある本棚は、大量の本で埋め尽くされています。
その眺めは圧巻の一言。
ご家族ですら蔵書数を把握していないとのことでした。
膨大な書籍から得た知見が彼女の生業に生かされていたのでしょう。
書斎は正子が使っていた当時のまま。
メガネや万年筆、原稿用紙などが整然と机上に並べられています。
定期的にやってきて、しばらくここから離れない熱心なファンも少なくないのだとか。
2. 骨董ファンを魅了する展示
白洲夫妻のコレクションは、今も多くの来館者を楽しませています。
次郎が愛読していた雑誌、正子が集めた食器。
彼女の代名詞であった着物は、ぜひ観ていただきたいですね。
いずれも生活感があふれています。
彼らの美意識が凝縮されている品々をご覧ください。
なお、所蔵品は季節ごとに展示を入れ替えています。
常設展もお見逃しなく。貴重な歴史的資料がありますよ。
3. 東京では珍しい茅葺き屋根
職人の高齢化により、茅葺き屋根を維持するのも一筋縄ではありません。
葺き替え作業に必要な資金は数千万円。
しかも材料の入手が困難ときており、もはや絶滅寸前なのです。
武相荘の屋根を瓦にしようと家族が提案したとき、正子は断固反対しました。
その意思を引き継ぎ、娘婿で現館長の牧山圭男(よしお)氏が茅葺き屋根を守り続けています。
もし実際に目にする機会があれば、伝統を引き継ぐ苦労と手間に想いを馳せてください。
併設ミュージアムショップ・カフェ
作品を一通り鑑賞したら、お土産を買って一息つきましょう。
ここにしかないユニークなグッズが目白押しです。
ショップ
入り口付近の建物にショップがあります。利用するにはチケットが必要。
かつての家主の嗜好を反映した生活雑貨を取り扱っています。
通信販売でもお買い求めいただけます。
ここでは、一部の商品をピックアップして紹介します。
書籍
白洲次郎と正子に関する読み物が多数そろっています。
ろうそく
なかなかお目にかからない和ろうそくや漆ろうそく。
インテリアとして飾るとおしゃれ。燭台とセットで購入すると便利ですね。
ブックカバー
宮城県気仙沼市の伝統工芸品である帆布を用いて作られました。
表にポケットが付いているバージョンと通常タイプの2種類です。
蚊遣り
昔懐かしのデザインは、骨董好きなら反応してしまうかもしれません。
夏の武相荘では必需品です。
カフェ&レストラン
2015年の改装と共にオープンしました。
白洲家のダイニングだった空間でお茶や食事を楽しめます。
敷地内に自生する山菜や木の実などを取り入れたメニューは味わう価値あり。
ランチやティータイムに訪れる地域住民も多いとのこと。
カフェとランチは予約不要ですが、ディナーは完全予約制となっています。
ご利用の際は、前日までに予約してください。
詳しくはこちらから。
カフェ
お好きなケーキとカフェのセットがおすすめです。
300円を追加で支払うと、お食事後のデザートを味わえますよ。
一番人気のスイーツは、黒蜜のあんこにキャラメルアイスを挟んだどら焼き。
本日のデザートやチーズケーキもあります。
ランチ
ぜひ味わっていただきたいのが海老カレー。
白洲家で長年愛された一品です。
正子の兄がシンガポールで食べて感動し、わざわざレシピを教えてもらったという逸話付き。
もう1つ見逃せないのが次郎の親子どんです。
器へのこだわりが深く、実際に使われていた丼を再現しました。
ぜひ次郎の大好物を味わってみてはいかがでしょうか?
ディナー
18時以降の期間限定メニュー。
武相荘ディナーコースとコースメニューの2種類から選べます。
内容は仕入れ状況により変更される可能性あり。
まとめ
武相荘の魅力はまだまだあります。
白洲夫妻が愛した庭は、一見すると雑木林のよう。
今も専属の庭師がおり、自然に近い状態に調整されているのです。
都会のど真ん中で緑に囲まれてリフレッシュしてみては?
現代に生きる私たちは、つい便利な生活がいいと考えがち。
しかし、白洲夫妻にとっては自給自足の暮らしが理想的だったのです。
武相荘について知れば知るほど、本当に豊かな生活とは何かを考えさせられるでしょう。
※休業日や営業時間、その他の掲載情報については変更の可能性があります。日々状況が変化しておりますので、最新の情報については施設・店舗へお問い合わせください。
アクセス
美術館名 | 旧白洲邸 武相荘 |
住所 | 東京都町田市能ヶ谷7丁目3番2号 |
電話番号 | 042-735-5732 |
ホームページ | https://buaiso.com/ |