コンデ美術館は、パリから電車で30分ほどの距離にあります。
「第二のルーブル」と称され、絵画ギャラリーはまさに圧巻の一言に尽きるでしょう。
書籍のコレクションも豊富で、特に「ベリー公のいとも豪華な時祷書」が有名です。
美術館はかつて「シャンティイ城」と呼ばれていました。
実はホイップクリーム発祥の場所とされており、シャンティイクリームは名物として知られています。
城の歴史は古く、数々の登場人物が手を加えて今の姿になりました。
最後の当主となったオマール公が先祖に敬意を表して「コンデ美術館」と名づけたのです。
コンデ美術館の歴史・成り立ち
今でこそ瀟洒な佇まいの城ですが、かつては要塞として使われていました。
歴代の当主が増改築や修復を繰り返し、壮麗なミュージアムに生まれ変わったのです。
まずはコンデ美術館がたどってきた経歴を紹介します。
フランスの歴史とともに歩んできた城
冒頭でもお伝えしたように、コンデ美術館は戦の要となる要塞の役割を果たしていました。
その歴史は古く、11世紀まで遡ります。
「コンデ美術館」として一般公開されるまで、この場所は「シャンティイ城」と呼ばれていました。
初の領主となったのは、ブテイエ家という一族です。
14世紀にさしかかると、バラ戦争が勃発します。
城は敵の手に渡り、1386年にオルジェモン家が新たな支配者となりました。
現存するプチシャトーが建てられたのは1500年代のことです。
当時の所有者だったコンスタブル・アンヌ・ド・モンモランシーは、建築家ジャン・ブラントにルネサンス様式の建物を作るよう命じました。
1700年代には、グラン・コンデ(ルイ14世のいとこ)によってフランス式の庭園が作られています。
フランス革命の煽りを受け、かつて存在していた建築物の多くは取り壊されました。
城から美術館へ
最後の当主を務めたのは、オマール公爵アンリ・ドルレアンです。
彼の父親であるルイ・フィリップは、1848年に起きた二月革命により王位をはく奪されました。
父の失脚にともない、オマール公自身もイギリスへの亡命を余儀なくされます。
亡命期間は22年にも及び、1871年にようやくフランスから帰国の許可が下りました。
オマール公は、若干8歳にしてルイ=アンリ=ジョセフ・ド・ブルボンから城と領地を相続しています。
先代のコンデ公には跡継ぎがなく、少年だったオマール公の手中に莫大な財産が転がり込んできたのです。
無類の美術愛好家だった彼は、イギリスに滞在している間に祖国から流出した美術品を買い戻していました。
そのコレクションは、後のコンデ美術館を飾ることになります。
シャンティイ城に戻ったオマール公は、領地の一部を売却して城の修繕費用に充てました。
大シャトーはその時に建て直されたものです。
先代のコンデ公と同じく、オマール公の跡継ぎも若くして亡くなりました。
そこで1886年に、フランス学士院へコレクションを寄付したのです。
オマール公の死後、彼の遺志により城は「コンデ美術館」として公開されました。
コンデ美術館の特徴
続いては、ミュージアムの3つの特徴について解説します。
数多くある見どころから一部を厳選しました。
城と庭園の調和
城内の美術品や装飾はもちろん、城と庭園も見逃せません。
貴族が暮らしていた時代の様子を見事に再現しており、鑑賞者の目を楽しませてくれます。
コンデ美術館の庭は広く、庭園だけで115ヘクタールの面積を有しています。
屋外のアクティビティも魅力の1つですので、時間に余裕があれば挑戦してみてください。
ちなみにイギリス・中国式庭園は、かのマリーアントワネットが好んだプチトリアノンのモデルになったと言われています。
最大の見どころは絵画ギャラリー
コンデ美術館の絵画ギャラリーは、ミュージアムの目玉となっています。
特に15世紀から19世紀の作品は量・質ともに素晴らしく、ルーブル美術館に次ぐ規模となっているほど。
19世紀に流行した展示方法を踏襲し、壁一面に飾られた絵画群が来館者を出迎えます。
絵画ギャラリーの突き当りには「ロタンダ」と呼ばれる空間があり、ラファエロやピエロ・ディ・コジモなどの作品が飾られています。
世界一美しい本が眠る図書室
オマール公は熱心な読書家でもあり、古い書物の蒐集に力を尽くしました。
中世の貴重な書籍が数多く展示されていて、図書室が好きな人ならずっと眺めていられるでしょう。
とりわけ有名なのが「ベリー公のいとも豪華なる時祷書」です。
オマール公がイタリアのジェノバに出向いて落札し、フランスに持ち帰りました。
時祷書とは現代のカレンダーのようなもの。
印刷技術がない時代に、最高の材料と技術を注ぎ込んで制作されました。
もちろん全て手作業です。
非常に傷みやすいため常設展示はしていませんが、高精細なデジタル画像で鑑賞できます。
併設ミュージアムショップ・カフェ
美術鑑賞を楽しんだ後は、お土産を購入して一息つきましょう。
買い物やお茶を楽しみつつ、広々とした庭園を眺めるのも楽しいですよ。
ショップ
ショップは2つあります。
h4 BOUTIQUE DES GRANDES ÉCURIES(グランドゼキュリーブティック)
大厩舎の近くにある店で、店舗の内装は1700年代の馬小屋をもとにしています。
ちなみに美術館がある地域では馬が有名で、シャンティ城と並ぶ二大名物。
そのため、馬にちなんだグッズが多数販売されています。
日本ではお目にかかれない珍しいアイテムは、旅の記念にぴったりです。
h4 BOUTIQUE DU CHÂTEAU(キャッスルショップ)
美術館のコレクションをモチーフにした商品を取り扱っています。
ポストカードや文房具など、定番のグッズを買うならここですね。
その他、いかにもフランスらしいお土産をお求めならこちらにお立ち寄りください。
カフェ&レストラン
美術館には3つの飲食店があります。
時期によって休業しているため、営業期間をご確認ください。
h4 LE CAFÉ DES ÉCURIES(ル・カフェ・デ・エキュリー)
大厩舎の近くにある小さなカフェです。
ドリンクや軽食を販売しており、小腹を満たすのにちょうどよいでしょう。
h4 LA CAPITAINERIE(ラ・キャピテーヌリー)
本格的なフレンチのコース料理を提供しています。
美術鑑賞後のランチやディナーにどうぞ。
h4 LE HAMEAU(ル・アモー)
クレーム・シャンティイ(生クリームとフルーツのデザート)が有名です。
自家製のホイップクリームが人気で、コンデ美術館の看板メニューとなっています。
パリ近郊で観光するならコンデ美術館がおすすめ
コンデ美術館は、失われた貴族の生活を垣間見られる観光スポットです。
現代に生きる私たちにとって、いわばタイムカプセルのような存在といえるでしょう。
「第二のルーブル」と形容されるだけあり、絵画コレクションの質は目を見張るものがあります。
もしフランスへ旅行する機会があれば、パリから足を延ばしてみてはいかがでしょうか。
電車に乗って30分ほどの場所にあり、それほど遠くありません。
余談ですが敷地内には厩舎もあり、馬術のショーが開催されています。
馬好きな人はぜひ体験してみてください。